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2011 Ms.オリンピア観戦レポート

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.06.14
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アイリス・カイルのバックショット。この写真で一番気になるのが下背部に見られる太い皺だ。また、昨年の写真と比べてもらえれば一目瞭然だが、臀部、ハムストリングスの切れが全くない。アブドミナル&サイのポーズ(左の写真)も腹直筋のセパレーションはかろうじて見られるが、外腹斜筋は全く見られない。大腿部においては縫工筋はどこへやら、四頭筋にはストリエーションがないどころかセパレーションすら浅い状態だ。これでパーフェクトスコアでの優勝はないだろう!

9月16日/ラスベガス



本調子ではないアイリス

昨年のアイリス・カイルはまさにパーフェクトであった。それはフィジーク面だけでなく、ステージングや身のこなし、アピール性など、全ての面においてアイリスは群を抜いていた。しかし、今年の彼女はなんと言うことだろう。はっきり言って優勝に値する身体と言えるものではなかった。特に仕上がり面に関しては、2位のヤクセニ・オリケンの方が遥かに良かった。

予選におけるアイリスは、サイズこそ去年より大きくなっていたようだが、仕上がりは完全に甘い。彼女の売りであったバックショットの切れが完全になりを潜めてしまっていた。上背部のセパレーションはなんとか見せてはいたが、下背部のストリエーションは、両腕を後方へ引いてスクィーズさせても全く現れず、逆に皮膚の皺が何本にも渡って深く見て取れる。臀部からハムストリングスにかけても厳しさはなく、本当に昨年とは別人のような悪さであった。

一方のヤクセニは、全体に渡り厳しいカットを刻んでいた。いつもは甘い大腿部のカットもよく出ていたし、ハムストリングスのセパレーションも深かった。ならば、なぜヤクセニがアイリスに負けたのだろう。それは、アウトラインとプロポーションの差ではないか。細いウエストから上下に形良く広がるアウトラインの美しさはアイリスの武器であり、小さな骨盤に形良くついている臀筋は、ヒップの位置を高く見せ、手脚の長い彼女のプロポーションをよりいっそう引き立てている。

それに引き換えヤクセニの臀部は脂肪は少ないのだが、面積が広いだけで形が悪く、悪く言えば垂れているように見え、そのせいで下背部が非常に間延びして見える。フロントにおいては、大腿部に膨らみがなく、ウエストはやや太め、さらに肩幅がそれほど広くない体型なだけに、アウトラインが弱い。あれだけ厳しいカット、ストリエーションを表しているのに、筋肉のセパレーションが浮き出てこないのも気になるところだ。

アイリスは全体的にカットには乏しかったが、アウトラインとプロポーションに優れ、さらに筋肉のセパレーションはよく出していた(特に上背部)。一方ヤクセニは体型やアウトラインには優れていないが、バルクが豊富でカットとストリエーションに富んでいた、というタイプの違う二人の戦いとなり、結局は連覇を重ねてきてアドバンテージのあるアイリス・カイルが7勝目をものにした。

ここまで勝利を重ねてくると、興味としてわいてくるのが、あの女王レンダ・マーレーの持つオリンピア8勝の記録に追いつき、追い越せるのかである。私の意見では、この状態が彼女の現在の“実力”であるならば、それは無理ということだ。それほど、今年のアイリスには輝きがなかったし、彼女以上のインパクトを持っていた新人たちが今年多く見られたからだ。
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有望な新人たち

今年の3位に食い込んできたブリジッタ・ブレゾバクは、昨年10位の選手だ。昨年は全体的にまったりとした甘い仕上がりであったが、今年はバリバリの厳しい状態で臨んできた。直線的であったアウトラインも、昨年よりバルクを増したのか、かなり改善されている。全体的な完成度から言えばヤクセニより上かとも思えた。ポージングと表情の硬さが今後の課題。

初出場のアリーナ・ポパは、今年のミスインターナショナルで3位に入りオリンピアの出場権を得てきた。一目で分かるバルクタイプでアウトラインも悪くない。仕上がり自体は厳しいものではないが、アイリスくらいのセパレーションは出している。2、3、4位の選手がカットバリバリであっただけに、仕上がりで判断すればこの順位も致し方ないが、もしこのバルク豊富な体にカットが刻み込まれれば、おそらくアイリスもヤバいことになるだろう。それくらい、将来性を秘めている選手だ。

6位のシェイラ・ブレックは、昨年の4位から順位を落とす結果となった。が、全体的なバルク、仕上がりなどは昨年を上回っていたようだ。アリーナとおなじくバリバリの仕上がりではなかったものの、筋肉のセパレーションははっきりと出しており、バルク、ラインも良い。バックの上背部はモリモリとしていたし、臀部、ハムのボリューム感もある。ただ、正面のフロントポーズで胸郭を持ち上げ過ぎてしまうのか、腹部がのっぺりとし、凹凸感がなくなってしまうのが気になった。

7位のキム・ペレツは、まさに男性ビルダーを彷彿させる大きさを感じる選手だ。少し前にいたプロ女子ビルダー、リサ・ルイスのようなバルク感がある。腕、肩、胸、そして僧帽筋が巨大で、マスキュラーポーズが似合う。ただ、その巨大な上体に見合った下半身がまだないようだ。

もう一人似たようなタイプが9位のモニカ・ジョーンズ。肩が大きく、背中の広がりに優れているので、非常にスケール感のある体をしている。アウトライン的にはキムよりも優れているが、若干甘めの仕上がりであった。
記事画像3

トップ6の比較。左よりシェイラ、ブリジッタ、アイリス、デビィ、ヤクセニ、アリーナ。以前ほどの存在感を醸し出せないアイリスに対し、ブリジッタのバリバリ感は非常に目を惹いた。若干甘めだが、アリーナのバルクとラインも良い。臀部のモリモリ感は魅力的でもある。ヤクセニも厳しさは見て取れるが、悲しいかな体型が悪い。デビィも下半身が弱い

存在感のなかったベテラン組

かつてはトップ6に食い込み、会場を沸かせてくれたベテラン選手が今年も出場していたが、その存在感は全くなかった。階級別ながら過去にオリンピアのタイトルを手にしているダイアナ・ケドゥはもう限界のような体だ。サイズは明らかに全盛期よりダウンしており、仕上がりは超甘い。アウトラインも崩れて来ている。

キャシー・ラフランソワもここ数年コンテストコンディションでオリンピアに登場していないようだ。昨年7位だった順位が今年は13位にまで落としている。90年代からプロコンで活躍し、一時はフィギュアに転向している彼女なだけに、そろそろ第一線から退く時期なのかもしれない。

昨年6位だったヘザー・フォスターもオフのような状態で12位に入るのがやっと。この2人よりも無名のヘレ・ニールセン(14位)とルーキーのスカダ・セルフェルト(15位)の方がまだ良かったのではないか!

今年のミスオリンピアは、アイリス・カイルの不調と、アイリス、ヤクセニの2大巨頭に取って代わりそうな選手が見られたことで、来年への楽しみをつなげられた大会であった。が、それにしてもミスオリンピアが行われているときの会場の入りは寂しいものである。さらにエキスポ会場の特設ステージで行われる女子(ミス、フィットネス、フィギュア、ビキニ)の予選も何とかならないのであろうか。

少なくとも世界一を決める大会がエキスポのチケットで見られてしまうのでは、何とも威厳のない大会だろう。ミスオリンピアが単独で開催されていたコリー・エバーソンやレンダ・マーレーの時代が懐かしく思えるし、今のような開催の仕方ではミスターオリンピアですら数多くあるイベントの内の一つのようで、悲しい気がする。2時間近くもかけてじっくりとプレジャッジが行われていた、かつてのようなハードコアなオリンピアがまた見てみたい。
Photo & Report by
Ben
[ 月刊ボディビルディング 2011年12月号 ]

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