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友岡 和彦氏 回旋スポーツのパフォーマンス向上レーニング NSCAカンファレンス

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掲載日:2017.02.24

〜回旋スポーツにおけるパフォーマンス向上のための統合的トレーニング〜

フィジークオンラインの読者の方々の中には、トレーナーの方々もたくさんいらっしゃるかと思います。特に、スポーツトレーナーや、アスリートの指導をされている方にはぜひ読んでいただきたい。『回旋スポーツにおける〜』というタイトルになっていますが、その内容はどのスポーツにも精通しプロのトレーナーになるための素晴らしいお話しがたっぷりの2時間でした。

その2時間の内容をギュッと集約してお伝えしたいと思います!ぜひ参考にしてみてください。

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友岡氏とは、、、

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友岡氏は、アメリカのフロリダにて、エクササイズ&サイエンスを学んだ後、1998年にMLB Florida Marlins(現Miami Marlins)にてストレングスコーチインターン、1999年より同球団にて、メジャーリーグチームでのアシスタントストレングスコーチ、2002年には、MLB Montreal Exposにてヘッドストレングスコーチに就任。そして2005年には、MLB Washington Nationalsにてヘッドストレングスコーチを務められていました。

2009年に帰国後し、それ以降(株)ドームが運営するアスリート専用トレーニング施設、Dome Athlete House(ドームアスリートハウス)にてパフォーマンスディレクターとして、プロ野球選手、プロサッカー選手、プロゴルファー、プロテニス選手、オリンピック選手などのサポートだけでなく、全国でトレーナーやコーチの後進教育も積極的に活動されています。


回旋スポーツってどういうもの?

回旋スポーツをあげると、ゴルフ、野球、テニスというイメージがありますが、これ以外にもアメフトやラグビーも回旋スポーツと考えられるそうです。

「ラグビーは、ただ前に進んでいくイメージがありますが、パスをする時にレシーバーは直線方向に向きながらも、上半身は回旋しながらボールを受け取らなければなりません。その時に下肢がいっしょについてきてしまえば、次に着地した時に効率的な動きができないからです。またラグビーになると、パスをする時にひざがパスを出したい方向に向いてしまうと敵チームにどこへパスを出そうとしているのかがバレてしまいます。そこで、理想的な動きというのは、ひざが前に進みながらも、胸がしっかり回る。そして、最後の最後まで骨盤は前を向いているのだけど、ある瞬間になれば胸がしっかり回っている、という動きです。」

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今回のお話しを元に回旋スポーツをまた違った視点で見るとトレーナーの方でなくても、新しい発見がいっぱいありそうです。回旋スポーツに限らず、様々なスポーツ分野、アスリートに限らず一般の人に対しても応用できる話が沢山散りばめられています。ぜひ回旋スポーツに関係のない方も最後まで読んでみてくださいね!


トレーナーの仕事は手探り作業も必要、、、

「回旋能力を上げるためには、最大筋力や筋力を鍛えればパフォーマンスアップをすることができるかといえばそうでもありません。ストレングスコーチの役目でいうと、筋力を上げるということですが、最終目的は『トレーニングをするとパフォーマンスが上がった』と選手に言ってもらえることが重要です。そのためには、体幹トレーニングや、お腹を安定させるためにドローイングをやってみたり様々なことをやりました。しかし、ある日治療家と話していると『最近選手の背骨の動きが全然なくて、どうも一本の木みたいになっているんですよね』と言われました。いわゆるロボットみたいな動きになっていたってことです。腰椎が固定されて、胸椎が動いて、股関節だけ動いて、後は棒のように動く。と言った感じに…

体幹トレーニングをやっていると、どうしても背骨1本1本の細かい動きが出てこなかったり、背骨が固くて全然動いていなかったりというようなことがありました。そこで、もう少し背中の動きをつけていく必要があると思い、それぞれのスポーツに特化したトレーニングをする必要を感じ、そこを追いかけた時期もありました。」


失敗は成功のもと!恐れずトライする心が大切

「私自身ゴルフは下手だし、素人なのにプロ野球選手を教えなければならい。という状況の中でたくさん失敗しました。例えば、アメリカのメジャーリーグでストレングスコーチとして入った頃、メディシンボールを使い、『左に重心を乗せてこうやって〜云々』と教えていると、バッティングコーチから呼び出され『お前!何を教えているんだ!俺は体重を乗せて打てなんて教えたことがない。スキルのことは言わないでくれ』と注意されました。ゴルフやテニスにおいても、同じで独特のパフォーマンス発揮方法があり、そこをしっかり吟味する必要があります。そういった失敗を重ねながら常に取捨選択をしてトレーニングのメソッドを組み立てていきました。」


「WHY」から始めよう!運動学習に基づいて

「トレーナーをしていく上において、自分の考え、トレーニングのフィロソフィー(哲学・ものの見方や考え方)や理念を持ってそれに合ったトレーニングをしていきましょう。

ラグビーやアメフトは別として、基本的に回旋スポーツというのは技術性の高いスポーツになります。技術性の高いスポーツというのは、足の裏から手の指先までの『連動』が重要になってきます。野球選手というのは、指の動きが変わっただけで何億稼ぐかも変わってくるような繊細なスポーツなのです。また、ゴルフもヘッドの角度がたったの1度変わるだけで結果が大きく変わってきます。そこで最も重要になってくることは、『意識的』にではなく『無意識的』に再現性の高い、いつやっても同じパフォーマンスができる、ということが好ましい状態であるということです。

選手にありがちなことは、練習ではできるのに、試合になりフィールドに出るとできないということが多々あります。それでは意味がありません。そこで実際の動きを結びつけるトレーニングドリルが必要になってきます。これまでのドリルというのは、同じ場所から出来るようになるまで100回でも同じ動作を繰り返すという形から入っていく人が多いのではないでしょうか。

他にも、大学のラグビーに行った時にアジリティの動きを教えると、ポールを立てた状態では、アウトサイドステップだとか、クロスオーバーステップだのしっかりとできているのに、試合となると全く活かすことができないということがよくあります。ということは、無味乾燥のドリルをするのではなく、常に試合の時のように何かしら変化をさせながらトレーニングしていく必要があるのです。」

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「意識的な動き」と「無意識的な動き」

「結論から言うと、意識的な動作よりも無意識的な動作の方が良いパフォーマンスをすることができます。

例えば、トレーニング方法のひとつとして肩の可動域を上げたいという場合、ストレッチをするのは意識的なトレーニングになります。それに対して無意識的なトレーニング方法というのは、椅子をくぐるという課題を与えます。椅子の下をくぐるという動作は、肩を上げるための最大限のモビリティを出さなければならないのです。作業療法士の方々などはそのようなトレーニング方法をされている方がけっこういらっしゃいます。無意識的な動きの方が、持続性があったり、違う動きをするにしても可動域が出てきたりするのです。無意識的にその必要な動作を促し導いていくのが私たちのやるべきことだと思います。

無意識的な動きの話しになりますが、プロゴルフプレーヤーの芹澤信雄氏はバーディパットであろうが、パーパットであろうがあっさりと入れてしまう人でした。ある時ゴルフ雑誌からの取材が殺到したことがあったのですが、取材を受けるようになって、今まで無意識に入れていたものを、取材で答えるために色々と考えるようになりました。パッティングの技術を頭で考えるようになった芹澤氏からパットの冴えが次第に失われてしまいました。

芹澤氏が語っていたのは『自分は何も考えないでただ打ってただけなんですけど、取材となるとどう打っているのか考えて答えなければならないでしょ。パットは考えてはダメです』と。

この例からも分かるように、意識をしてやることによって意図していた一連の動作にノイズが入ってしまうということが起こります。」

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回旋可動域の向上をさせるためにトレーナーが心得ておくべきこと

「回旋動作をうながすためには、まず股関節をしっかりと動かさなければなりません。そして腰椎は固定ではなく安定させると少しずつ動いて回旋ができます。この時、胸椎がある程度の回旋を担います。そのためにも、胸椎や股関節の可動域を向上させる必要があります。

トレーナーがしてはいけないことは、選手の体に触れてモビライゼーションをすることです。医療の資格がなければ何かがあった時には大変なことになります。

トレーナーのやるべきことは『WHY』をよく考え、最終的に選手がこのトレーニングをやることによって『なんだか動きが良くなりました』と言えるように、最終的な目的を明確にし、常に取捨選択しながらトレーニングを組み立てていくことが大切です。どうしても細かいことに目がいきがちですが、無意識での動きに導きましょう。

また、子どもの指導となると楽しませるFUNは大切な要素です。そのためにも目的を与えることを忘れないでください。」


最後に・・・

いかがでしたか?もっと、もっと書きたいことがありました。運動学の面白さを知る事ができたこの講座、内容が詰まりに詰まっていた2時間をここで短くまとめてお伝えするのはとても難しい作業でした。友岡氏の言葉で印象に残ったところなどをポイントにしてまとめてみました。

詳しいトレーニング方法を知りたい、もっと学んでみたい、知りたいという方はぜひNSCAで学んでみてはいかがでしょうか。友岡氏もおっしゃっていましたが、「また来年になれば今年語っていたことと変わることも多々あるでしょう」と。その意見こそ信頼に値すると私は講座を聞きながらそう思いました。

常に失敗しながら改善し前進し続ける。友岡氏の講座はオープニングセッションにふさわしく、真っすぐな人柄が伝わる実に魅力的な講座でした。

特定非営利活動法人NSCAジャパン(全米ストレングス&コンディショニング協会・日本支部)

HP:www.nsca-japan.or.jp

Blog:オフィシャルブログ