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2016年ジャパンオープン男子優勝者インタビュー 山口裕

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山口 裕(やまぐち・ゆたか) 1981年11月17日生まれ(34歳) 埼玉県出身 身長165cm、体重74kg(オン)・80kg(オフ)/腕囲42cm 職業:教師/独身・両親と同居 趣味・洗車 トレーニング歴13年 初タイトル 2006年埼玉選手権75kg級Text=BIGTOE 写真=Ben 撮影協力/ゴールドジムさいたまスーパーアリーナ[ 月刊ボディビルディング 2016年11月号 ]
掲載日:2017.07.14
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マシントレ・多種目・いきなりフルスタック・ドロップセット

BigToe(以下BT): このたびはジャパンオープン優勝おめでとうございます。

山口: ありがとうございます。

BT: 昨年はミスター日本で12位入賞、日本クラス別75kg級優勝と、今年へつながる飛躍の前兆が見られたと思います。そして今年ジャパンオープンで去年の6位から一気に上位陣をごぼう抜きで優勝したわけですが、優勝を達成するためにトレーニングのここを意図的に変えたということはありますか?

山口: トレーニングのボリュームを増やしました。

BT: 強度ではなくボリュームを増やしたわけですね。

山口: はい。強度はもともと高いので、時間を増やしました。

BT: 広がりのあるアウトラインに加え、インパクトのあるカットの秘密は、そのあたりにあるのですね。先ほど肩のトレーニングをしておられるのを見せていただいたのですが、特徴としては、マシン種目でレイズ系中心、いきなりフルスタックでやっていましたよね。

山口: 上半身、今日の肩もアップは30分くらいかけてやるので、さすがに1種目目の1セットは確認をいれますが、2種目目からはいきなり最高重量でやりますね。

BT: 肩のトレーニングではマシンを使ってのドロップセットを多用されていましたが、部位によって違ってくるのですか?

山口: ひとりでトレーニングをするので、ひとりでスタックを変えられる方法としてドロップセットをやっています。
今年のジャパンオープン。優勝最右翼の浅野を破って、昨年の6位から一気に頂点へ上り詰めた

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トレーニング全般

≪脚≫
BT: トレーニング全般についてお聞きしたいのですが、脚はどのような種目をどれくらい行っていますか。

山口: 脚のメインはサイベックスのレッグプレスで400kgまで上げ4~5セット行います。徐々に上げてMAX400kgで3回くらい挙げて、そのあと少し落としてやり終了です。目安として、各種目15分から20分で終わるようにしています。レッグプレスが終わったらフリーウエイトのランジを3セットやります。そして、フリーウエイトのブルガリアンスクワットを左右2セット、スミスマシンでのブルガリアンスクワットを左右1セット、その後、レッグエクステンション、レッグカールをジムエリアにある全種目行います。

BT: ハムはどうされていますか。マシン、フリーウエイトとも選択種目が少ない部位と思いますが。

山口: セット数は少ないですが、アイキャリアン、ストライブとあるものはすべてやります。多角的な方面がら刺激を与えるためやり方を変えたりもしています。

BT: カーフはどうです?

山口:スミスマシンでのスタンディングカーフレイズを今年からやっています。シーテッドカーフは、あまりやりません。

≪胸≫
BT: 胸のトレーニングについてお聞かせください。

山口: 胸はハンマーのチェストプレスマシン3セット、最後が収縮するハンマーワイドチェストプレス3セット、レップスは10回を目標で7~8回くらいです。ハンマーのあとストライブのインクライン、フレックス、テカのマシンを加重して10回目指して行います。

BT: マシンを変えることによって効く部位が変わるので、多角的に攻めようというわけですね。

山口: そうです。同じ部位でもマシンを変えてやっています。

BT: 胸の種目では、フリーウエイトはやらないの?

山口:やらないです。マシンオンリーで、今年からハンマーを中心にやっています。

BT: 胸の下部に対しては、どんな種目を採用しているのですか?

山口: ディップスです。マシンでも加重して、自重でも80㎏くらいを加重して行います。この間、加重用のベルトを切ってしまったので加重は40kgまでと警告されちゃいました(笑)。

≪肩≫
BT: 今日やっておられた肩は? トレーニングエリアに入ったとき、すでにトレーニングが始まってましたが。

山口: 最初はリアデルト、サイドデルト、ケーブル種目をやって最後にプレスという流れです。プレスもジムにあるあらゆるマシンを使います。

BT: 見ていると1種目あたりのセット数、レップス共に少ないですよね。プレスではいきなりフルスタック+プレート加重の高重量で2回程度でドロップさせていっておられました。肩は小さな筋群なので高回数でおこなうという選手も多いですが、山口選手の場合は肩も高重量、低回数ということですね。

山口: そうですね。よっぽど体調が悪いとか腱板の怪我でもない限りレップスは10回はいきません。

ワイドな背中の秘密 肩甲骨が剥がれる!

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BT: 山口選手といえば、背中のワイドな広がりが魅力なのですが、背中について伺います。バックボーンが体操競技とお聞きしています。トレーニングのインターバル中にも肩甲骨を寄せたり広げたりしておられましたが、体操や水泳選手によく見られる肩甲骨の可動域の広さ、柔軟性には目を引くものがありますね。そのあたりに秘密がありそうですが、背中のトレーニングについて教えてください。

山口: 背中ですか。背中も同じようなものですがフリーウエイトは使いません。まず、ハンマーのスパイダーロウを肩甲骨が剥がれるんじゃないかというくらいの高重量でストレッチされた状態から肘はほとんど曲がらない、肩甲骨を背筋だけで引く感じです。そのあとハンマーのハイロー、片手で上から引くチンニングですね。そのあと、ハンマーのロウロウを片手でフルスタック、フルプレートで行います。そして、ラットプルダウンをナロウのパラレルハンドルを使ってやります。これもフルスタック+20kgプレートを4枚80kgをつけてです。肘はほとんど曲がっていないので「引けてないのにアホか」と言われますが、そこからドロップセットで落としていきます。ハンドルはナロウ、ワイドと3~4種類くらい変えて行います。そのあと、ストライブ、テカなどのマシンをフルスタック+加重で行います。

BT: 背中も肩同様、マシン、多種目、いきなりフルスタック、ドロップセットであらゆる角度から攻めるということですね。種目の数が半端じゃないんですが、1種目あたりのセット数はどのように決めていますか。

山口:1種目目は多くてそれでも5セットくらいです。あとの種目は3~4セット、最低2セットですね。昔、公共の施設で人も多いところでトレーニングしていたのでマシンを長く使えないのでそういう癖がつきました。

腕は去年までやってなかった

BT: では、次に腕はどうでしょう。

山口: 腕は特に日を設けていなくて、肩の日と背中の日に上腕二頭筋、胸の日に上腕三頭筋。二頭筋はアップで腱板などインナーマッスルをやってついでにストライブのマシンで刺激します。あと、ダンベルのインクラインカールです。三頭筋はディップスの下ろし方を工夫して三頭に効かせるのと、ダンベルキックバック、サイベックスのフレンチプレスマシンを加重してやります。本当はプルダウンをケーブルでやりたいのですが、肩を痛めているのでやめています。

BT: 腕は他部位に比べて二頭筋2種目、三頭筋3種目と少ないですね。

山口: 実は去年までは腕のトレーニングというのはやってなかったんです。胸、肩、背中という部位に付随しているので。腕に関しては単関節種目ということで関節を痛めやすいので10回以上やっています。それでも重いのかなと思っています。

気持ちを高める腹筋トレ

BT: 昨年全日本チャンプ鈴木雅選手にインタビューしたときに、コンテストでの腹筋の重要性を語っておられましたが、山口選手の腹筋のトレーニングについて教えてくださ
い。

山口: 毎回のトレーニングの最初にアブベンチをやるだけです。上から引くのと下半身の腸腰筋の稼動を意識した動きのツーパターンでやります。10レップスくらいで効かせ、やる気が出るまで続けます。アップとトレーニングへの気持ちを高める目的でやっていますから。あと自宅でポージング練習をやるんですが、アブドミナル&サイを5分間くらいず~っとやるのでそれで筋肉痛になったりしています(笑)。

JOチャンプまでの軌跡と未来

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BT: 元体操選手とのことですが、ボディビルとしての筋力トレーニングを始めたきっかけは?

山口: 順天堂大学4年の時にアキレス腱を切り、体操の練習が出来なかったんです。体育大なのでトレーニング設備がすごく充実しているんです。そこでベンチプレスやスクワットを始めたのがきっかけです。そして、社会人になってからもトレーニングを続けていたのですが、ウインスポーツクラブの朝生照雄さんの知り合いの方に「素質あるからやってみたら」と言われ、2006年に初めてコンテストに出場しました。

BT: ミスター埼玉ですね。

山口: そうです。クラス2位だったんですが、1位の方が失格になってしまっての繰上げクラス優勝でした。その後は、2006、07年と出て、2010年、11年出て、14、15年出て、そして、今年ですね。ミスター埼玉奪取は2010年です。結構、間があいています。疲れちゃうので出なかったんですが。

BT: では、本気モードになって2~3年ということですね。それで、昨年、日本クラス別優勝、ミスター日本ファイナリスト。そして、今年はジャパンオープン優勝。何かもったいないことをしましたね。

山口:そうですね。結局、連続して出てたらよかったかなと思っています。

BT: 今後の予定と目標について教えてください。

山口:今年は、あと関東、東日本、日本選手権、グアムと出場の予定です。その後については、まだ考えていませんが、もう少し厚みをとか、肩の張り出しを大きくとか体の目標はありますので、目標に近づけていけば考えられるだろうし、結果もついてくるのかなと思っています。今年の全日本もファイナルに残れるかどうかわかりませんし、自信が持てるように今後も体作りをしていきたいと思います。

BT: 今日はお忙しいところありがとうございました。昨年、日本選手権入賞、日本クラス別優勝、そして今年はジャパンオープン優勝と波に乗る山口選手の今後の益々の活躍を期待しています。
  • 山口 裕(やまぐち・ゆたか)
    1981年11月17日生まれ(34歳) 埼玉県出身
    身長165cm、体重74kg(オン)・80kg(オフ)/腕囲42cm
    職業:教師/独身・両親と同居
    趣味・洗車
    トレーニング歴13年

    初タイトル 2006年埼玉選手権75kg級

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ゴールドジムさいたまスーパーアリーナ
[ 月刊ボディビルディング 2016年11月号 ]

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