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競技特性や時期を踏まえたメニュー作成

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掲載日:2018.05.09
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①競技動作を再現したエクササイズの場合

競技動作をそのまま、または部分的に再現したエクササイズの場合、トレーニングで用いる負荷は実際の競技場面で加わる負荷よりもわずかに高い程度に設定します。

負荷設定にあたってはトレーニング中にフォームが崩れず、動作スピードが実際と大きく変わらない範囲の負荷に調整するとよいでしょう。選手がトレーニングを行ったときに違和感を感じるようであれば、負荷設定を調整することが必要です。具体的なトレーニング条件の目安は以下の通りです。
単発的に最大のパワーを発揮する競技動作の場合

実際の競技場面で加わる負荷よりもわずかに高い程度の負荷を用いて、5回以下、3~5セット、セット間の休息は2~5分に設定します。具体例としては、砲丸投げ選手が通常の砲丸よりもやや重い負荷に設定して競技動作を再現した動きでトレーニングを行うケースなどがあります。


反復的に最大パワーを発揮する競技動作の場合

実際の競技場面で加わる負荷よりもわずかに高い程度の負荷を用いて、5~10回、2~3セット、セット間の休息は2~5分に設定します。
具体例としては、メディシンボールを用いて、テニスのストローク動作やバレーボールのスパイク動作を再現した動きを行うケースなどがあります。

②クイックリフトによる爆発的パワーの向上を目的とした場合

短時間内に大きな力を発揮する爆発的パワーの向上を目的とした場合には、一気にウエイトを挙上する「クイックリフト」が有効です。クイックリフトの代表的なエクササイズとしては、パワークリーンやスナッチがありますが、動きをアレンジしたり、ダンベルを用いたりすることによって、さまざまな競技動作に幅広く対応することが可能となります。
クイックリフトのトレーニング条件の目安は以下の通りです。
単発的に最大のパワーを発揮する競技動作の場合
1RM (最大挙上重量)の80~90%の負荷を用いて、最大速度で1~2回、3~5セット、休息時間は2~5 分に設定します。陸上競技の投てきや跳躍種目、野球のバッティング動作などのパワー向上を目的とした場合に適用します。


反復的に最大パワーを発揮する競技動作の場合
1RMの75%程度の負荷を用いて、最大速度で3~5回、2~3 セット、休息時聞は2~5分に設定します。バスケットボールのリバウンドやバレーボールのブロックのように反復的に行うジャンプ動作のパワー向上を目的とした場合などに適用します。

③筋持久力や耐乳酸能力の改善を目的とした場合

持久型の競技選手が筋持久力の向上を目的とした場合の条件設定としては、1RMの60%(20RM)以下の負荷を用いて、2秒に1回程度のペースで15回以上の反復を、30秒間の休息時聞をはさんで、3セット行う方法が目安となります。

格闘技選手などを対象として耐乳酸能力(乳酸の蓄積に耐えながら大きなパワーを発揮する能力)を高めることを目的とした場合には、1セットあたり15~20回(所要時間30~40秒)でオールアウトまで反復した後、30秒程度の休息時聞をはさんで、負荷を下げながら3~5セット行う方法や、10種目程度のエクササイズを1セットずつ休息をとらずに連続的に行う方法(サーキット法)などが効果的です。
プログラムにおける専門的エクササイズの順序、種目数とセット数

専門的エクササイズは、実際の競技動作と関連した動きで行われることが多いため、筋力トレーニングのプログラムの後半に実施した場合には、疲労の影響によって、フォームが崩れたり、動作スピードが低下したりすることがあります。
このため、専門的エクササイズはできるだけプログラムの前半(できれば最初)に実施し、この後に、ベンチプレスやスクワットのような主要エクササイズ、次いで各部位を個々に強化する補助エクササイズの順に配列します。

爆発的パワーの向上を目的としたジャンプ系のエクササイズやメディシンボールを用いた各種エクササイズについても、プログラムの最初に実施します。

一方、中~高負荷を用いた下肢や体幹の専門的エクササイズについては、プログラムの最初に実施した場合には、後に実施する一般的エクササイズが疲労の影響を受けることがあるため、一般的エクササイズの後に実施することもあります。

1回のプログラムにおいて採用する専門的エクササイズの数やセット数については、高校期の選手や筋力トレーニングの初心者の場合には1~3種目、大学・社会人期の選手の場合には2~5種目を目安として選択し、各エクササイズについて2~3セットずつ実施します。
競技シーズンに応じた展開
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専門的エクササイズは、筋力トレーニングの長期計画に沿って、筋力養成期からパワー養成期にかけて量や質を少しずつ高めながら実施すると効果的です。
各期に採用する専門的エクササイズは、試合期が近づくにつれて特異性の低いタイプから高いタイプへと移行するようにします。
トレーニング効果の把握
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専門的エクササイズの導入後には、年2~3回、トレーニング効果を確認するために、各種測定を実施します。一般的エクササイズの効果を把握することを目的とした一般的測定項目(主要エクササイズの1RMなど)と、専門的エクササイズの効果を把握するための専門的測定項目の両方について実施し、競技パフォーマンスとの関連について検討します。
  • 競技スポーツ別 ウエイトトレーニングマニュアル
    著者:有賀誠司
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社

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