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トップチームのトレーニング "ラグビー" 日本代表 サンウルブズ アシスタントS&Cコーチ 太田千尋 前編

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掲載日:2018.06.15
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激しいコンタクトに耐える屈強な身体と、チャンスを逃さない俊敏性、そしてそれを試合中継続して行う持久力と集中力。ラグビー日本代表チームにおいてそれらをどう捉え、どう高めているのか。

ラグビー日本代表サンウルブズ アシスタントS&Cコーチ、慶應義塾體育會蹴球部S&Cディレクターの太田千尋氏に「ラグビー×フィジカルトレーニング」をテーマに話を伺った。

ラグビーは矛盾との戦いである

S&C(ストレングス&コンディショニング)コーチの役割として、主に選手の身体の強化とコンディショニングを、自分ともうひとり、ニュージーランド人のコーチと二人で担当しています。

フィジカルに関して、ラグビーはデカくて速くて持久力のある身体が求められるため、身体づくりも常に矛盾しています。筋肉をつけることで体重を増やしていく一方で、なおかつ継続して速く動けるようにしていく必要がある。

もちろん、ポジションによっても主としてより筋肉で体重を増やすか、速くするかは分かれてきます。 
しかし海外の選手はどのポジションもデカいので、どのポジションでも対等に、さらにはそれ以上に渡り合えるようにしないといけません。
身体が生でぶつかり合う激しいコンタクトスポーツは、生で見ると特に音がすごい。体と体がぶつかる音。会場で観戦する醍醐味の一つだと思いますので、ぜひそれを聞いてほしいです。

上のチームに勝つための原則

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自分の考えですが、小さいチームが大きなチームに勝つためには5つの原則があって、その中で3つ勝っていれば勝つチャンスがみえてきます。

①速さ
②数
③低さ
④強さ
⑤持久力


速さ…いかに相手より早くポジションをとるか、いかに相手より先に動き、戦う場所を獲得するか。それは結果的に自分達にとって有利な戦況をつくりやすくなります。

数…相手より少しでも多いこと。速く多ければなお良しです。1対1では勝てなくても、2対1ならば勝てます。

低さ…力と力の正面からのぶつかり合いでは当然、よりデカくて速い選手に負けてしまいます。しかし姿勢を低くして相手の懐に入ることで、自分の力はそのまま水平方向に、相手の力を上向きに変えることで自分に有利に動くことができます。

強さ…身体の大きさにも比例しますが、10の差があったとしたらその半分の5でもいいので近づけるようにすること。そしてその分、他の項目で勝てるようにする。身体が小さかったとしても、筋力をつけることで強い相手に近いレベルで戦えるようにすることが大事です。

持続力…上記を試合中、継続する力。

この5つのうちの3つ勝っていれば勝つチャンスがある。逆に、相手に3項目を取られてしまうと、途端に勝つことが難しくなります。なので普段のトレーニングでは至ってシンプルに、トレーニングで筋力やスピードを高めて、低い姿勢を作れる柔軟性、そしてそれらを続けられる持久力を養っています。メニュー作成に関しても上記の5原則を意識して組んでいます。

若い時期に伸ばすべきもの

フィジカル面で言うと特にスピード、敏捷性、加速力がキーになると思います。成年期以降の神経系の発達には限界があって、多少の伸び代はあるにしてもスピードは後からでは鍛えにくく、伸びにくい部分です。そのため、速さを伸ばすには幼少の若い時期しかない。ここは外せない部分だと思います。

筋肉や持久力はあとからいくらでもつけられますが、それらと違ってスピードだけはあとから上げることが難しい。
大学以降でも、例えば筋力がついたりスプリントのテクニックが変わることでスピードが上がる事はありますが、その土台となる神経系の基本部分はあとからは伸びにくいのです。
モーターで言えば、出力はあとから変えられますが、回転数を決める金具の部分は若い時期に養われたものが上限になるということです。なので、若い時期に鍛えておくべきは神経系を意識したスピード、敏捷性、加速力だと思います。

伸びる選手、伸びにくい選手

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やはり、自分自身を客観的に評価できる選手は強いですし伸びます。
今、自分にとって何が課題かを考えて、それを解決するPDCAサイクルを回している選手です。また、自分の活躍の場を心得ている選手や、あとはやはり怪我をしない選手。基本的なことですが、怪我をしないことにより練習量を保つ事も非常に重要です。

力の出し入れが上手い選手もいい選手だと思います。常にオンの状態ではなく、競技中でも休むときは休む。ずっと力が入ってしまう緊張状態が続くと非効率になるので、切り替えは大事な要素です。

それと、無理と無茶を間違えてしまってはいけません。
「無理」は限界に挑戦する意味合いですが、「無茶」は無謀なところに突っ込んでしまって怪我をしてしまったりします。そこを頑張ってもいい結果にはなりにくいと誰もが分かるところで頑張ってしまう。頑張ることは非常に大事なのですが、無理か無茶か、その方向性を見極めることが大事です。特に大学等の選手の場合はまだまだ多くの伸び代があるので、それらを見極めた上で常に自分の限界へ挑戦するように言っています。

トレーニングの内容

ジムでやることとフィールドでやることで異なりますが、ジムではまずスクワット、ベンチプレス、チンニングなどのベーシックなストレングストレーニングを重点的に行います。それらに関しては単純な実施ではなく、よりハイインパクトな負荷を意識します。高い負荷がかかっても体幹がブレずに下半身の力を伝えられるか。先述の「勝つための5つの原則」に加えて、インパクトに耐えるためのベース作りという重要な意味合いも持っています。

フィールドでの練習では選手全てにGPSを装着して測定しています。
自分は2008年くらいからGPSを使い初め、日本代表チームだけでなく大学などにも導入して、走っている速度や距離、加速回数等のあらゆるデータを取り、分析しながらメニューを組んでいます。試合と同じ強度を毎日続けると怪我の原因になりますので、強度や速度は試合に近いか、もしくは少し上を狙い、負荷がうまく分散されるようにしています。

ハードワーク・ハードリカバリー

日本代表や大学などに限らずどのレベルの選手においても、試合でかかる以上の強度で技術が遂行できないと練習の意味がありません。なので、練習やトレーニングは試合以上の負荷でやります。
しかしそれを毎日やっていたら、当然怪我をしてしまうので、ハードワークをするためには質の高いハードリカバリーをする必要があります。
高いパフォーマンスはハードワークにより支えられ、ハードワークを支えているのがハードリカバリー。この関係性がすごく大事です。

効率のいいリカバリーとは

リカバリーの原理として、睡眠と栄養があります。 
夜更かしをしたり不必要に飲み歩いたりしないで、今の課題を念頭に置いて、自分でコントロールして常に質の高い睡眠をとる環境を作ること。

食事も、自分に必要な栄養を試合や練習直後に確実に摂ること。
また、トレーニングや練習、試合の強度に応じてリカバリーの内容も変えること。全然負荷がかかっていないのにもかかわらず過剰なリカバリーは必要ありませんし、その時間をトレーニングや勉強にあてることも、別のこともできます。

コンタクトが多い時は、筋肉に炎症や内出血等が起きます。そういったときはアイスバスに入って身体を冷却して、抗炎症作用をもつ食べ物を多く摂ります。例えば、蛋白質もそうですが特に魚の油。サーモンやマグロ等は抗炎症作用がありますので、意識して多く摂取するようにします。

多く走って疲労物質が溜まっている時には温浴と冷浴を交互に繰り返す、交代浴を取り入れたりもします。そのあたりに関してはメディカルや栄養士の方と一緒にメニューを考えていきます。

【トップチームのトレーニング "ラグビー" 日本代表 サンウルブズ アシスタントS&Cコーチ 太田千尋 後編】

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