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トレーニング現場におけるデータ取得とそのフィードバック方法#3 ~選手やコーチの主観も生かした情報抽出のあり方~

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掲載日:2018.08.20
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特定非営利活動法人NSCAジャパン ストレングス&コンディショニングフォーラム2018より、鹿屋体育大学教授 鹿屋体育大学スポーツトレーニング教育研究センター センター長、山本正嘉氏の講演をレポート。

データによる予測精度を高めるには

選手やコーチがデータに期待することは、成功率が高い、失敗しにくい、効率が良い、無駄が少ないなどです。これらのためには高い予測能力が求められます。
科学においては全てに共通して同じことが言える「普遍性」が必須ですが、トレーニングの原則にはその中の一つに「個別性」があります。

その例として、福永哲夫氏提供のデータがあります。
毎朝の自分の握力を測定して経年的に記述すると、毎年ピークが夏で、冬に低いという規則性があることがわかりました。
これを何年も続けていくうち、朝に握力計を握った時、メモリを見なくても何kgの数値になっているか把握できたそうです。

自分のデータを蓄積していくと、自ずと自分の身体が分かってくる。記述を続けるとはっきりと姿が見えるんです。

福永先生はこれを元に、毎年8月にピークが来ているので、仮に自分が選手で10月の国体に出るとして、それにピークを合わせられないかと考えて、ピークをずらせないかといろいろ試行錯誤された。サプリを飲んだりいろいろ取り組まれましたが、意図的にずらすことはできていないそうです。

また、逆に言うとデータを一回とったくらいで何かを予測しようとすると正確さに欠けることが考えられます。データは積み重なって初めて価値を成します。地道に積み重ねていくしかありません。

データを積み重ねるほど予測能力は高まる

例えば、体重を記録するだけのダイエット法は他の方法よりも成功率が高いとされています。

まずは記録をつけ(記述)、なぜ増えたのかを考え(説明)、データが溜まってくるとどうすれば体重が減るのかが分かってきます(予測)。そして、実際に予測が的中して体重が減ってくるとやる気が出て、さらに工夫しようという気持ちになります(操作)。

データが蓄積することで、普段見過ごしていることが見えてくる(記述と説明)。そしてどうすればいいのかも分かってきます(予測や操作)。高価な機械がなくても、体重計と紙一枚さえあれば自分で科学的な取り組みができるのです。

選手やコーチの主観も、蓄積させることで予測能力を発揮でき、選手の疲労度や痛みを主観でVAS(Visual analog scale)を用いて毎日表に記録させていき、それをつなぐとその期間中のコンディションの把握がしやすくなり、それに合わせてトレーニング強度の調節もしやすくなります。

データを活用したトレーニングは、PDCAサイクルの典型であり、科学的なトレーニングであり、実践研究でもあります。こういったデータが自分には関係ないと考えず、データを活用したトレーニングをすることで選手のためにも研究にもなりますし、後にも活用することができるようになります。

オーバートレーニングのチェック項目

オーバートレーニングのチェック項目に関しては、パフォーマンスが安定しているか、疲労しても回復が早いか、運動中止後10分経っても心拍数が100以下にならない、もしくは息切れが続いているなどの様々な項目が挙げられていますが、これらの項目をただ見て頭で考えているだけでは効果は小さく、VASなどで可視化し、毎日記録を付けて変化を見ると威力を発揮すると思います。

例えば、起床時の心拍数を記録し続けることで自分の体調を予測することができます。

他の分野での予測精度

例えば天気予報はたくさんのデータに基づいているので比較的正確な予測が可能です。ただし、絶対的に正しいわけではないので予報が外れるときもあります。
一方、自身や火山の爆発はデータが少ないため予測が困難です。現状では、突発的に起こる災害を食い止められないことが多くあります。

【まとめ】データを活用したトレーニングとは

一般人が持つイメージ
①科学者がいないとできない
②高価な機械がないとできない
③誰にでも当てはまるような普遍性を持つ
④それをやると誰でもすぐに強くなれる
⑤失敗することがない
⑥科学的に根拠が証明されている方法で行う



①選手やコーチが自身で実践することに本当の意義がある
②主観を紙に書いて可視化するだけでも実行可能
③「個別性の原則」により、万人にとって一律に有効な方法はない
④データは蓄積しないと威力を発揮しない。したがって時間がかかる
⑤失敗もあるが、PDCAサイクルを繰り返すことで成功率が高まっていく
⑥科学の手法で証明された知見は限られているので、それと合わせて自身の身体でデータを積み上げ、科学的なトレーニングを自ら実行することが重要


まずは、現状で取得できるデータを取り、それを続けてみてください。