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第一回 新サプリメント・トピックス 注目の素材トリプトファン

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.07.25
 私は仕事柄、新しい素材に関しては、それなりに意識しているつもりです。ブームになるか否かは別として、新たな可能性を感じる素材と出会う瞬間はかなりわくわくするものです。
 新しい素材として一番簡単にチェックできるのは、食薬区分の改定かもしれません。これまで専ら薬としてしか扱う事が出来なかった素材の安全性などが確認されて、食品としても使う事が可能となるというケースです。
一番最近の例では、「シトルリン」というアミノ酸(の一種)がこれに該当します。それまでも一大ブームとなったCOQ10やL-カルニチン、αリポ酸などが食品として扱う事が可能となったことにより、より一般的に認知されるようになってきました。
 私がパワープロダクションというブランドを立ち上げるきっかけとなったのは「クレアチン」でした。アメリカでは当たり前のように使われていたクレアチンなる素材が、当時の日本ではなかなかお目にかかれず、色々な専門家に尋ねてもクレアチンが日本で食品として使っていいのかどうかもよく分からないような状態でした。
当時インターネットでクレアチンについて日本語で検索しても3件ほどしかヒットせず、ヒアリングするために、鹿児島にある鹿屋体育大学まで出かけたりしていました。
結局クレアチンは食薬区分云々とは関係なく、人間が長期間にわたって食してきた物質として食品扱いとなり、今では当たり前のようにサプリメントショップで販売されています。
 そして今私が気になる素材は、『トリプトファン』というアミノ酸です。これは別に新しい素材ではなく、必須アミノ酸の一つで元々牛乳から発見されたと言われています。必須アミノ酸ですから体内では合成することができず、他の8種類の必須アミノ酸と反応しあって、様々な体の材料として使われます。
 そしてトリプトファンには単独での効果もあります。トリプトファンは脳に運ばれ、セロトニンの材料となるのです。セロトニンは、精神安定や鎮静、催眠効果のある神経伝達物質で、更に脳内の松果体でメラトニンに変換されます。メラトニンは睡眠サイクルに大きく関与するホルモンなので、筋肉の成長にも必須といえるでしょう。いかにハードなトレーニン
グを積んで体を追い込み、またしっかりとした栄養が補充できていたとしても、最後の最後で睡眠が充実していないと効果に大きなロスが生まれてしまいます。
 また、トリプトファンは、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の生成過程に、アミノ酸の一種であるチロシンと一緒に関与しています。
 これほど重要なアミノ酸であるトリプトファンなのですが、意外にも敢えて総合アミノ酸からトリプトファンを抜いているサプリメントも少なくありません。
 これには理由があって、1980年代の後半に遺伝子組み換えによるトリプトファンの生産時に副産物として不純物が生成されてしまい、結果として死者までが出る健康被害の事故がありました。それが原因となりアメリカの総合アミノ酸系のサプリメントには
トリプトファンは配合されていません。
 この事故自体は死者まで出ているので、決して軽んじてはいけない話ですが、これとトリプトファンが健康被害をもたらすというのは別の話であります(健康被害は製造過程で生じた不純物です)。
少なくともトリプトファンは必須アミノ酸の一つであり、代わりがきかないアミノ酸なのですからトリプトファン抜きの総合アミノ酸は栄養価が理論上は0ということになってしまいます(アミノ酸スコア0)。
 実際は食事から出てくるトリプトファン含め他のアミノ酸がアミノ酸プールとして血中にありますから、全く効果がないということにはなりませんし、必須アミノ酸の中のBCAAだけでも効果があったりもしますが、摂取した総合アミノ酸だけでの効果ということにあると限りなく小さいということになります。
 BCAAを飲むと集中力が増すといわれていますが、これは血液中でBCAAとトリプトファンが拮抗した状態にあり、運動によってBCAAが消耗されると相対的にトリプトファンが増えた状態となり、結果として脳内のセロトニンの材料が増えるために集中力が途切れるといった仕組みです。
 従って睡眠時はこの仕組みを逆に利用して、ホットミルクを飲んで寝たりすると牛乳からのトリプトファンの効果によって安眠ができるとされています(実際はホットミルクで体が温まる効果が大きいと言われていますが)。
 実際、原料メーカーにお願いをして、単体のトリプトファンを取り寄せ、就寝の30分くらい前に摂取したところ、想定以上の睡眠効果が体感できました。
ここに『エキストラ・アミノアシッド』を加えると最強の組み合わせであり、睡眠の効果としてはかなり実感度合いが高いといえます。
 ちなみにトリプトファンと相性のいい栄養素はビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムといったところです。
記事画像1
江崎グリコ株式会社スポーツ営業部
桑原弘樹
[ 月刊ボディビルディング 20100年1月号 ]

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