フィジーク・オンライン

メイラード反応

この記事をシェアする

0
[ 月刊ボディビルディング 2013年3月号 ]
掲載日:2017.08.02
 メイラード反応とは、一般にはあまり聞きなれない言葉かもしれません。簡単に言えば、糖とアミノ酸(たんぱく質)が化学的に反応して褐色の物質を作ることです。少し専門的にはアミノカルボニル反応とも呼ばれます。

 このメイラード反応が良い物なのか悪い物なのかは、その反応する状況によります。例えばキャラメルの色が一般的に茶色いのはメイラード反応です。クッキーなどを焼いた際の茶色もメイラード反応です。色のみならず、その香ばしい香りなどもメイラード反応が深くかかわっています。従って食べ物においてのメイラード反応は必ずしもNGとは言えません。

 しかし、度を超して焦げるまでの処理をした場合は、アクリルアミドなどの発がん性の物質を生んだり、決して好ましい状況とは言えません。実はこのメイラード反応は肌でも起こっています。私は以前、女性のお肌を想定したサプリメントを開発したことがありました。その頃は自分自身の肌に関してはまったくといっていいくらい関心がなく、コンテストに向けても天日でも焼きたい時に焼き放題といった生活でした。従って、私自身が必要としてというよりは、周りの女性達の美肌への関心の高さから製品を開発したのでした。

 しかし昨年50歳を過ぎて減量をした際、腹筋周りには皮膚がだぶつき、しかもこのだぶつきだけは最後の最後まで解消できませんでした。属人的な問題かと思いきや、トップビルダー達であってもポーズをとっている時は張りのある状態を維持できていても、前に屈んだ状態などでは腹回りではだぶついた皮膚が目立ちます。

 しかもコンテストビルダーの場合は日焼けが必須です。最近はタンニングマシンなどの普及によって、随分と日焼けもストレスを感じにくくなりましたが、それでもコンテストレベルまでの日焼けは肌へのダメージがないとはいえません。一般に天日との併用がもっとも綺麗に焼けると言われていますので、コンテスト時点で美しく焼けた状態であっても、オフに入って日焼けが落ちてくると肌のダメージは顕著であります。

 若い頃はあまり気にならない肌への影響ですが、年齢と共に筋肉同様のケアが必要になってくるかもしれません。何故ならば、ボディビルは究極のフィギュア競技であり、その一番の武器は筋肉でありますが、その筋肉を覆っているのは皮膚であり肌だからです。

 そして、その肌の老化に、前述のメイラード反応が大きくかかわっているのです。

 肌の主成分といえばコラーゲン(たんぱく質)ですが、これが糖にふれてメイラード反応を起こすことで、肌を作るコラーゲンの機能が低下してしまいます。コラーゲンがメイラード反応を起こすとAGEs(Advanced Glycation Endproducts)という最終糖化生成物をつくりだします。このAGEsが肌の繊維芽細胞を減少させ、肌機能が低下していくのです。

 話がそれるようですが、ボディビルの世界でドリアンといえば、ほとんどの人がドリアン・イエーツを思い起こすでしょう。しかし果物の王様もドリアンであります。一方で果物の女王様はマンゴスチンだそうです。唐突なようですが、このマンゴスチンに含まれるポリフェノール類に肌の機能を保護・維持する効果が報告されています。

 マンゴスチン由来のポリフェノールには、主としてキトサン類、プロシアニジン類、カテキン類がありますが、これらのポリフェノール類に抗糖化作用と繊維芽細胞賦活作用が確認されています。

 まず先ほどのAGEsと呼ばれる最終糖化生成物を抑制し、コラーゲン自体の機能を守ります。そしてAGEsが抑制されることで、繊維芽細胞を増やす方向に向かわせます。結果として肌機能が向上し、みずみずしい肌になるという仕組みです。

 このマンゴスチンのヒトへの有用性も確認されていて、マンゴスチンエキスを摂取することで肌のAGEsの蓄積が抑制されることが8週間の実験で確認されました。それは肌の粘弾性や肌の水分量にも顕著に現れており、今後美容分野では注目を集める可能性があります。

 今回は敢えて筋肉やトレーニングから少し離れたテーマを掲げてみました。それはオフにやるべき事の中に、身体の修復という項目があり、その身体という意味は、筋肉のみならず、内臓、骨、腱、そして肌という要素も含まれるという点を意識したかったからです。

 お酒を控えて内臓(肝臓)を休め、グルタミンを効率よく活用することで胃腸を元気にし、コラーゲンで腱や骨へのダメージを回復させ、更には夏場に大きなダメージを余儀なくされる肌にまで意識をもっていくことがオフの役割かもしれません。オフは開放的で自由なイメージがありますが、質の高いオンシーズンを迎えるためにも、計画的なオフシーズンを送ってみてはいかがでしょうか。
果物の女王マンゴスチン

果物の女王マンゴスチン

記事画像2
江崎グリコ株式会社スポーツフーズ営業部
桑原弘樹
[ 月刊ボディビルディング 2013年3月号 ]

Recommend