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三大栄養素だけでなく、微量栄養素が重要な理由 / ダイエットコーチに学ぶスポーツ栄養学

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掲載日:2015.06.05


微量栄養素の管理というと小難しくて退屈なイメージがありますが、完全に無視してしまうのは良くありません。できるだけシンプルに、大事なポイントを押さえられるように紹介していきたいと思います。

・ ダイエット中には特に注意が必要ですが、なんとなく元気が出ない、顔色が悪い、空腹感がひどい、睡眠サイクルが安定しないなどの問題があるときは、微量栄養素がうまく摂れていないことが原因かも知れません
・ 長期にわたって微量栄養素不足が続くと身体づくりも思うように進まなくなります
・ ダイエット中は微量栄養素も不足しやすくなるので、サプリメントを考えるのも良いでしょう

・ まずは、微量栄養素が摂れる食べ物選びが大切です。その上でマルチビタミンを飲むと手堅く補えるでしょう。食事内容がいい加減だとマルチビタミンを飲んでも解決策にはなりません
・ 水分補給は、健康、トレーニングのパフォーマンス、脂肪燃焼など色んな所に影響してきます1日に5回透明な尿を目指しましょう

ざっくりした概要は上記のとおりです。できるだけ簡潔で実践的な内容になるようまとめてみました。


そもそも微量栄養素とは?


ずばり、ビタミンとミネラルのことです。
たんぱく質・炭水化物・脂肪の三大栄養素は多量栄養素とも言われ、通常グラム単位で量を測りますが、ビタミン・ミネラルの摂取量は通常ミリグラム単位になります。必要な量が小さくなるので「微量栄養素」と呼ばれています。

私たちの身体をクルマに例えると、三大栄養素はエンジンを動かすためのガソリンにあたります。微量栄養素は、エンジンオイルなど故障を防ぐための潤滑剤だと思ってください。

最近はミネラルという言葉の方が定着した感がありますが、日本語では無機質とも言います。ミネラルは、必要量に応じて多量ミネラル(カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム etc.)と、微量ミネラル(鉄、亜鉛、銅 etc.)に分かれます。

ビタミンは有機体です。水溶性と脂溶性に分かれます。脂溶性ビタミンは体内に蓄積され摂り過ぎてしまうと問題もありますが、摂取過多も不足も時間を掛けて起きます。水溶性ビタミンは、摂り過ぎても吸収されず尿で体外に排出されるので、摂取過多になる心配はあまりありません。風邪ぎみでビタミンCをたくさん摂ったから具合が悪くなったという話を聞かないのはこういうことですが、裏を返せば、毎日こまめに摂り続けるのが大切ということです。


微量栄養素管理のアプローチ




問題が起きる前に実践できる対策を
例えば「元気が出ない、倦怠感が抜けない」と感じる場合、減量中でカロリー不足なのが原因かも知れないし、微量栄養素不足が原因かも知れません。さらには、睡眠不足、仕事や家庭でのストレス、風邪の引き始めなどなど食生活とはまったく無関係の可能性も十分あります。

お金と時間に余裕があって、とにかくしっかり調べたいと思うなら、血液検査を受けてみるのも良いかも知れませんが、この記事を読まれてる方の大半はその必要はないでしょう。人はみんな「自分はどこか特別なんだ」と思わせてくれる物が好きです。

企業はそんな気持ちにつけ込んで「あなたはあんな問題やこんな問題を抱えているかも知れませんよ」と持ちかけてきます。特に心配する必要のない問題をでっちあげて、解決策を提供しようとします。血液検査を勧めるような企業は、決まって薬や健康食品を売っていたりするものです。

調子を崩して血液検査に病院に走る前に、食事でできる対策を実践しておきましょう。問題の予防にもなりますし、食事内容がしっかりしていれば原因は他にあると考えやすくなります。


三大栄養素 VS 微量栄養素
英語圏では、“IIFYM – If It Fits Your Macros”と言って、体形改善を考える上では、三大栄養素まで押さえれば結果はついてくるという考え方があります。

日本では、カロリー収支とたんぱく質摂取量くらいまでが語られることが多いですね。このピラミッドの中でも「カロリー」と「三大栄養素」がより重要な位置にありますが、実際どうなのか?

三大栄養素を満たすことだけを考えると食生活の自由度は上がりますが、うまく配分が考えられた設定でも、人によってはとても偏った食べ方をしていることがあります。(例:ファーストフード+プロテイン etc.)

これでは微量栄養素を十分に摂れませんし、さらに減量の食事制限と空腹感がプラスされると、いろんな問題につながる可能性があります。

健康管理にしても体形改善にしても、食品選びのバランスが大切です。ファーストフード中心の食生活も、減量中のボディビルダーによく見られる鶏肉と数種類の野菜だけという食生活も長い目で見て健康的とは言えません。極端に一方向に偏らないことが大切です。自分の好きな食べ物も、ビタミン・ミネラル豊富で健康的な食べ物も、いかにして自分の食生活に取り込めるかという視点を持ちましょう。


野菜と果物の摂取量ガイド




身体づくりに興味があってこの記事を読んでいる人のほとんどは、肉・乳製品・炭水化物から摂れる微量栄養素に関しては心配ないと思います。たいていの場合、私たちが注意しないといけないのは野菜と果物です。調理の手間などで、毎日ちゃんと摂れなくなりがちです。これまでクライアントさんには以下のとおりアドバイスをしてきました。

・ 果物は毎日1〜2個食べる
・ 食事ごとに食物繊維のある野菜を摂る
・ 野菜も果物もできるだけバラエティを持たせて、絶えず同じ物にならないようにする


これで何か問題があれば、食物繊維が十分摂れているかチェックしたり、マルチビタミン剤を飲むように勧めたりして改善を試みます。これが一番カンタンな微量栄養素不足の対策でしょう。

もっと具体的に摂取量を設定したい場合には、下の表が目安になると思います。



この数字はエリック・ヘルムスが、コンテストビルダーのダイエット指導の際に使っている目安です。ここでのカップとはアメリカの計量カップで240ccにあたります。
上の表にいくつか例を挙げてみましたが、そのくらいのサイズのコップに入るだけの野菜・果物と考えればOKです。

全体の食事量に合わせて野菜・果物の摂取量も変わります。理由は次のとおり。
食事量が減ると、摂取カロリーや三大栄養素の枠からはみ出さずに摂れる野菜・果物の量は自ずと限られてくるから。食事量が増えると、それにあわせてより多くの食物繊維が必要になるから。

さて、オススメ摂取量の目安が出ましたが「じゃ、必要最低限ってどんくらいなの?」と思う若い男子は少なくないんじゃないかと思います。この疑問にハッキリ答えを出すことはできませんが、ちょっと関連する話を付け足しておこうと思います。


野菜・果物の代わりにマルチビタミンはダメ


残念ながら、マルチビタミンを飲んで野菜・果物を食べないのはナシです。野菜ジュースや100%のフルーツジュースも代わりにはなりません。

私は、20代半ばまで野菜が嫌いでした。料理するのも面倒だし食費が膨らむだけだと思っていました。今は食の好みも変わって、おいしく食べられるようになりましたが、当時はマルチビタミンを飲んでいれば野菜を抜いても構わないと真剣に考えていました。何故ダメなのかという話はアラン・アラゴンの言葉を借りたいと思います。

食生活がダメな所にマルチビタミンを足しても、やっぱりダメな物はダメ。
マルチビタミンやミネラルサプリメントでは摂れない、人の身体に良い生理活性物質はたくさんある。
人の身体にとって必須のビタミン・ミネラルとして分類されていなくても、病気の予防や健康増進に効果のある物質もある。こういうことを踏まえて微量栄養素を考えるときには、幅広い食品群からバラエティのある食べ物選びをすることが大切です。


減量中は気を付けて


ダイエット中の人は特に微量栄養素が不足しやすくなります。
アメリカのスポーツ栄養学の専門家アラン・アラゴンが書くリサーチレビューでこのテーマが取り上げられていましたが、その度合いには驚かされます。

人気の4種類のダイエットプランを対象に、27種類の微量栄養素の欠乏具合を調べた2010年の研究では…

① 4種類のダイエットをそれぞれの実践ガイドに沿って行ったところ、27種類の微量栄養素の推奨量をすべて満たせたダイエット法は無かった。
② 特に、6種類の微量栄養素(ビタミンB7・ビタミンD・ビタミンE・クロム・ヨウ素・モリブデン)が、すべてのダイエットで大きく不足するか、まったく摂れていなかった。
③ この4種類のダイエット法の実践者は、平均して微量栄養素の推奨量の56.48%しか摂取できておらず、調査対象になった27種類のうち15種類が不足しているという結果になった。

要するに、減量中にはかなりの確率で何らかの微量栄養素不足が起こっているということです。それが減量の進み具合に悪影響を与えないとも限りません。減量中には、食品選びに気を配るだけでなく、ビタミンやミネラルのサプリメントで補うのは良い事でしょう。


水分補給




減量時の体脂肪減にも、トレーニングのパフォーマンスにも水分補給は重要です。
水分の摂取量については、ライル・マクドナルドが勧める「1日5回透明な尿が出る程度」という目安を使っている人が多いです。
水分の摂取量は、汗の量の個人差が大きい事や、住んでいる地域の気候によっても左右されるので、体重を基準に考えることができません。特にトレーニングに影響がでないよう、十分に水分が摂れている状態を保つようにしましょう。

  • アンディ・モーガン
    イギリス出身のダイエットコーチ兼パーソナルトレーナー。日本在住で滞在歴は7年。フィットネス業界にはいい加減な情報やデタラメが多く、特に日本では本当に使える情報源が少ない現状を少しでも変えたいと、ウェブサイトを立ち上げて日本語・英語両方で情報を発信している。ボディビルダー、格闘家、一般トレーニーなどのダイエット指導を行う一方、その指導経験をガイドにまとめてウェブサイトで公開中。

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[ PHYSIQUE MAGAZINE 005 ]

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