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糖を摂りすぎたら脂肪になる?脂肪と糖質の関係性とは?

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掲載日:2016.04.18


今回は脂肪肝についてお話しします。

肝臓の細胞には多くのグリコーゲン(糖質エネルギー)が蓄積されています。でも肝臓の中性脂肪貯蔵量は正常の肝臓ではとても少なく、肝重量の1%以下しかありません。

何らかの代謝異常によって脂肪が異常に蓄積されると脂肪肝になります。脂肪肝はエコーで見るよりも早く、血液データに現れます。基準値内であってもGOTよりGPTが上回っていたら(GOT<GPT)、脂肪肝はもう始まっています。

しかし、肝臓は“沈黙の臓器”と言われるように何の自覚症状もありませんから、「脂肪肝がありますね」と言われでも「それがどうした」くらいに思っている人もいるかも知れません。

脂肪肝の原因は様々ですがその殆どは生活改善で健康な肝臓に戻ります。
・アルコール→禁酒
・タンパク質摂取不足(痩せているのに内臓脂肪が高く、ぶよぶよしている)→タンパク質摂取
・糖尿病→減量
・肥満(肝臓や脂肪がリポタンパクとして分泌できる能力を超えて脂肪合成が増加する)→減量

その他、C型肝炎などでも脂肪肝になる事があります。

肝臓に必要以上の脂肪が溜まると肝臓の働きは低下し、益々太りやすくなります。太り出すと加速度が付く、というのはこの状態です。そうなる前に折り返し地点で帰ってきて欲しいものです。

例え体重性のスポーツで増量が必要でも、食べ方には注意して下さいね。


脂肪の代謝


小腸から吸収された脂質は、タンパク質と結合して各組織に運ばれます。ここでも、脂肪を運ぶ為に“タンパク質のトラック”が不可欠なのです。

脂肪を分解する酵素(リパーゼ)もタンパク質から作られます。ですから、タンパク質は脂肪の代謝に欠かせないのです。

脂肪酸の代謝は細胞の外膜で別の物質に代謝され、更にミトコンドリアの内膜でまた代謝され、やっと細胞の中(マトリックス)に入ります。この内膜での代謝に欠かせないのがカルニチンというアミノ酸です。

カルニチンが体内で作られる為にはビタミンCが必要ですので、ビタミンCが不足すると脂肪が上手く代謝されない、という事になります。なにやら風が吹くと桶屋が・・・的なお話しですが、栄養の代謝は殆ど、このようなリンクした関係を作っています。

近年、慢性疲労性症候群の原因はビタミンCの欠乏によるカルニチン代謝異常が考えられています。中高年になるとカルニチンが作られにくくなっていく事も知られていますので、ビタミンCは多めに摂取する事をお勧めします。

手っ取り早くカルニチンをサプリメントで摂る方もいらっしゃいますが、原価はカルニチンよりビタミンCの方が遥かに安いです。同じお金を使うなら効率よく使いたいですね。


脂肪合成の原料は糟質


こちらでもお話した通り、脂肪が体内で合成されるには糖(グルコース)が欠かせません。グルコースがグリセリンとなり、そこに炭素の鎖がくっつくと中性脂肪の出来上がりです。

また、代謝の行われる細胞の膜とミトコンドリアの中では、前駆体、中間物質、補酵素などが大きく関わってきます。特にアセチル-CoA、ATP、NADPH、α-グリセロリン酸を生合成する代謝経路には炭水化物が欠かせません。

食べた脂肪の量ではなく糖質の量が、脂肪蓄積の鍵となるのです。糖を摂りすぎたら脂肪になる、と考えて下さい。


  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)

    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901〜1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ アスリートのための分子栄養学 ]

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