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タンパク質の「変性」とは

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掲載日:2018.10.25
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「加熱するとタンパク質が変性するから、生で食べた方がいいのですか?」と聞かれることがあります。

答えは「NO!」。

加熱したほうがずっと良いのです。前述のとおり、タンパク質を加熱すると高次構造が崩れます。
一次構造が変化しないで、高次構造が変化することを「変性」と呼びます。
「変性」というと悪いことのように思えてしまいますが、単に構造が変わるだけのことです。タンパク質がダメになるわけではありません。

そして高次構造が崩れるとタンパク質の糸網がほぐれて、中にある一次構造が表面に露出してきます。
生の未変性のタンパク質は高次構造がキープされているため、一次構造が糸網の中に隠れたままになっています。この状態だと消化酵素が働くことができません。

だから生肉や生卵は消化が悪いのです。
逆に加熱して一次構造が露出すると、消化酵素の作用を受けやすくなるわけです。そのため肉や魚、卵などは加熱した方が消化は良くなるのです。

ただし加熱し過ぎると、疎水性の部分(水に溶けない部分)が表面に出てくるため、消化酵素が働きにくくなります。
そのため、半熟卵は消化が早いのですが、固ゆで卵はかえって消化が遅くなります。

また加熱のし過ぎは前述のとおり、アミノカルボニル反応を促進してアルギニンやリジンを変質させてしまいます。これはプロテインスコアを落としてしまう可能性があります。
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タンパク質合成の指示と経路

DNAに「タンパク質を合成せよ」という指令が伝わり、タンパク質の構造がつくられると前述しました。では、その指令は具体的にどのようなものなのでしょうか。

「PART1 炭水化物」のインスリンの項で紹介しましたが、インスリンが働くときにはインスリンレセプターに結び付く必要があります。
この二つが結合するとIRSsというタンパク質がチロシンリン酸化され、PI3キナーゼ(PI3K)という酵素を活性化します。

PI3KはGLUT4というブドウ糖の運び屋を細胞膜表面に持ってくる働きをしますが、他にも働きがあります。
PI3Kはakt(プロテインキナーゼB)という酵素を活性化し、それによってmTORというシグナル伝達経路が活性化するのです。

mTORとは

mTORとはなんでしょうか。
これはmammalian targetof rapamycin の頭文字を取ったものです。Mammalianは哺乳類。
Rapamycinは抗生物質の一種です。もともと抗生物質の標的として発見されたため、このような名前がついています。

mTORはDNAの転写・翻訳や成長因子、細胞のエネルギー、酸化還元状態など様々な細胞内外の環境情報を統合し、細胞の成長を主に調飾していく「シグナル伝達経路」だと考えてください。

mTORが活性化すると、その下流にあるタンパク合成酵素(p70s6kや4E-BP1)がリン酸化して、タンパク質の合成が増えるのです。
つまりPI3K→akt→mTOR-p70s6kという流れにより、タンパク合成が活性化します。
PI3Kはインスリンだけでなく、テストステロンや成長ホルモン、IGF-1(インスリン様成長因子)などによって活性化されます。
筋肉のタンパク合成には、このPI3K/akt/mTOR経路が大きく作用します。
その他にRAS/MAPKシグナル伝達系やカルシニューリン系などのシグナル伝達経路がタンパク合成にかかわってきます。
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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