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ビタミンDの効果とは #1

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掲載日:2020.02.20
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ビタミンDに関する最近の研究はダイエッターやアスリートにとって見逃せないものが数多くあります。

まずはレプチンについて。
ビタミンDが足りないと、「レプチン」というホルモンの働きが阻害されます。
レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンですが、主な作用としては満腹中枢を刺激することによって食欲を抑えたり、脂肪細胞の分解を促進して中性脂肪を脂肪酸にしたりする働きがあります。

梅雨時などで日光に当たらなくなると、食欲が増えたり体脂肪の分解が滞ったりしてしまう可能性があるわけです。
また引きこもっていたりする人は、運動不足だけでなくビタミンDの不足による肥満も起こりやすいはずです。

そこで12週間に渡ってビタミンDを一日25μg(1000IU)投与したところ、平均で2.7kgの体脂肪が減ったという結果が出ています。しかも食事制限も運動もしていません。(※82)

ビタミンDが不足すると筋肉内に脂肪が入り込んでくることがあり、それが筋肉の機能を低下させてしまいます。
そして分化した組織細胞が、何らかの刺激を受けてほかのタイプの細胞に変化することを、分化転換(transdifferentiation)と呼びます。


ビタミンDの量が少ないと、筋前駆細胞の分化転換が起こって脂肪細胞が増えることにより、脂肪滴の蓄積が増えることがわかりました。

逆にビタミンDの量が多いと、分化転換が減衰し、脂肪滴の蓄積が少なくなりました。
このときは同時に筋肉細胞の増加も起こっています。

ただしビタミンDの量が非常に多い場合、脂肪滴の増加と筋肉細胞の増加はどちらも抑制されました。(※83)

2017年1月に発表された京都大学の研究では、25-OH-DがSREBPの結合パートナーであるSCAPをユビキチン・プロテアソーム系によって分解し、SREBPを不安定化させて働きを抑制することがわかりました。

これにより、数々の脂質代謝疾患の治療に対するアプローチが期待できます。(※84)またビタミンDがカルシウムの吸収を高めることは知られていますが、それだけでなくビタミンDを一日に1000IU、サプリメントとして摂取することでタイプⅡ(速筋繊維)の量が増え、骨折の割合が減ったとする報告もあります。

また高齢者は特に転倒によって骨折する割合が高いのですが、ビタミンDを摂取することにより筋力が強化され、また骨も強くなることにより、転倒しにくくなる上に、骨折する可能性も低下するようです。(※85,※86)
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※82: A 12-week double-blind randomized clinical trial of vitamin D supplementation on body fat mass in healthy overweight and obese women. Nutr J. 2012 Sep 22; 11: 78. doi: 10. 1186/ 1475-2891-11-78.

※83: Dose-dependent Dose-dependent effects of vitamin D on transdifferentiation of skeletal muscle cells to adipose cells. J Endocrinol. 2013 Apr 1; 217( 1): 45-58. doi: 10. 1530/ JOE-12-0234. Print 2013 Apr.

※84: Vitamin D Metabolite, 25-Hydroxyvitamin D, Regulates Lipid Metabolism by Inducing Degradation of SREBP/ SCAP. Cell Chemical Biology, 24.

※85:Treatment of vitamin D deficiency increases lower limb muscle strength in institutionalized older people independently of regular physical activity: a randomized double-blind controlled trial. Ann Nutr Metab. 2009; 54( 4): 291-300. doi: 10. 1159/ 000235874. Epub 2009 Aug 31.

※86: Low-dose vitamin D prevents muscular atrophy and reduces falls and hip fractures in women after stroke: a randomized controlled trial.Cerebrovasc Dis. 2005; 20( 3): 187-92. Epub 2005 Jul 27.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


[ アスリートのための最新栄養学(上) ]