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糖質代謝と低血糖①<ブドウ糖の分解と生成>

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掲載日:2017.01.11
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糖質はタン白質、脂肪と並んで3大栄養素と呼ばれる、人間の身体に最も必要な栄養素の一つです。

1g=4kcalのエネルギー源であり、拡散、糖脂質、糖タン白質などの構成成分となります。エネルギー源としては優先的に利用されるため、タン白質利用の節約をしてくれるスグレモノです。

ブドウ糖の分解と生成

摂取され、余ったブドウ糖はグリコーゲンという形のエネルギーの元となり、肝臓や筋肉に貯蔵されます。貯蔵されたグリコーゲンは必要なときに分解され、肝グリコーゲンは血糖維持に、筋グリコーゲンはエネルギーとして利用されます。そのため、スタミナはグリコーゲンの貯蔵量に比例するのです。

肝グリコーゲン

肝臓に貯蔵されるグリコーゲン量は、身体の栄養状態によって変化します。

血糖は通常、補給されなければ2~3時間で無くなります。飢餓状態などで血糖が下がると、肝グリコーゲンを分解して血糖を補います。しかし、この貯蔵量は12~14時間が限度と言われています。ですから、夕食後から何も摂取せず、朝食も抜くと当然、脳に回す糖はありませんから、低血糖を招くことになります。朝食を抜くとやる気が出ないのは、当たり前の事ですね。

筋グリコーゲン

筋肉のグリコーゲンは、体内の糖の貯金箱としては一番大きな場所です。血液中のブドウ糖から合成される筋肉のグリコーゲンは、筋トレなどエネルギーが必要な時に消費され、失われた量は血液中から順次補給されます。重い重量のセットを組んで、インターバル後に次の重量のセットをやるときに回復しているのは、このような仕組みだからです。

筋肉中のグリコーゲンがブドウ糖に分解されて血液中に入る事はありません。しかし、運動をすると筋肉中のグリコーゲンは解糖され、その際に乳酸が発生します。乳酸は血液に入り、肝臓に運ばれ、また糖に変換され、グリコーゲンに合成されます。

インスリン分泌のメカニズム

インスリン分泌のメカニズム

インスリン分泌のメカニズム

血糖は、ホメオスターシス機構によってほぼ一定に保たれています。中枢神経が血糖濃度の変化を感知し、下垂体を刺激します。すると様々なホルモンが分泌され、肝臓のグリコーゲンから糖が補給されます。

血糖を上げるためのシステムはたくさんあります。例えばグルカゴン、アドレナリン、糖質コルチコイド、チロキシン、成長ホルモンなどです。これは血圧などと同じように、人類の長い飢餓との戦いの歴史から、生存の為に進化してきた機能でしょう。血圧低下はそのまま死につながるからです。

しかし一方、下げるためのシステムはひとつしかありません。すい臓で分泌されるホルモン、インスリンです。これも上げるためのシステムと同様に、飽食の時代は人類の歴史の中で、ほんの少ししかありません。この数百、いや数十年の間しかないのですから、人間の体が急に進化する事はなく、高い血圧を簡単に下げることはできないのです。

ここでインスリンの細かい働きは述べませんが、インスリン分泌にはカルシウムが関与しています。また、その分泌はすい臓の細胞の中で行われるため、細胞膜を保護しているビタミンEも必要です。細胞膜は、それぞれの栄養が入る専用入り口(〇〇チャネル、などと言います)と、老廃物が出て行く専用出口があります。それぞれが必要に応じて活発に出入りできるようにしておくには、細胞膜の保護が欠かせないのです。ビタミンEは細胞の膜を保護し、酸化を抑制してくれます。
  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)

    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901〜1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ アスリートのための分子栄養学 ]