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第4回日本スポーツ栄養学会 取材レポート #1

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掲載日:2017.10.18
栄養学を真剣に学ぶ学生や先生方の姿が多く見られた

栄養学を真剣に学ぶ学生や先生方の姿が多く見られた

スポーツ栄養学における研究の促進と情報提供、専門家の教育・養成、選手の競技力向上、国民の健康維持増進に寄与することを理念としている日本スポーツ栄養学会において、第4回大会となる日本スポーツ栄養学会が2017年8/18(金)~20(日)までの3日間に渡り大妻女子大学にて開催されました。

第4回日本スポーツ栄養学会 
取材レポート#2 はこちら
会場となった大妻女子大学 千代田キャンパス

会場となった大妻女子大学 千代田キャンパス


その中でサプリや栄養素、特に糖や脂質の摂取などフィジーク・オンライン読者の皆様が身体を作るにあたり、現場レベルで直接活用できる講演をレポートして参りましたのでご紹介致します。


また、本大会における全講演をご紹介したかったところですが、期間中は複数会場で同時に講演が行われているため全ての講演のレポートができていないことを了承下さいませ。

「スポーツ栄養とアミノ酸~運動前後に求められる栄養素について~」共催 協和発酵バイオ株式会社

講演:西村明仁氏

講演:西村明仁氏

協和発酵バイオ株式会社 マーケティング部 西村明仁氏

「フィットネス先進国アメリカのスポーツサプリメント市場では状況や場面ごとに分けて最適なサプリを摂取する考えが一般的となっており、店舗のサプリメントは使用目的や状況別に分かれて棚に並べられているほどです。

その中で、今回は近年耳にすることが多くなってきたシトルリンとアルギニンに関しての報告です。


アメリカではシトルリンやアルギニン等のNO系(一酸化窒素)サプリ関連の研究はアミノ酸やプロテインと同規模で進んでいて、これらは血管の拡張による血流促進効果や酸素利用効率の向上、栄養素の運送量向上などの作用があります。 
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NO(一酸化窒素)はもともと血管拡張時に必ず発生するもので、シトルリンやアルギニンから作られるという点からも十分な摂取の重要性が示唆されています。


運動1時間前にシトルリンを経口摂取後、自転車(エルゴメーター)での4キロタイムトライアルで有意に時間が短縮され、持久系パフォーマンスの向上に繋がった研究結果が報告されていて、血中のNO量と比例して酸素の利用効率も上がり、主観や体感の調査においても集中力の持続や疲労感が軽減された、楽だったとの意見が多い傾向にあります。


国立スポーツ科学センター(JISS) や筑波大学などで、カヌーや競泳といったの持久系スポーツにおいていくつか似た研究が行われていますが、いずれも疲労感の軽減とパフォーマンスの向上がみられています。
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また、リカバリーの観点からはグルタミンの注目が高まっています。

筋の分解を抑制する作用があるグルタミンは体内で最も多くの遊離アミノ酸であり特に筋中に多く含まれていて、免疫細胞や腸細胞の主要なエネルギー源にもなり、リンパ球や白血球を作るために必須の栄養素です。


グルタミンの不足により腸管系に栄養が与えられず、免疫が低くなると感染症にかかりやすい状態になってしまいます。


オーバートレーニング症候群や激しい運動後の免疫低下を抑制し、なおかつ回復を促進することから試合時期のコンディショニング等にも応用ができます。 
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グルタミンに関してはウイルス感染テストで感染率が有意に下がった結果が報告されていたり、グルタミン単体の摂取よりも、グルタミンと乳酸菌を一緒に摂取したほうがさらに効果的に免疫の低下防げたという検証報告もあります。

こういった分野は今後もまだまだ研究をしてくべきで、「いつ、何を摂取すべきか」が明らかになれば現場レベルでの導入が一層普及していくと考えています。

「L-シトルリン及びL-アルギニンの摂取がサッカー選手の持久パフォーマンスに及ぼす影響」

講演:鈴木いづみ氏

講演:鈴木いづみ氏

順天堂大学スポーツ健康科学部協力研究員 鈴木いづみ氏

シトルリンやアルギニン等のNO系は血流量を上げ、インスリン感受性向上、グルコースの取込量向上、ミトコンドリア合成促進など多くのの作用があります。


NOはアルギニンやシトルリンから作られるので血中にNOが多ければ良いのではないかと考えられてきましたが、アルギニンのみを経口摂取しても、アルギナーゼという分解酵素により消化管や肝臓で代謝されてしまうために血液には30%ほどしか取り込むことができず、ただ摂るだけではあまり効率が良くないことが報告されています。


そこで、先行研究によりアルギニンをシトルリンと合わせて摂ると血中に取り込まれやすくなることが分かりました。

シトルリン自体にアルギニン程の作用はありませんが、シトルリンと1:1で合わせて摂ったところ、血中のアルギニンの濃度に1.6倍差が出たという報告があり、血中アルギニン濃度もNO濃度も摂取後約一時間でピークとなっています。
これはヒトでも動物でも同様の結果です。
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では、この特性を運動機能に、パフォーマンスに活かせるかという点が本件のポイントとなります。

大学サッカー男子20名にアルギニンとシトルリンを1.2gずつ1時間前に摂取させ、自転車(エルゴメーター)を用いて10分の全力疾走を行ったところパワー出力平均と合計走行距離が向上し、主観調査では疲労、集中力などが改善傾向にありました。


アルギニンの血中への取り込みを妨げてしまう代謝酵素であるアルギナーゼがシトルリンにより抑制されたためにアルギニンの効果がはっきりと現れ、血中NO濃度が向上したと推測されます。


アルギニンとシトルリンを組み合わせたたったの約2.4gで持久パフォーマンスが上がるということは非常に現実的であり、もっと研究が進めば多くのスポーツへと浸透していくことが考えられます。



■現場への導入にあたって

本件に限らず、サプリメントの摂取において注意すべきことは科学的な根拠(エビデンス)はあるのか、本当に安全なのかという点です。


NO系サプリは2016年アメリカスポーツ医学会、アメリカ栄養士会、カナダ栄養士会の合同研究により発表された「スポーツパフォーマンスを上げるのに有益なサプリメント」一覧表において、「安全性とスポーツパフォーマンスへの寄与」は4段階中の最高のAランクを獲得しています。

こういった側面からもアスリートの栄養管理はパフォーマンスに大きな影響を与える非常に大切なものになってきますので、栄養面からのアプローチは今後、より一層深い意味を持つようになると思います。

一般演題9 糖質摂取「グリセミックインデックスが異なる食品の運動前の摂取が持久性運動に及ぼす影響」

講演:松島佳子氏

講演:松島佳子氏

松島佳子氏(愛知淑徳大学)、竹之越沙代氏、辻詩帆氏、前田安友美氏、尾崎浩平氏(東海学園大学)


持久性運動の前には糖質摂取が大切で、特に血糖値が急激に上昇しにくい低GI(グリセミックインデックス)の食品は運動中に継続した糖質の供給をすることができます。

また、低GIの食品糖質に脂質を加えるとGI値低下させられることができることで知られています。

運動前の脂質単体の摂取は適しているとは言えませんが、糖質に脂質を組み合わせて低GIの状態にすると持久性運動能力とエネルギー代謝にどういった変化が起こるのかを検証しました。


菓子パンのように糖質+脂質の市販品は多く売られていますので、運動前にこういった食品を活用する機会も多いのではないでしょうか。


■検証

高GI食品としてコッペパン95gにイチゴジャム45gと水(合計385Kcal)、
低GI食品としてコッペパン95gにイチゴジャム45gとマーガリン25gと水(合計572Kcal)、

上記を被験者に摂取させて持久性運動(エルゴメータ測定 VO2max65%)を行ったところ、低GI食品摂取のほうが運動継続時間が長くなる傾向がみられました。


呼吸比等の結果からも、低GI食を運動前に摂取することで糖質のエネルギー利用を抑制し、持久性運動中の糖質の枯渇を遅延させる効果があることが示唆されました。


これらの結果から、糖質+脂質の食品を敢えて徹底して運動前に控える必要は無く、持久性パフォーマンスを向上させるために活用できる可能性もあります。


しかし、脂質を含む分総摂取カロリーは増えてしまうため、体重の増減に注意が必要となります。また持久性運動以外の運動前の摂取の影響は不明であり、今後の検討が必要です。

運動前の糖質摂取が運動中の血糖値の変化に及ぼす影響 -朝食摂取の有無による違いの検討-

講演:近藤早希氏

講演:近藤早希氏

近藤早希1)2)、谷澤薫平3)、鈴木克彦3)、寺田新1)、樋口満3)
1)東京大学大学院総合文化研究科、2)早稲田大学大学院スポーツ科学研究科、3)早稲田大学スポーツ科学学術院


運動開始30~45分前に糖質を摂取することで、運動開始直後に急激な血糖値の低下が生じることが広く知られています。

本研究では、運動誘発性の血糖値の低下が、絶食条件と朝食摂取条件のどちらで顕著に生じるのか、また、その血糖値の低下が、糖質摂取後に安静状態を保った場合に比べてどの程度大きなものであるのか検討しました。

 その結果、朝食を摂取した条件においても絶食条件と同様に、運動開始15分目(糖質摂取から45分目)に血糖値の顕著な低下が認められました。しかしながら、朝食摂取条件で認められた運動誘発性の血糖値の低下量は、絶食条件とほぼ同程度でした。

したがって、糖質摂取後に運動を行うことにより、絶食時だけではなく、実際のスポーツ現場により近い状況である朝食を摂取した場合においても、血糖値の顕著な低下が生じることが明らかとなりました。


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