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〝朝鮮人蔘〟

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.10.23
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<フラシボー効果>

 朝鮮人蔘の愛用者がふえている。かみそりの鋭い刃をソロリ,ソロリとくい込ませて,うすーい切片をつくり,だいじそうに湯の中に入れ「うめえ,うめえ」と飲みほしている。
 桜の花びらくらいの少量で効けば結構ケだらけだが,当人は効くと信じて飲んでいるのだから他人がケチをつける必要はない。「ゆうべもうまくいきましてな,ウッシシ」とかなんとか悦にいっている。いいかげんな薬でも効くと信じさせられて飲むと本当に効くことがあり,これをフラシボー効果というが,朝鮮人蔘は正しく飲むならば理論的な効果も得られるホンモノ商品である。

<朝鮮人蔘の歴史>

 ふつうの人参はせり科に属する野菜(草)であるが,朝鮮人蔘はウコギ科に属する樹木の根で,人参とは親戚でもなんでもない。
 朝鮮人蔘の根を煎じて飲めば病気の人がよくなることは,すでに2千年の昔から判明しており,日本でも奈良時代の終わりに遣唐使として渡った僧侶が持帰り皇室に献上している。
 とくに北朝鮮・錦山に産する朝鮮人蔘は,土壌中の成分が発育に適しているため,効果が強く最上とされている日本でも明治時代より栽培技術が工夫され,長野県や島根県で栽培に成功しいまでは韓国に逆輪出することもある。

<スタミナの秘密>

 「日本薬局方」という,医薬品の登録許可一覧書にのっているように,朝鮮人蔘は「くすり」である。
 「食べ物」と「くすり」の境界線はいつも不明確であるが,もともと自然に存在する食べ物はなんらかの意味で体の役に立っており,「食は医なり」の思想が中国にある。自然の植物の中で,とくに有効成分を多く含むものが「くすり」として特別に扱われ,いわゆる漢方薬の体形ができている。医薬品は薬事法で管理されるが,原型をとどめないで紛末や顆粒にしたものについては「食品」として扱ってもよいとされている。
 さて,朝鮮人蔘の有効成分はなんだろうか? 多くの研究者がとりくんでいるが,まだまだ未知の部分が多い。現在判明しているのは精油成分とゲルマニウムで,どちらも造血・補血作用がある。とくに精油中のサポニン,オイゲノールは精密な分析が進むにつれ19種類もあることが確認されている。血管を拡張させ,体のすみずみまで血液を送りこむ効果があり,飲むとホカホカ暖まる感じはこのためである。またゲルマニウムは,骨髄で赤血球ができるときに重要な役割を果しているのである。

<効く人と効かない人>

 このような理由で,貧血性の人,低血圧の人,バテやすい人には確かに効果があるが,反対に,高血圧の人,心臓病の人などには作用が強すぎて,どうき,息ぎれ,目まい,頭痛など悪い影響を与える。われわれの体液の働きは実にデリケートで,わずかなホルモンや,わずかな薬理物質の存在で,体調はぐっと変化する。
 「漢方薬は全身的な強化に効果があり,副作用や薬害がないので,すぐに効かなくても根気よく続けろ」と一般にいわれているが,それは必ずしも正しくはない。
 漢方薬では人間の体質を陽と陰に分けて,実症タイプの人,虚症タイプの人と呼んでいる。虚症というのは,顔色が青白く,線の細い人で,このタイプの人には朝鮮人蔘はよい効果をもたらす。実症の人は血色がよくダイナミックで,このようなタイプの人は,おそらく飲んでも飲まなくても同じか場合によっては悪い結果となることがある。

<上手な利用法>

 自分が虚症タイプであり,近ごろ疲れやすくなったと感じたら,次のような方法で試してみるのはよいだろう。
 乾燥した朝鮮人蔘10グラムを約500ccの水に入れ,中火で1時間以上,ぐらぐら煮る。水分が蒸発して液量が半分くらいになったら火を止め,少しさまして飲む。10グラムといえばかなり多い量である。
 最近,朝鮮人蔘を煮つめたエキスにでんぷん類や乳糖をまぜ,紛末や粒状にしたものが発売されている。サッと溶けてインスタント的なので便利であるが,中には香りだけのインチキ商品もある。韓国政府では,本年になってからタバコや塩と同様に,国家の専売品目に指定したので,正真正名のものにはシールが貼ってある。買う前によく確認するとよい。
 また,多くの強精薬,強壮剤の中に朝鮮人蔘が配合されているが,ほんの名前だけで,量的にほとんど入っていない場合がある。どのくらい入っているか尋ねることだ。
 飲んでまもなく体がホカホカするようなら,自分の体質に合っていると考えてよいだろう。本当の効果は3カ月くらいたってから現われてくることが多いので,そのまましばらく続けてみることだ。


(野沢秀雄)
[ 月刊ボディビルディング 1973年6月号 ]

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