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2010年オールジャパンミスボディフィットネスチャンピオン、中村静香選手(フィットネスの競技歴11年目)をフォーカス!

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[ 月刊ボディビルディング 2012年2月号 ]
掲載日:2017.05.19
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フィットネスの競技歴11年目というベテランの中村静香選手(宮城)。2002~04年オールジャパンミスフィットネス(160㎝超級) 3 連覇の実績を持ち、2010年オールジャパンミスボディフィットネス(164㎝以下級)では見事復活を遂げ、今年はさらに上体の厳しさが一段と増すなどして2連覇を果たした。”エイジレスビューティー”を目標においてトレーニングに励んでいる中村選手の体は、いまなお進化し続けているのだ。あくなき探究心を燃やし続ける中村選手をフォーカスした。

トレーニングできる喜び前を向いて歩こう

ゴールドジム郡山福島店マネージャーの 岩佐英明氏と

ゴールドジム郡山福島店マネージャーの 岩佐英明氏と

――現在、宮城県仙台市にお住まいですが、あの東日本大震災のときはどのような状況でしたでしょうか。

中村 じつは東日本大震災のときは日本にいなくて仕事で韓国に居ました。一刻も早く仙台へ戻りたかったのですが、一週間後くらいに帰国し、家族の無事を確認できたこともあって情勢が少し落ち着くのを待ち、秋田に一週間ほど滞在してから仙台へ戻りました。秋田では県の豊田成昭理事長のお世話になり、ジムでトレーニングまでさせていただきました。ちょうど理事長の名刺を持っていたため、連絡すると二つ返事で「うちに来なさい」と。つくづくトレーニングを通じた縁のありがたさを改めて痛感させられました。トレーニングに集中することで精神的にもよかったです。それ以降は、日々トレーニングできる喜びを一層感じるようにもなりましたね。

大会には秋田でトレーニングをしているときから絶対に出よう、と思っていました。親戚の岩手県の会長が犠牲になったこともあり、その分もこれから頑張ってトレーニングをすることが供養になると考えました。そしてこんな状況だからこそ、いま自分が与えられた環境の下で精一杯やって大会で自己表現しようと。とにかく元気を出して前を向いて歩いて行こうと思いましたね。
――フィットネスの世界へ入る前は、どのようなスポーツをやっておられましたか。

中村 子どもの頃から体を動かすことが大好きで陸上、ソフトボール、ヨットなどをやっていました。高校時代(宮古商業)はヨットに情熱を注ぎ込みましたね。宮古商のヨット部はインターハイで何度も優勝をしていた強豪校で、練習は厳しかったです。でも振り返ってみると、その厳しさがあったからこそいまとても役立っていると思います。1年生から選手になることができインターハイにも3年間出場し、3年生のときはスナイプ級で優勝しました。この種目は2人乗り、風を読んでコースを決めるクルーと舵をとるスキッパーという役割に分かれ、私はクルーでした。

ヨットは高校で卒業し、しばらくは運動らしいことはやっていなかったのですが、20年ほど前、エアロビクスのインストラクターになりたくて東京の学校へ通って資格を取り、仙台で教えるようになりました。

――そうするとフィットネスを始めたのは、インストラクターの資格を取ったあとですね。きっかけは。

中村 10数年前、体調を崩して筋肉が落ちるほどガリガリにやせた時期があり、体力を回復させようとトレーニングジムへ通い出しました。1年ぐらい経った頃、あるときそこで月刊ボディビルディングの表紙を偶然見たんですが、その表紙(1999年12月号)はフィットネスの日本チャンピオン・横田喜代美選手。表紙を見た瞬間、「わっ、きれい。私もあのような健康的な体になりたい」と思いました。

――それまでボディビルには関心がなかったのでしょうか。

中村 はい、ほとんど関心がなかったのですが、ジムの人にこの女性はビルダーですかと尋ねたところ、ボディビルの中のカテゴリーの一つ、フィットネスであることが分かったんです。エアロビと同じにパフォーマンスもあることを知り、パフォーマンスと筋肉を融合させた競技に興味を抱き、自分もやってみようと思いました。横田選手が仙台の中村トレーニングジムの所属であることを知り、早速にジムに電話をかけて入会させていただきました。

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トレーニング・ルーティン_1

トレーニング・ルーティン_1

トレーニング・ルーティン_2

トレーニング・ルーティン_2

改善点があることは伸びしろある証拠

2001 年オールジャパン(左端)。プロとなった山中(中央)、齋藤と比較

2001 年オールジャパン(左端)。プロとなった山中(中央)、齋藤と比較

――コンテストデビューはいつ頃ですか。

中村 フィットネスを始めてから半年後の2001年の東日本ミスフィットネス大会。幸運にもデビュー戦で優勝することができましたが、同じ年のオールジャンフィットネスでは8位という成績に終わりました。

――そうすると競技歴11年目、もうベテランの域ですね。そこまで中村さんを惹きつけるフィットネスの魅力とはなんでしょうか。

中村 トレーニングよって肉体を刺激することにより、年齢に関係なく内面から醸し出される美しさが生み出せることではないかと思います。一言でいえばエイジレスビューティー。ひいては競技力向上にもつながる。私も年齢が年齢だけにいろんな意味で見た目は衰えたところがある。しかし、それを補ってあまりあるのが先ほどもいいましたように、肉体と同時に内面を鍛えることで生まれる美エネルギーではないかと思います。
――目標とする選手はいらっしゃいますか。

中村 もう引退してしまいましたがティメイア・マヨロバ選手(スロバキア)です。あのエキゾチックな顔立ちで、メリハリのある体が好きなんです。
目標としているティメア・マヨロバ選手

目標としているティメア・マヨロバ選手

――先ほどトレーニングを拝見したとき男性の方と組まれていましたが、いつ頃からですか。

中村 10年近くなるでしょうか。私はどちらかというと重い重量を扱うので、女性よりも男性と組んだほうがやりやすいためです。二人の中では女性らしさを残しながらも筋肉を付けることを最重要課題として取り組んでいます。たとえば、アクティブレストといい、高重量をやった後、筋肉を一回休ませてさらに重いものをやるという具合。減量期に入ると普通は重さを軽めにしますが、なるべく筋肉のサイズを残したいので重いものを行なうよう心がけています。しかしながら、これまで筋肉が付きすぎたり、絞り込みすぎたりしてビルダーのような体になってしまったこともありましたね。そうした失敗を繰り返しながら、いまは試行錯誤しているところですがそれがまた楽しくもあります。

――その他、二人で決めていることはありますか。

中村 毎年その年のテーマを決めています。昨年まではどちらかといえば容姿は欧米風、所作やポージングは日本人的な要素を中心に考えていました。それなりに評価はいただいていましたが、これではアピール度が足りないと。もう一段上をめざすには、今年は新たなチャレンジをしないといけないと思いました。
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――そのテーマについてお聞かせください。

中村 フルモデルチェンジ。これまでの中村静香の概念を覆そうと思ったからです。体やステージングはもちろん、髪型、メイク、コスチューム、そして立ち居振る舞いなどを含め、容姿はアジア風、所作やポー人ズは日本人的なものを残しつつも少々アクション的なものも取り入れることにしました。

優勝という評価はいただきましたが、ヒップライン、脚のラインなどに改善点があるといわれました。改善点があるということは、逆の見方をすればまだまだ伸びる要素が私にはあるというポジティブに考えています。来年のテーマもすでに決まっていますが、内緒です(笑)。

――前向きな捉え方ですね。

中村 そうした考え方できるようになったのもフィットネスを始めたことが大きいと感じています。これまで多くの方々との出会いがありました。その出会いで教え教えられたりしながら少しずつ体も精神もつくってくることができた。トレーニングに打ち込むことで体が健康になり、精神も安定していくのを実感。血液が元気になり、免疫力も高まり、さらに活動的になって前向きな心になれると思っています。心から健康になれる競技ではないでしょうか。その良さをフィットネスという競技を通じてピーアールしていき、裾野を広げていければと考えています。

大切にしている道具への感謝の念

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年間を通して白米はほとんど食べないという食事内容は野菜が中心。プロティンもオフは摂らない

年間を通して白米はほとんど食べないという食事内容は野菜が中心。プロティンもオフは摂らない

――一日の主な流れと食事について教えてください。

中村 6時前に起床、朝食と昼食(弁当)の用意した後、朝食を摂って仕事へ出かけます。午前9時から午後6時まで勤務し、トレーニングは7時から9時までの2時間行ない、自宅へ戻って夕食を摂り11時頃には寝ます。食事の内容は、白米はほとんど食べません。炭水化物はジャガイモ、サツマイモなどから摂り、野菜を多く食べるように心がけています。肉は鶏肉が基本で、オフのときに牛や豚を食べることも。オンではボイルし、オフではオリーブ油を使用します。プロティンはオンのときに1日2回(30g)を仕事の合間とトレーニング直後に飲み、オフは飲みません。

――トレーニングで心がけていることは、どんなことですか。

中村 みなさんもそうだと思いますが、一種目一種目に集中すること。少しでも手を抜けば自分自身に返ってくるからです。それと器具、ウエア、シューズなどトレーニングに欠かせない道具に対して感謝の念をもって扱っていることです。

私たちがこうしてトレーニングに励んで体をつくることができるのも、道具があればこそではないでしょうか。もちろん器具を使いやすいように整備してくれている方々への感謝の気持ちも込めています。いつもトレーニングに始める前と後には、私の体を鍛えてくれて「ありがとう」と心の中で呟いています。ですから乱雑に扱う人を見ると、とても悲しくなって道具が泣いているように見えますね。道具も大切に扱えば必ず応えてくれるもの。そういう気持ちを忘れては、真に体は進化していかないと思います。口で言うよりも私自身が実践して周りの方々へ伝えていき、その輪が広がっていくことを願っています。

インタビューを終えて

女性らしさを残しながら筋肉をつけていくことを最重要課題として捉えている。

女性らしさを残しながら筋肉をつけていくことを最重要課題として捉えている。

取材の終わりに、中村選手は道具への感謝の念を持ち続ける大切さを強調され、その気持ちが心身を進化させるという言葉には共感を覚えました。物を大切する心は、やさしさや思いやりにもつながっていくものではないかと思います。中村選手は、フィットネス仲間から「姉さん」とか「姉御」と呼ばれると苦笑していましたが、それだけやさしく面倒見がいいから慕われている証であり、私も中村選手の人柄を表わすふさわしい呼び方だと思いました。

静香という名前のイメージとはちがい(ごめんなさい)、何事に対しても前向きに考えて行動的な中村選手からは、あふれんばかりのエネルギーをいただきました。来年もまた進化した中村選手に会えることを楽しみにしております。
  • 中村静香( なかむら・しずか)
    誕生日:1962年9月2日
    出身地:岩手県宮古市
    職業:会社員
    トレーニング歴:12年
    コンテスト歴:11年
    身長:164㎝
    体重:60㎏(オフ)、55㎏(オン)
    血液型:O型
    所属:マッスルジム

撮影協力:
ゴールドジム郡山福島

[ 月刊ボディビルディング 2012年2月号 ]

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