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SPOT LIGHT(2014 オールジャパンボディフィットネス総合優勝)阿部美早

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.04.24
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4位、やっぱり悔しい!

2014年7月28日のジャパンオープンにおいて、ボディフィットネスで4位だったとき阿部美早選手の胸に湧き上がってきた思いは、まず「悔しい!」だったという。ルーキーとして初挑戦なのだから、満足してもよい戦績かと思うが、本人はずばり優勝を狙っていたのだ。
「ジャパンオープンでは体重は58kgでした。若干切れがない状態だったと思います。優勝者に比べて身体のメリハリが劣っていたと思いました」

スポーツクラブ勤務の美早選手は、格闘技系の動きも入る、パワーの必要なクラスを含め週6本のスタジオレッスンと子どものスイムレッスン10本を担当しているので、それほど急激な減量はできない身という。だが、ジャパンオープンから3週間かけて2kg体重を落とし、見た目がぐっとスリムになった。

雪辱をかけて、オールジャパンボディフィットネス選手権に出場するためだ。
「ウェイトを落としたのは、実質はオールジャパンの前、1週間です。筋肉をシャープにし、ウエストを細く見せたかったんです」

工夫したことは他にもある。オールジャパンの前には美容院に行って、ヘアメイクをやってもらった。それまでは自分でやっていたが、専門の第三者にやってもらうことでより自分の魅力を引き出そうとしたのだ。
「髪はサイドに上げて、表情が明るく見えるようにしました。メイクのポイントはハイライトを入れて、オーラを感じさせる印象にしたことでしょうか」

さらに彼女は内面からにじみ出るオーラの存在にも気づいている。舞台では積極性をアピールすることで、それが出てくるのではないかと感じている。

緊張してしまうため「表情がかたい」といわれることも少なくないので、そのあたりが課題となっている。とにかく経験、場数を踏むことで、まだまだ進化していけると信じているし、年数をかけて研究していきたいのだと前向きだ。

さまざまな努力の結果、オールジャパンでは冬から照準を合わせていたとおりの優勝を飾る。トールクラスとオーバーオールのダブル優勝。それまで絶っていた好物のフライドポテトを自分へのご褒美として食べたという。

ジンクスというほどではないが、自分の決めた目標のため、自分で決めたことは守りきるというのが美早選手の身上だ。「何十年に一度の逸材」という声もあり、その若さと資質に熱い視線が集まっている。

オールジャパン優勝の実績で、美早選手はミスボディフィットネス世界大会への出場が決まった。「世界大会では出場したという経験だけに終わらないようにしたい」と少し表情を引き締める。

身体づくりは長いスパンで行われていた

初出場で総合優勝を果たした今年のオールジャパンボディフィットネス

初出場で総合優勝を果たした今年のオールジャパンボディフィットネス

もともと実力あるスポーツウーマンだ。岩手大学教育学部時代まで、陸上部だった。高校時代は国体やインターハイに出場するハードルの名選手。1年目とはいえ、基本の身体づくりはすでに少女時代からハイレベルにできているのだ。
「とくに高校の陸上部は名門で厳しかった。体重管理のためジュースやお菓子も食べない、ボーイフレンドも作らない、ヒールのある靴も禁止と、かなり制限のあるストイックな生活をしてました…」

大学でも陸上部で活躍。やはり往年のハードラーとして鳴らした実父と似た道を進むように、体育教師の教員免許もとったが、その際には、苦手だった水泳も必須項目だったので苦労もした。元気溌剌な外見からはちょっとわからないが、彼女には持病(小発作性てんかん)があり、中学・高校時代にはドクターから水泳を避けるように言われていたそうだ。しかし大学になって落ち着いてきていたことから、免許取得のために水泳も頑張った。卒業後は地元のスポーツクラブでフィットネスインストラクターとして勤めはじめた。

先にも述べたとおり、ボディコンバットなどのスタジオプログラムのほか、子どもの水泳教室も担当して多忙な日々を送っている。現在はお酒も覚えて、たまには友だちや仲間と居酒屋などで飲むことも楽しむようになった。お酒は何でも好きで、ビール、ワインはもちろん地元の日本酒などもたしなむ。

そんな充実した日々を送っていたはずの2013年6月中旬のこと。
「何かにチャレンジしてみたいな…」そんな気持ちが、美早選手が自分で意識するにせよしていないにせよ、高まってきていたときだったのかもしれない。
「雑誌を見ていて、健康美というコンテストがあることを知り、すぐに『出場してみよう』と思ったんです」

仕事だけの日々より、何か自分らしいことをしたかった、と振り返る。健康的な身体を見てもらえるのなら、自分もそこで勝負できると思ったという。そこからウェイトトレーニングを始め、9月にはミス21健康美トールクラスで2位の成績を収めた。

美早選手のミス健康美での活躍を見ていてくれた人が何人かいて、早くもその才能と恵まれた身体に静かな注目が集まっていた。健康美に出場したことがきっかけで、彼女の新しい人生の扉が次々と開いてゆく。
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いつの日か必ず「プロに」

コンテストデビューは昨年の健康美。トールの部で2位だった

コンテストデビューは昨年の健康美。トールの部で2位だった

2014年になって美早選手をチームLANのメンバーに推してくれた斉藤マドカさんや、健康美のコンテスト前にポージングセミナーを受けたことで知り合った天童あゆみさんなど、彼女の才能を認め親身のアドバイス
をしてくれる人は少なくない。
「健康美が終わった後、次はどうしようか考えていたとき、ボディフィットネスという競技があることを知ったんです。内容を聞いてみると健康美より自分向きだと感じました。何より、そこで戦績を伸ばしていけば、アジア大会や世界大会にもチャレンジできるということが魅力だったんです」という。
「自分が10年後や20年後にどういった選手になっているかということは、今は想像できません。ただ一ついえることは、とにかくいま精いっぱいやってプロになりたいということです」

未来を思い描くよりもむしろ、「いま、ここ」を大事に生き切る。すがすがしい生き方である。そして、そうはっきりと言い切る美早選手の目は、自分の目指したいことを見つけた充実感にあふれているので、聞いているこちらも負けずに頑張らなければと思えてくるのである。

2014年春からチームLANのサポートを受けはじめたことで、必要なサプリメントの支給がある。また、多くは競技の先輩でもあるほかの5人のメンバーと情報交換もできる。そうすることで自分の夢をいつも再確認でき、奮起させてくれる。そんな恵まれたチームに入ることができ、とても嬉しいとはじけるような笑顔の美早選手だ。
「サプリメントの効果はとてもある」とのことで、毎日身体のコンディショニングに愛用している。

肩の力の抜けたトレーニング

現在のトレーニングは、職場のジムでおもに朝のオープン前の1時間半をつかって行う。支店長がトレーニングパートナーになってくれることもあり、美早選手としては心強いことこのうえない。好みの音楽をかけて気持ちを高める。
「とはいえ、それほど好みの音楽があるというわけではなく、職場にある流行りのものです」だそうだ。毎日の日課は、トレーニングとタンニングの組み合わせ。現在のところ、トレーニングは胸と脚にわけて行っている。胸の日には肩と腕の強化も行う。背中はもともと筋肉がバランスよくついているので、それほど重点的には行っていないというが、コンテストの審査では背中がよいとの評判があり、今後どう強化されるかも楽しみ。一日の終わりには半身浴でリラックス、後には腹筋を欠かさない。
「もちろん毎日には、いやなこと、悲しいこともありますよ。でも考えてみれば悩んでいる時間がもったいないですよね。競技に打ち込むことで、そんなひまがなくなり、気にならなくなるんです」

スタジオプログラムを受けにくる会員さん(お客さん)は、地方紙に出た記事を見るなどして、美早選手のコンテストでの活躍を知り、「がんばってるね」と声をかけてくれる。

ひたむきでまっすぐな瞳はいつも前を向いていて、ときに光を放ち、魅力的である。
「冬場には、たくさん食べて、またトレーニング重量を増やして頑張りたい。そして来年は全日本で勝ってアジア大会に出場し、そこでパーフェクトスコアで優勝することが目標です」

28年も人生いろいろ

ところで美早選手の住む岩手県も、2011年の東日本大震災では被害が出た。3月11日、彼女もまた、大きな地震でショックを受けたまま帰宅中、自転車(当時の愛車はロードバイク)に乗っていて交通事故に遭ってしまったという体験がある。

ケガをして手足からすこし出ていた血が首のあたりについてしまい、倒れて動けなくなってしまったため、周囲の人は大けがだと思った。職場の人が「阿部が大変だ!」と職場の人が言っている声が聞こえたというが、当時の状況は把握しきれていないという。救急車がやってきて病院に運び込まれ検査を受けた。奇跡的に骨折などの大きなケガもなく無事だったものの、地震とともに事故のショックは残った。

自動車の免許は今のところもっておらず、基本的に足は自転車だというが、このときからロードバイクはやめて普通の自転車にしている。

トレーニングや仕事の骨休めはゆっくりと温泉につかること。岩手県内にも美早選手が自転車で行ける場所に温泉がたくさんあり、積極的休養もかねてサイクリングで訪れているそうだ。170cm超と長身の美早選手だが、靴のサイズはかわいくて、なんと23cm。意外性はこんなところにも現れている。

温泉以外のリラックス方法は、3歳になる甥っ子と遊ぶこと。美早選手の真似をしてファイティングポーズをとって「ムキムキのポーズ!」と言うなど、お茶目ないたずらざかりの男の子だ。「子どもがいると場が和みますね」というあたり、何であれ、本質的な女子力も高そうである。そうそう、彼女の苦手なものは「ホラー映画」だということだ。
インタビューを終えて

インタビューを行った日は2014年8月27日、阿部美早選手が28歳になったばかりのときでした。白いブラウスとパンツ姿で清楚な印象。最近は明るい色の洋服を着るように心がけているのだそう。

さて阿部選手は今年デビューの新人ながら、多方面から期待されている若き勇者です。スレンダーな長身にまず圧倒されましたが、ご本人はちょっぴり緊張の面持ち。お話するにつれて打ち解けて笑顔も見せてくださいましたが、とっても素朴でまじめな性格の持ち主です。几帳面な性格はその行動にあらわれていて、見せてくださったトレーニング日誌や手帳は、細かな予定やトレーニング内容がきれいな文字でぎっしりと書かれていました。カラー付箋やカラーシールを使って、お茶目にまとめているところは、やっぱり女子力も高い! と見ました。

インタビュー後には本誌・Ben編集長もまじえて一緒にカレーライスを食べに行ったのですが、減量も一段落という感じでとてもリラックスされていたのが印象的です。みなさんの期待にこたえて本物の競技者へと成長され、まだ誰も手にしていない何かを掴まれた暁には、ふたたびインタビューさせていただきたいものです。
美早選手をサポートしているマドカプロ(左端)をはじめチームLAN の皆さん

美早選手をサポートしているマドカプロ(左端)をはじめチームLAN の皆さん

  • 阿部美早(あべ・みさき)
    1986年8月25日生まれ 血液型:B型 岩手県北上市出身
    身長170㎝、体重56 ~ 58kg(オン)、63kg(オフ)
    トレーニング歴1年/コンテスト歴1年

    職業:コナミスポーツ クラブ北上 CSマネージャー
    家族:父(中学体育教諭)、母(パート)、姉長女(ピアニスト)、姉次女(会社員)
    趣味:温泉、岩盤浴、ピアノ、お菓子作り

text
Mayuko Sato
Photo
Ben

[ 月刊ボディビルディング 2014年12月号 ]

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