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奇問・難問・珍問、何でも来い!Q&A ジュラシック木澤に聞け!!JURASSIC ANSWER

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[ 月刊ボディビルディング 2013年2月号 ]
掲載日:2017.07.26

1.日本選手権へ向けて何を変えましたか?

Q 今年の全日本選手権を観戦に行きました。田代選手が復活するということで楽しみにしていましたが、私の目には木澤選手のコンディションも例年になく良いように見えました。これまではカットがある時はサイズが小さくなり、サイズがある時は仕上がりが甘かったような気がします(素人目で申し訳ございません)。今年は、昔のようなジュラシックパワーを感じ、サイズ、仕上がりともにもっと上位につけても良いような感じでしたが、本人としてはどのような感じだったのでしょうか? もし例年よりもうまく調整ができたのでしたら、何を変えたのか、食事、トレーニング、オフの過ごし方、オンに入ってからの生活など詳しく教えて下さい。

A 今年の日本選手権については多くの皆さんから過去最高だったとの声を頂きました。何を変えたのかという質問もよく頂きますので詳しく説明しようと思います。

 まず昨年(昨年までも含めて)の反省点としては、筋肉に今ひとつ迫力がないというのがありました。ここ数年は一時期に比べダイエットに対する自分の基準が上がってきているので、考えられるのはダイエット終盤で疲れが蓄積されて筋肉の張りが無くなっているのでは? という事でした。張りと書きましたが筋肉の量ではなく「張り」です。近年のダイエットは成功していないまでも、筋肉の量自体は落ちていないという確信がありました。トレーニングで扱う重量や回数にオフもコンテスト前もほとんど変化はありませんでしたから、自信を持ってそう言えると思います。

 張りというのは筋肉のコンディションの事です。同じ量の筋肉でもコンディションが良い元気な筋肉と、疲れた筋肉とでは見た目に大きな差がでます。コンテスト当日の脂肪がかなり少ない状態であれば、. なおさら筋肉のコンディションにより大きな差が出てきます。また張りの無い筋肉はせっかくダイエットした身体を甘くも見せてしまいます。

 という訳で最優先させる課題は「筋肉の張りを最後まで維持してダイエットする」という事にしてダイエットに入りました。

 ダイエット開始時の体重は88kgです。オフの体重としてはここ数年試している「無駄に増やし過ぎない」という考えに基づいた理想の体重でした。予定減量幅は6kgほどです。筋肉の張りを維持するというのはダイエット終盤の課題になってくるわけですが、そのためには今までのダイエットよりも食事面でまず炭水化物の摂取量を増やしたいと考えました。そのためにダイエットに入る2カ月前から炭水化物の摂取量をかなり増やしました。これはダイエットに入ってから摂取できる炭水化物の量を底上げしたかったからです。人間の身体は環境に慣れたり適応しようとしたりします。高炭水化物食も最初のうちは体重が増えますが、何れ身体が慣れてくると増えなくなります。ここでダイエットに入ればその時に摂取していた炭水化物から少し減らせばダイエットできます。これはあくまで僕の考えです。

 でも試した結果、昨年までの約1.5倍の炭水化物摂取でダイエットできましたので、間違ってはいなかったと思います。僕の場合は終盤に向けて徐々に炭水化物を減らしていくという方法ですので、スタート時の摂取量が昨年までの1.5倍であれば終盤でも1.5倍に変わりはありません。具体的には今まで1回の食事で炭水化物源として白米400g食べていたところに、サツマイモを200g追加するといった感じです。プラスにした分の炭水化物は全てサツマイモ(焼き芋)にしました。特に理由はありませんが、持ち運びが便利なのと焼き芋は水分が少ないので日持ちがするからです。

 また昨年まで食事面でもう一つモヤモヤしていた事がありました。それは脂質についてです。適した量がどのくらいなのか試した事がありませんでしたので、今年は実験してみようと思いました。適した量といっても摂り過ぎればダイエットが進まないわけですので、ダイエットが進む量の上限(どこまで摂ってもいいのか?)をみつけるというだけです。

 結果から言えば、昨年までとは比べ物にならない位の量の脂質を摂取しました。脂質源としてはナッツのみです。ナッツ類で一日約400キロカロリー摂取しました。最近田代選手と食事をした際にでた話の中で、今年の田代選手は「コンテスト前でも週に2~3回は外食をしていたよ。炭水化物はしっかり制限したけど脂質はあまり気にせず食べてたよ。でも甘くなる事は全くなかった。ダイエットの敵はやっぱり炭水化物だよ」と話されていました。全く同感です。来年からは脂質に関してはかなり許容範囲が増えたので楽になりそうです。食事面に関してはこんな感じで昨年と変えて取り組みました。
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 もう一つはトレーニング面です。これには以前から何をすべきか解っていましたが、なかなか踏み出せない自分がいました。やるべき事はズバリ「トレーニング量を減らす事」です。張りを維持するためには疲れさせ過ぎない。なかなか踏み出せないのは、やはりここ数年の順位が下がってきているからです。順位が下がってきたら頑張ってやろう! と思うのがアスリートとして当り前の気持ちです。2008年4位になりトレーニングを増やし翌年5位、更に増やし6位、更に増やし7位となれば何かを変えなければいけません。3年間かけてやっと踏み出す覚悟ができたという感じです。コンテストに出場するようになってから今までの約20年間、自分にはトレーニングのボリュームという点で他の選手以上の事をやり遂げる事を自分の自信にしてやってきましたので、変えるには3年かかっても仕方なかったのではないかと思います。そもそもダイエット中(特に終盤)に筋肉の量を増やすのは困難です。だったら筋肉が落ちないように今のレベルを維持するためのトレーニングに徹した方が気持にも余裕が出てきます。今年は失敗を恐れる自分がいなかったので、思いきって半分のボリュームにしてみました。オフに4セットやっていたのを2セットにし、その分1セット当たりの強度を上げます。ドロップセットやレストポーズなどを多用して、いつも以上に筋肉を追い込んで刺激を与えました。逆に言えばセット数を減らしたからそれができる訳です。ダイエット中の限られたエネルギーのなかで、短時間で筋肉にしっかり刺激を与える。とても調子が良くダイエット終盤を過ごせました。3時間かけていたウェイトトレーニングが1時間半ほどになったので、有酸素トレーニングを行う時間も体力も残っています。昨年までより有酸素トレーニングもしっかり行いましたので、ダイエットのほうもかなり調子よく進みました。

 ここまで説明した方法でダイエットを進め、予定としては日本選手権の約一か月前にほぼ仕上げて、そこから摂取カロリーを上げてさらに筋肉の張りを戻していこうと計画していました。炭水化物で摂取カロリーを上げるのですが、甘くなってしまわないように有酸素トレーニングをやや増やしていきました。こんな感じで今年は日本選手権に挑みました。

 結果としては昨年から一つ上がり6位でした。日本選手権では3年間ずるずると落ちてき順位を上げるというのは、一緒に戦っている選手なら分かると思いますが、大きな成果だと思います。また今年はコンテストで一番重要になってくる調整方法という面で来年以降に繋がるとても大きな収穫がありましたので満足しています。来年は今年の調整方法であと1~2kg絞っていく予定です。久しぶりにオフから高いモチベーションでトレーニングしていますので期待して頂ければと思います。

 最後に今年日本選手権のステージで一番嬉しかったのは、自分への大声援でした。他の選手を応援されている皆さんから声援が「うるさい!」とクレームがでるほどだったようです。僕にとっては嬉しい限りです。声援を送って頂いた皆さんに、この場をお借りして御礼をさせて頂きたいと思います。ありがとうございました!

 来年に向けてあの大声援を思いだし日々全力でトレーニングしていきます。これからも応援よろしくお願いします。
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木澤大祐オフィシャルページ http://kizawa.jugem.jp/

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