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新連載マッスルマニアプロマイク宮本のアメリカ便り 2013年ロサンゼルスチャンピオンシップス

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月刊ボディビルディング
掲載日:2017.08.16
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宮本 充(みやもと・みつる)/プロボディビルダー名:マイク宮本/1974年6月4日生まれ/39歳/神奈川県相模原市出身/カリフォニア州ロサンゼルス在住/趣味:愛車のベンツSLKをオープンにしてカルフォニアの海岸沿いをドライブする事/職業:プロフェショナルボディビルダー、フィットネスコンサルタントブログ:http://ameblo.jp/miyamotopro/ FB:https://www.facebook.com/mmiyamoto
 ボディビルのメッカ、ロサンゼルスの夏の風物詩、ロサンゼルスボディビル選手権が7月20日、参加選手400人、満員御礼の大盛況の中繰り広げられました。

 ここ最近のアメリカのボディビルの大会は、ボディビルだけでなく、女子ビキニ、男子フィジークというウェイトトレーニングやフィットネスは好きだけれど今までボディビルとは無縁だった人達の参加が急増し、空前のボディビル&ウェイトトレーニング人気を呼んでいます。

 会場には、IFBBのスーパースター山岸秀匡選手のスポンサー、ギャスパリニュートリションをはじめ、メトレックス、大手サプリメントチェーン店のGNC等のブースが所狭しと並び、またアマチュアのコンテストでありながら、昨年オリンピア3位のショウン・ローデン、日本でも人気の高いハーフのイケメンIFBBプロ、スタン・マックウェイ、雑誌の表誌もかっこいいけれど、実物は信じられないくらいかっこいいカバーモデルのマイク・オハーンなど、アメリカボディビル界を代表するセレブ達も観戦に来ており、コンテストはいうまでもなく、コンテスト以外でも非常に楽しめるコンテストでした。
会場にいたショウン・ローデン

会場にいたショウン・ローデン

 日本からは、ヘビー級には清水泰地、ライトヘビー級には井若芳郎、ミドル級にアメリカ在住のK44こと吉田圭介が出場し、過去最高レベルの激戦のロサンゼルス選手権に3人とも見事入賞を果たす快挙を成し遂げました。
左よりライトヘビー級4位井若選手、昨年のMr. LAライトヘビー級優勝の堺部選手、ヘビー級5位清水選手

左よりライトヘビー級4位井若選手、昨年のMr. LAライトヘビー級優勝の堺部選手、ヘビー級5位清水選手

 まずは、井若芳郎が出場した激戦のライトヘビー級。〝ショーン・レイ2世〞といわれ、2011年カリフォルニア選手権でオーバーオールを制したレネ・ニュエスも出場していました。レネは膝の手術からの復帰第一戦で、今回は残念ながら優勝は逃しましたが、31歳というボディビルの世界では比較的まだ若い年齢なので今後の活躍が期待できるでしょう。また膝の手術をしたということで、舞台裏でメスを入れた箇所を見せてくれましたが、舞台上で見る限りまったく脚の筋量は落ちていなく、今回優勝したベロン・アンスレイに比べ、若干カットが出ていない程度でした。2位でしたが、さすがミスターカリフォルニア。文句一つ言わず、膝の怪我から克服し、再度ステージに立てたことに感謝していました。

 井若選手は、コンテスト3日前からロス入りし、最終調整に備えたとのこと。ロスに到着した時点では、飛行機の気圧の関係か、水を含み、身体がフラットになってしまったそうですが、最終調整で山岸プロのアドバイスで、身体から水を抜き、かつハードな張りのある状態にできました。初めてのロサンゼルス選手権の挑戦ながら4位入賞を獲得したのは、評価できるでしょう。

 また昨年、ロサンゼルス選手権のライトヘビー級で優勝した堺部選手もサポートとして来てくれていました。IFBBスターの山岸プロのアドバイス、昨年のミスターLAライトヘビー級チャンピオンの堺部選手のサポートと、まさにボディビルのドリームチームというべき非常に恵まれた環境でボディビルを続けているので、このままボディビルに専念していれば、堺部チャンプに続き、ライトヘビー級で優勝するのは時間の問題でしょう。井若選手はたまたまこのドリームチームに入れているのではなく、歯科医師としての職務も全うし、努力家で礼儀正しい人柄から、この最高のチームを形成できているのでしょう。ただ、肩幅が広く、きれいな逆三角形のいわゆる〝かっこいい身体〞を形成している井若選手は、他の競技からの誘惑も多く、ボディビルのような筋量は求められないベストボディジャパンに昨年出場するため、わざと筋肉を落としたということで、堺部先輩から「今回レベルの高いライトヘビー級で4位に入ったことで、ボディビルに専念しろ」と喝が入っていました。
ミスターLA初出場で4位に入賞した井若選手

ミスターLA初出場で4位に入賞した井若選手

今年のライトヘビー級&オーバーオール優勝のベロン・アンスレイ(右)と2位のレネ・ニュエス

今年のライトヘビー級&オーバーオール優勝のベロン・アンスレイ(右)と2位のレネ・ニュエス

 洗練された井若選手とは対照的な、野武士のような雰囲気を出していた清水泰地選手が出場していたヘビー級は、さすがヘビー級! みなデカいです。このNPCのモンスター達とまったく対等に戦った清水選手は、5位入賞を獲得しました。清水選手はコンテストの体重が94㎏、身長は170cm。しかもまだ28歳。日本人としてNPCのヘビー級で唯一優勝しました筋肉博士こと山本義徳選手を師匠とし、今回も山本師匠の薦めで出場したとのこと。まだ荒削りで全体的なトータルパッケージとしては改善の余地が残されていますが、IFBBスター山岸プロに続き、プロカードを取得できる可能性を秘めている、数少ない日本人ボディビルダーでしょう。

 あとで私がホストをしたNPCニュースという番組でインタビューをする機会があり、本人も「最終的な目標はプロになること」とカメラの前で宣言していました。ただマッスルマニアプロ&フィットネスコンサルタントのマイク宮本としてあえて前途有望な清水選手に苦言を呈させてもらうと、最終目標がプロになることでは、絶対にプロにはなれません。プロになる連中は、プロになるのは当たり前で、プロになってからのことを、プロになる前から考え、発言しています。例えば「プロになってオリンピアに出場したい」とか、「賞金を稼いで派手なスポーツカーに乗りたい」とか。プロになる前から人前でそれぐらいのことを平気で言える根性の座った人のみが、最終的にプロになれるんですね。それに、まだ28歳といっても時間はあっという間に過ぎます。いつかプロになるということを夢見ている人は、永遠にプロになれません。〝いつか〞という言葉は、ボディビルの世界では、永遠に来ないことを意味し、永遠に実現しない夢を指します。「あと3年以内に」とか「30歳までに」とか具体的な時間制限を設定している人のみが、プロになるという夢を実現可能な目標に変えることができ、最終的に目標達成し、結果として夢を実現できるというような仕組みになっているんですね。やや厳しいコメントですが、将来是非オリンピアの舞台に立ってもらいたいと願っています。
荒削りながら将来有望な清水選手

荒削りながら将来有望な清水選手

 続いてはナチュラルフリーク、吉田圭介選手が出場したミドル級。吉田選手は現在、高品質でナチュラルにこだわるサプリメント会社EFXと契約しているだけあって、吉田選手の身体を一言で表すと、ナチュラルボディビルダーだけがかもし出せる高品質できれいな身体をしています。吉田選手の全身にきめ細かに走るストリエーションと細いウエストから作り出す芸術的なポーズは、肉の塊のNPCのコンテストの中でも、一際目立っていました。デカい選手がステージに上がって来た時の場内の反応は「ヒュー」と高い叫び声になりますが、吉田選手がステージに立つと、場内から「オー」という低いどよめきがおきていました。とにかく肉の塊のNPCでは、めったに見ることのできないもの珍しい、美しい物体を見たような反応が観客からおこります。

 今回のミドル級上位3人は、まったく違うタイプの身体。今回1位のギラーモ・エスカランテは、確かにハードな身体に仕上げてきていて、バルクはあるもののブロッキーで、ウエストが太く、お世辞にも恰好良いとはいえない身体。2位の伝説のボディビルダー、ダニー・ヘスラーは、惚れ惚れするようなプロポーションとボディビルダー彫刻のようなルックス。ダニーだけで見ると、文句なく1位。ただギラーモと吉田との比較になるとダニーのコンディションが甘いのがはっきりとしてきます。特にバックポーズでのハムストリングと臀部が甘く、今のNPCの審査基準では、臀部まできっちり仕上げてこないと、いくら名前が知れていてプロポーションが良いダニーでも勝たせてもらえません。

 3位の吉田は、臀部まできっちり仕上げてきており、前面のポーズでも脚のカットが凄まじく見え、仕上がりでは間違いなく1位。またポーズを取るたびに、全身くまなくストリエーションが走り、まさに解剖図がポージングを取っているような錯覚に陥ります。吉田は1位のギラーモ、2位のダニーと比べると頭1つ分背が高いですが、全身バランス良くきれいに付いた筋肉ときめ細かな仕上がりで、ステージ上では、実物以上に大きく見えました。実際2カ月前のカリフォルニア選手権では、この〝吉田マジック〞とでもいうべき、ステージ上で実物よりはるかに大きく見える錯覚で、モンスター達を破り、優勝しています。ただ今回は、ダニー及びギラーモの前に、健闘空しく3位となりました。
〝ナチュラルフリーク〞こと吉田圭介はミドル級で3位に入る

〝ナチュラルフリーク〞こと吉田圭介はミドル級で3位に入る

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左より2位ダニー、優勝ギラーモ、吉田。ダニーはプロポーションは良いが仕上がりが甘い。ギラーモはハードだがブロッキーで格好悪い体型だ
 今回のミドル級の結果は、マッスルマニア所属の私にとっては、非常に興味深い結果でした。というのも同じアメリカのボディビル団体でも審査基準にかなり違いがあるからです。マッスルマニアだったら、1位は吉田かダニーで、デカくてもブロッキーなギラアモは間違いなく3位になるでしょう。マッスルマニアの場合、サイズがいくらあっても、全体的なバランス、仕上がりが備わっていなければ絶対に勝たせてくれないからです。

 実際ルールブックにも、筋量、シシメントリー(全体的にバランス良く筋肉がついているか)、コンディションがそれぞれ30%の評価となり、NPCでは審査されないフリーポーズも10%評価の対象に入ります。逆の言いかたをすると、どんなにデカくても30%しか審査されず、全身バランス良くきれいに筋肉がついていて、きっちり仕上げてきた人が勝つことになります。ESPNというアメリカのテレビ局がプロモートしている関係上、テレビに映って大部分の人が好みそうな身体の人が勝つルールとなっているのです。それに対して、IFBB傘下のNPCでは、まずバルクありき。どんなにきっちり仕上げていても、ある程度のバルクがなければ審査員は見てもくれません。マッスルマニアのように、筋量の評価は何パーセントと明示していませんが、恐らく50%以上は占めているでしょう。

 今回出場した日本人でも、ややウエストが太くてもバルク型の清水選手のような身体つきは、NPCでは順位が有利に働き、逆に吉田選手のように、仕上がりが良く、きれいなシシメントリーもあるが、筋量がライバル達より欠ける選手はNPCでは順位が不利に働くことになります。バランス良く発達している井若選手は、NPCでもマッスルマニアでも恐らく同じ順位となるでしょう。
左よりマイク・オハーン、ビキニ総合優勝のタラヤック、プロモーターのジョン・リンジー

左よりマイク・オハーン、ビキニ総合優勝のタラヤック、プロモーターのジョン・リンジー

 もちろんベテランの吉田選手は、バルク重視のNPCが彼にとって不利な環境と解っていながら、あえて戦いの場をNPCに定め、モンスター達を一人一人破っていく姿には心が打たれました。

 ボディビルのメッカ、ロサンゼルスで行なわれたミスターLAは、日本人の大活躍で、私にとっては非常に見ごたえあり、おもしろいもので、また来年も見るのが今から楽しみです。
ビッグ★ヒデ(左)と著者のマイク宮本

ビッグ★ヒデ(左)と著者のマイク宮本

[ 月刊ボディビルディング 2013年10月号 ]

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