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☆ 第二のリーブス 出現 ☆ ドン・ピーターズ

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[ 月刊ボディビルディング 1973年5月号 ]
掲載日:2017.10.12
ロバート・ケネディ
高山勝一郎訳
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☆ ミスター・アメリカたるべきもの ☆

 ある日一通の長い手紙が私宛に届いた。差出人は、最近ミスター・アメリカ・コンテストを観戦に行ったという人で、その日のミスター・アメリカ(特に名を秘す)について、厳しい批評を下していた。

 ーーこのタイトル・ウイナーはたしかに筋肉は素晴らしい。しかし、彼は背も低く、皮膚の色ツヤも悪く、歯並びも不ぞろいで、それに頭もコメカミのへんからハゲてきている。肩幅も狭く、脚も短く、そもそもコンテスト終了直後、不遜な態度でタバコなど喫っていた。こんな人がミスター・アメリカになっていいものでしょうかーー

 と、いうものである。手紙はさらに続く。

 ーーいやしくもミスター・アメリカたる者は、頭にはフサフサとした髪の毛をいただき、ハンサムな容貌と知性美を有し、歯はあくまでも白く、絹とみまごう美しい肌を有すべきもの。また、何よりもモラルと礼儀を尊ぶ心がなければならないでしょうーー

 彼の結論はさらに厳しい。

 ーーミスター・アメリカとなるような人は、当然大学出の学歴があり、政経・芸術・文学、その他あらゆる分野において一応の見識を有し、また個性豊かな人であるべきです。ただ筋肉にすぐれているというだけでなく、オリンピック競技やパワーリフティングにも一応の記録を有し、あらゆる運動に長じているべきもの。すなわち、人間において完全でなければならないのではないでしょうかーー

☆ 第二のリーブス ☆

 以下は私の返事である。

ーー”ミスター・アメリカたるべきもの”がどうあらねばならないか……この点においては、私はあなたと全く意見を同じくしています。しかし、ミスター・アメリカのタイトルを握るものが神ではなく人間であることを思うとき、あなたのおっしゃる”完全さ”を求めることはまず不可能です。出るとすれば百年に一人、いや二百年に一人でしょうかーー

 そして私は思い出した。もし、いままでビルダーの中からこの”完全さ”にほぼ近い男を探し出すとするなら、それはかのスティーブ・リーブスであろう、と。

 しかし、そのリーブスだとて、何かと一般の批判はあったのである。

 日く、オリンピック・リフター・クラスのパワーは持ち合わせていない……日く、肩幅と胸郭がやや狭い……日く、孤独がすきで社交性が無い……等々である。

 私はむしろこのことをリーブスのために喜ぶ。なぜなら、もしリーブスがウェイトリフティングで優勝するに必要なパワーをつけるべく練習していたら、あの美しい筋肉のバランスは消えてしまうだろうし、もし胸部を無理に拡げようとすれば、彼のプロポーションはそこなわれるし、もし無理に社交的であろうとすれば、単なる「ビルダーたいこもち」に落ちはててしまうに違いないからである。

 ただ残念なことは、リーブスはすでに引退し、その完成美を見ることのできない一点に尽きる。

 ところが、ことここに至って私はハッと気がついた。いるのである。まるでリーブスの石像からソックリそのまま抜け出してきたような男が。

 その名をドン・ピーターズという。

☆ ドン・ピーターズ ☆

 ドン・ピーターズ。
 
 アメリカを代表するハンサムな容貌である。バルクもあるが、なんといっても体全体のプロポーションが素晴らしい。そして知性にもこと欠かない。

 現在、ハリウッドのアカデミー映画会社の重役を兼ね、かたわらボディビルに打ち込んでいる。

 ミスター・ダラス、ミスター・テキサス、ミスター・ロスアンジェルス、ミスター・サウザーン・カリフォルニア、ミスター・フィジーク・USA、ミスター・インターナショナル、ミスター・アメリカ(クラス優勝)、ミスター・ウェスターン・アメリカ、ミスター・ユニバース 3位……

 彼の得てきたタイトルは十指にあまる。まだまだ増えるだろう。

 生まれたのは1938年8月5日。

 トレーニングは16才になったときから始めている。動機は「各種スポーツに上達するためのパワーが欲しかったから」という。

 リーブスに似て、彼も筋肉のつきにくい体質であった。それだけにトレーニングには血のにじむ苦心があった。
 トレーニングを始めてから、すでに20年近くになるわけだが、彼はいまも熱心にジムにかよい鍛練をつづけている。
[ 月刊ボディビルディング 1973年5月号 ]

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