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”ヘルス賞”に輝く <’73ミスター神奈川コンテスト>50歳のコンテスト・ビルダー 嶋 崎 茂 選 手

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[ 月刊ボディビルディング 1973年10月号 ]
掲載日:2017.11.09
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日本ボディビル協会副会長
神奈川県ボディビル協会々長
田鶴浜 弘

まえがき

 去る7月29日、横浜の氷川丸で開催された1973年度”ミスター神奈川コンテスト”において”へルス賞”獲得の嶋崎選手(50才)は、昭和30年に日本ボディビル協会が設立されて以来、全国で行われてきた幾多のボディ・コンテストにおける受賞者としての最年長新記録ーーいやボディ・コンテストに参加した最年長者にちがいない。

 もっとも、ひろくボディビル界を見渡すと、50才代どころか、60才代を越してなお、長年の鍛練の成果に、いささかも、おとろえ見せぬのは、本誌で読者におなじみだけでも、世界的大力豪の若木竹丸氏を別格として、加淵清太郎氏あり、70才代となると、腕角力協会々長の山本哲氏ありではある。

 それだからといって、嶋崎さんの感銘がいささかも割引きされるものでは決してないのだーーというのは、現役コンテスト・ビリダーとして若者に伍して出場、50才の肉体が、みずみずしく、新鮮な若さみなぎるハダの輝きを失っていなかったことに、私だけではなく、当日の審査員一同、驚嘆といっていいほどの感銘をうけたものである。

 彼の肉体が物語るものは、昔のことわざ”人生僅か50年”などとは、もってのほかボディビルによって、50才にしてまぎれもなく肉体はなお”太陽の季節”であり得ることを立証したではないか。

 この大収獲を、神奈川県ボディビル協会は”へルス賞”の新設によって、あまねくアッピールしたいのである。

”へルス賞”の誕生

 嶋崎茂さん(神奈川ボディビル・センター)の登場は、開会の初っぱな
ーー予選審査の第1グループだった。

 第1グループは150cm台の小粒ぞろいで、壇上にあらわれた5選手のリラックス・ポーズの中で、先ず一番先に目についたのは、ゼッケン4番の大腿筋のすばらしさ、大胸もいい形。

 顔を見ると一番の年長者に違いないーー男の顔は履歴書だというが、少なからぬ人生経験を物語るイブシ銀の味だが、肉体は20才代の若いビルダーに遜色ないみずみずしさで、全身のハダのツヤが生き生きしているのだ。

身長  158cm
体重  65kg
胸囲  110cm
腕囲  36cm
腿囲  58cm
カーフ 38cm

 均整美を、私は満点にしていいと思ったほど美しいバランスである。

 近頃は、40才前後の好ビルダーが増えてきたーーぐらいにしか私は考えていなかった。

 ところが、アナウンサーのコメントを聞いているうちに”オヤッ”と思った。年令が、なんと50才ーーというではないか。

 あとで判かるのであるが、その”オヤッ”と思ったのは、私だけではなかったようである。

 私も、過去18年間、数えきれないほどのボディ・コンテストに臨んでいるが、私の記憶で、50才代の出場者に接したのはこれがはじめてーー”嶋崎さんの若々しい肉体”をあらためて見直
すのである。

 これこそボディビルの目的、最高の理想じゃあないのかーーと思った。

 ボディビルが求める最高の目標は、青春時代の筋肉だけではなくて、生涯の健康であるのだ。生命の焔がもえつきるまで、完全な健康ーー人間機能におとろえも、ひずみもなければ、肉体は美しいはずである。

 私の信条は、理想の肉体美は、完全な健康体と一致するものであり、ボディビルは肉体の美学でなくてはいけない。

 だからそのとき、私の脳裡に、壇上のゼッケン4番がひらめかせた思念はミスター神奈川コンテストの順位はともかくとして、”真のボディビルの達人を見つけた”よろこびであった。

 果たして、予選審査が終わったあと立ち上った役員席で、顔を合わせた平山副会長、田辺副理事長、宝利專務理事、それに特別審査員をお願いした氷川丸の佐藤氏と私の5人が、期せずして同じことをいった。

 「ゼッケン4番ーーあの50才の選手には、なにか特別賞を考えようじゃないですか」

 田辺君が”へルス賞”ではいかがでしょうーー」と提案する。

 「まさにピッタリーそれがいい」平山副会長も私も、即座に賛成した。

 もちろん、あらかじめ予定していなかっただけに、トロフィーの用意がなかった。田辺副理事長が「差し当り今回は賞状だけでは」と提案すると、氷川丸の伊藤氏が「氷川丸でトロフィー代わりの賞品をなにか出しましょう」というありがたいお申出。そのご好意を受けることにした。

 あとで、嶋崎選手が所属する神奈川ボディビル・センター会長の仁上貞雄協会顧問が、立派な”へルス賞”トロフィーをつくられた。
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課長さんビルダーこんにちは ーー ”へルス賞”訪問 ーー

(日時)8月8日午後7時
(場所)神奈川ボディビル・センター
    (川崎市中原区刈宿199)
(出席者)
 ◇ 嶋崎 茂 選手(へルス賞受賞者、50才、日本電気真空硝子株式会社管理課長)
 ◇ 仁上 貞雄(神奈川県ボディビル協会顧問、神奈川ボディビル・センタ一会長)
 ◇ 田鶴浜 弘(神奈川県ボディビル協会々長)
 ◇ ボディビルディング誌・勝村記者

 先ず、神奈川ボディビル・センターの仁上貞雄会長が、50才の課長さんビルダーを、ミスター神奈川コンテスト出場に踏みきらせた環境と経緯を説明する。
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 「うちの会員の中・高年者は、男性だけじゃァなくて女性もいるんですョ
ーートレーニングの目的は、グッド・リビングの一環ですネ、生活を健康から生まれる明朗化、ひいては、それが社会活動にもいいし、最近の社会的テーマのゆたかな余暇開発ムーブメントにもそっているわけで、美容と健康の2つの目的を同時に果たせるーー嶋崎さんは会員の中の一番の年配者ですが50才近い男性会員は、他に4人、みんな社会的には指導的立場だし、女性の年配会員というと、45才の有名な日本舞踊のお師匠さんをはじめ、主婦の方々がいま8人。

 皆さんとても熱心で、嶋崎さんなどは、若い会員にもトテも人気があるお人柄で、お年にメゲず、実力的にも若い人に負けやしないーーだから別項のような、このジムのトレーニング管理面の心得13カ条も制定していただいたりして、まるでコーチ役まで買って出ていただいています。

 今度のコンテスト出場は、私が極力すすめたもので、何よりもボディビル・トレーニングというものの効果をハッキリ実証してもらったことになるーーつまり、日頃の健康管理とトレーニング次第では、50才になってもまだまだ若さをよみがえらせ得るという自信の裏付けをしようじゃないかーーというわけです」
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 以下は嶋崎さんとの対談である。

田鶴浜 「ボディビルをはじめられたのはいつから?」

嶋崎  「昭和46年の9月に、私どもの会社の下請をやっていた吉川進君(神奈川ボディビル・センター所属で、昨年度ミスター神奈川優勝)との縁でここにはじめて入会しましたが、カゼをひいて4カ月も休んじまったブランクがあり、本格的にやり出したのが昨年の6月からでしたね」

田鶴浜 「案外キャリアは浅くていらっしゃるーーすると、以前から何かスポーツをやってられたんでしょう」

嶋崎  「若い頃スポーツはいろいろやっていました。野球・スキー・スケート・バレーボール・陸上競技ーー陸上は100メートル12秒ぐらいの記録でした。

 ところが、その後スポーツをはなれてしまうと、どうも体の調子が悪いんですネ。人間の体は鍛えないとダメになっちまうもんですョ。すっかり老けこんでしまって、日常の動作もにぶくなるし、それに疲れやすくなっていろんな故障ーー私の場合は急性肝炎と十二指腸を患い40日も入院したり、カゼはひき易い、リューマチ熱は出るーーといった具合で何か適当な運動でもーーと気がついたのは、やはり若い頃スポーツをやっていたおかげかも知れません」
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田鶴浜 「その頃吉川君にすすめられたのがちょうどいいタイミングだった」

嶋崎  「ボディビルは自分の体力や年令に応じて、運動の質も量も自由にできるからいいーーと思ったわけで、はじめは自由ケ丘の自宅から会社まで毎日約1キロを自転車で通勤することと、1日おきに会社が終わって夕方の6時半頃から約1時間、このジムで練習することにしました。

 最初は基本の運動として、柔軟体操、スクワット、ベンチ・プレス、カール、アップ・ライト・ローイング、ベント・ローイングといった種目を無理のない重量と運動量からはじめたわけです。それでも、ここに通い出してから2〜3カ月で目に見えて腹の出っ張りがなくなるし、だいいち食事がおいしいーー確かに体の調子がよくなってきたのがはっきり自分でわかりました」

田鶴浜 「でも最初カゼをひいて休んだといわれましたが、その後いかがです」

嶋崎  「あれが病気とのお別れでしたョ。その後1年近くになりますが、すっかり病気とは縁切りになっちまったですネ。ここにサウナの設備ができてからは、会長と一緒に全身の皮膚を亀の子だわしでゴシゴシと摩擦し最後に水風呂で仕上げをしていますが、これがまたいい鍛練で、全身機能の若返りに非常に有効なように思います」

田鶴浜 「最近のトレーニング内容は?」

嶋崎  「毎日トレーニング日誌をつけていますから、あとでくわしくご覧になってください」

 私がトレーニング日誌を手にとって開いたページは7月10日の分だった。さすがに管理課長らしく、きちょうめんにその日のスケジュールが記入されていた。

☆準備体操

① ベンチ・プレス 70kg×10回×10セット
② ベント・フォワード・ラテラル 10kg×10回×5セット
③ ストレート・アーム・プルオーバー 17.5kg×10回×5セット
④ ワン・ハンド・カール 12.5kg×10回×左右各5セット
⑤ バー・ディップス 20回×5セット
⑥ シット・アップ 20回×5セット
⑦ バー・ローイング 40kg×10回×5セット

☆整理体操

 以上を7時からはじめて8時半に終了。もちろん、そのあとサウナで蒸して、亀の子だわしでゴシゴシこすり、水風呂の仕上げだそうだ。
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おしまいに

 嶋崎さんの管理課長というお仕事の内容をうかがうと、製品管理から、防火、保安、衛生等々と多岐にわたり、デスク・ワーク以外の仕事が沢山ーー会社では重いものも部下まかせじゃない、骨惜しみせず課長自ら自分で運ぶ(デッド・リフトで腰を鍛えているから、ギックリ腰の心配なし)働きものの課長さんーーと拝見した。

 それにお酒はほとんど飲まない、道楽はしない、家庭では優秀なパパという、きわめて清潔な日常生活である。

 ウェイト・トレーニングの他に、自転車通勤、サウナ入浴で”亀の子だわし”の全身摩擦などと、日常生活そのものが若さの復活に役立っているーーと私は思った。
[ 月刊ボディビルディング 1973年10月号 ]

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