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Spot Light Physique 長谷川浩久 初代アジアメンズフィジークチャンピオン

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[ 月刊ボディビルディング 2015年10月号 ]
掲載日:2017.05.18
Photo = Ben

Photo = Ben

昨年JBBFメンズフィジークコンテストシーンに現れた、このベビーフェイスの新人は、その抜群の存在感を武器に僅か2年という短期間で、アジアの頂点にまで到達した。今回のインタビューでは、彼の素晴らしいフィジークはもとよりその内面にも迫る。

フィジーク競技の理想像

左門殿川ジュン(以下左門): こんばんは、今日は宜しくお願いいたします。アジア選手権優勝おめでとうございます。今のお気持ち等を聞かせてもらえませんか?
長谷川: そうですね、単純に嬉しいっていう気持ちがあります。今まで積み重ねてきた事の結果が、出せたことが嬉しいですね。
左門: なるほど、長谷川選手は競技のキャリアはどれ位あるのですか?
長谷川: 競技キャリアは2年ほどです。
左門: 確か最初はベストボディジャパンに出場されて、次にキングオブフィジーク大阪でしたね?とても短い期間でアジアの頂点になりましたね。
長谷川: そうですね、フィジーク競技が始まったばかりだったので、ラッキーだったのかなって思うんです。明確な基準が無い中で競技が行われているようにも思っていたので、もしかしたら獲れるかもしれないと思っていましたね。競技に出場する中で求められているものに合わせていったというのが正直なところです。
左門: 具体的には、競技に合わせていく為に何をされましたか?
長谷川: とにかくルールを読み込みました。筋肉だけでは無いということが大きなポイントだと思ったのと、ルールに書かれた“トータルパッケージ”とは何か? について自分なりに解釈しようと思いました。それから海外の動画も、よく観ましたね。
左門: そこからヒントは得られましたか?
長谷川: Vシェイプを、どれだけ綺麗に作るかがポイントだと思いましたね。それから身体の厚みなどのバルク面は、これから世界大会で評価を得る為の課題だと考えています。
左門: 長谷川選手の身体というのは、ボディビル競技とは違った完成度の高い身体だと思うのですが、長谷川選手の考えるフィジークとボディビルの大きな違いについてお話いただけませんか?
長谷川:より自然に近い感じが良いのかなと思っています。限界まで絞ったりはしない。だからと言って、仕上がりが甘すぎると評価を得られないので、そこが難しいところですね。
左門:自然に近いということは、一般の方がみて、なりたい身体、理想の身体というような感じでしょうか?
長谷川: アジア大会に出場して、ボディビル競技のトップレベルの方々の身体を間近で見る機会がありましたが、あのレベルの筋肉量に到達するには、かなりの鍛錬と時間が必要だろうなと思いました。そう考えると、僕らのフィジーク競技は大会に参加する人たちを増やすきっかけになるんじゃないかなと思いました。
左門: なるほど、競技人口の拡大に繋がりそうですね。次に質問したいのですが、今回のアジア選手権ですが、長谷川選手自身、優勝できるイメージがあって大会に挑まれましたか?
長谷川: 会場に着くまでは、正直難しいと思っていましたが、予選の画像を見て、周りからの反応を聞いたときに勝てるかもしれないと思いました。
左門: 今回の大会に向けての、特別な取り組みのようなものはされましたか?
長谷川: 特に特別なことはやっていませんが、自分が弱点だと思っている部分の強化はずっとやっていますね。
左門: ポージングなどは、どうでしょうか? 以前と比べると、かなり進歩されているように思いますが。
長谷川: 最初のころは大会に向けての講習会に参加して、ポージングの形を覚える程度でしたが、今は自分がステージに立ったときにどのようにみえているのか意見を聞いたりして、ポージングに反映しています。
左門: バルクのある選手なんかもアジア大会には沢山いたと思いますが、そんな中で自分をどのようにアピールしましたか?
長谷川: 笑顔、そして雰囲気をどのように華やかにみせるかを意識しましたね、そこが他の選手との差別化に繋がったと思います。
左門: なるほど、確かに笑顔は群を抜いて素晴らしかったです!(笑)

脚も週1でトレーニング

記事画像2
左門: 次に聞きたいのですが、長谷川選手はどのようなルーティンでトレーニングされていますか?
長谷川: 大会前は週6回、6分割のトレーニングですね。1回のトレーニング時間は30分から2時間ぐらいの間です。仕事の合間を上手く活用してトレーニングしています。
左門: トレーニング方法等はどうでしょうか?何か特別なことをされているとか?
長谷川: 実は特別な方法はとってなくて、基本に忠実なトレーニングなんですよ。肩は自分の課題部分だと思っているので、アウトラインを完成させる為にも考えながらトレーニングしています。
左門: 脚のトレーニングはどうですか? フィジーク競技の選手の中には、あまり重要視していない選手もいますが。
長谷川: 脚も週に1回、スクワット、デッドリフト、カーフレイズといった主要種目をおこなっています。脚のトレーニングもしっかりやっておかないと、身体全体のバランスが悪くなりますから重要だと思います。
左門: そんな長谷川選手にとって理想の身体とは?
長谷川: フランク・ゼーンですね!ビルダーの中でも、フィジーク競技の完成形に近いと思っています。
左門: お食事について聞かせてください。食事の回数は?
長谷川: 4回から5回に分けて食べています。
左門: サプリメントは?
長谷川: BCAAとクレアチンとグルタミンとソイプロテインですね。4~5回の食事の内、サプリメントだけで栄養を摂取することが1回入りますね。減量の時にはプロテインの量を少し増やします。体重1kgあたり3gのプロテイン摂取を目標にしています。
左門: 炭水化物はどうですか?
長谷川: 減量期間は減らしますが、普段は普通だと思います。たんぱく質のように体重あたり何グラムという計算はしませんが、干し芋を100~200g、オートミールを200gぐらい、それからトレーニング後にダイフクを食べます。ダイフクはコンテストの1~2週間前ぐらいまで食べますよ。
左門:減量期には炭水化物を大幅にカットして、プロテインやアミノ酸を増やす方も多いですが、長谷川選手はどう考えますか?
長谷川: 糖質カットは、トレーニング強度を下げると考えています。自分の感覚としては、糖質を落としすぎると筋肉量を落とすと思いますね。
Photo =Tokue

Photo =Tokue

高校生の頃から社長が目標

左門: アジアのタイトルを獲得して、ご自分の環境や意識で何か変化はありましたか?
長谷川: 僕で良いのかな? っていうところがあるんですよ、だから、そんなに浮かれた気持ちも無いんですよね。今は少しだけ休憩して、次に備えたいですね。
左門: メンズフィジークは新しい競技ですが、今後どのような発展を望まれていますか?
長谷川: 世間では男性も女性も、鍛えることに対して凄く意識が高くなっていると思います。今後競技者も、どんどん増えていくのではないかと思います。大会に出場する為の選手側の手間を省く工夫をすることで、参加者はもっと増えていく可能性があると思いますね。競技としては、とても洗練されていて魅力があります、もっと認知をあげていくことが求められますね。
左門: 今後メンズフィジーク競技に参加する選手たちが結果を出す為には、何が必要だと思われますか?
長谷川: どこに目標を置くかだと思います。優勝を目指す人は、優勝する為の計画を立て行動しますし、入賞が目標の人は入賞の為の計画や行動になると思います。それから、まず大会に出場し自分の立ち位置(レベル)を知り、そして自分にとって現実的な目標を立て行動することも大切だと思います。
左門: なるほど、トレーニングだけでなく、人生設計にも繋がりますね。長谷川選手は、パーソナルトレーナーとしても、企業家としてもご活躍ですね。2010年7月から『Rise』として活動されていますね。今現在の活動なども教えていただけますか?
長谷川: 今は、この上のフロアにも女性専用のジムを運営しています。プレイングマネージャーをしながら、人材育成もおこなっています。会社のマーケティングやプランニングなどもしています。
左門: 元々経営も学ばれているんですよね? そういったことも関係していますか?
長谷川: そうですね。元々独立したかったんです。高校生の頃から社長になりたいと考えていました。
左門: 高校生の時からですか!ではトレーニングをする中で、自分がやりたいビジネスモデルを見つけたという事ですか?
長谷川: もちろん、それはありますね!
左門: 個人事業としてのパーソナルトレーニング事業と、法人事業としての事業とでは違いを考えられますか?
長谷川: そうですね、個人の場合はどれだけ頑張っても利益もクライアントの数も限界点が決まりますよね、これも何処を目指すか?という事になりますが、仲間を募って組織としてやっていくのか、職人的に一人でやっていくかだと思います。僕は元々職人タイプではないと思っていましたので、会社組織を作って人材を育成しています。人材育成には非常に苦しんでいますけど。
左門: 人材育成ですか。経営サイドから見てトレーナーに最も要求される能力は何でしょうか?
長谷川: トレーニング知識や、指導の技量も必要ですが、それよりもクライアントさんのお話をしっかり聞けるような傾聴能力や、コミュニケーション能力が大切だと思いますね。そういう能力が高い人って意外に少ないんだなって思います。ですから人材育成には、その部分を特に力を入れてやっていますね。
Photo = Ben

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写真=吉田浩貴

写真=吉田浩貴

JBBFデビューとなった昨年の大阪オープン(写真上)。クラス3位という結果だったが、その3ヶ月後の日本選手権では、クラス優勝と総合優勝を飾った

左門: 長谷川さんの会社のモデルになるようなものはあったんですか?
長谷川: 元々パーソナルトレーナーとして勤めていた経験があって、これなら自分でもできるなと思いましたね。
左門: 今後のRise としての目標などはありますか?
長谷川: お客様は殆どが経営者の方なので、そちらに向けてニッチ(大企業が進出しない小規模な分野、又は普通には気づきにくいところ)な方向でやっていきたいですね。
左門: オールマイティではなく、専門的分野に向けるということですね。
長谷川: そうです。選ばれるべき人に選ばれるということですね。
左門: 因みになんですが、こちらの料金はおいくらですか?
長谷川: 僕が指導に付くと2ヶ月で70万円(週2回全16回)です。
左門: それは凄い!この業界に入ってくる人に夢を持たせられますね!
長谷川: 従業員が付くと2か月40万円ぐらい
ですが、どちらが付くかという話になると、お客様が僕を選ぶケースが多いんです。スタッフにも、どんどん付いてもらいたいんですけどね。
左門: ナンセンスな質問をしますが、クライアントさんに結果は出ていますか?
長谷川: 結果は出ています!(笑)
左門: 結果が出なければ、お金を払う人はいないですよね。
長谷川: 本当に良い人材が揃っているので、結果は出ますよ。
左門: なるほど、事業のお話とても興味深いのですが、長谷川選手自身の今後の人生の目標のようなものはありますか?
長谷川: 人生は楽しんでいきたい。どうせやるなら、面白いこともやりたいという事で、マッスルバーなんかもやっていこうと思っています。
左門: いろいろなプランやアイデアが生まれますね、とてもお忙しそうですが本当に人生を楽しめていますか?
長谷川: 今は未来を考えると頑張るときだと思うので、苦しみながら、それでも楽しんで行こうと思います。
左門: 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
長谷川: 一般の方々にこのメンズフィジークという競技が広まって、格好良い身体の人たちが増えてくれば、競技者としても嬉しく思います。そういう時が来るようにこれからも頑張っていきたいと思います。今日はありがとうございました。
長谷川選手が経営するRise

長谷川選手が経営するRise

  • 長谷川浩久(はせがわ・ひろひさ)
    1985年2月23日生まれ(30歳) 大阪府大阪市出身
    身長173cm、体重72kg(オン)・78kg(オフ)
    職業:株式会社Rising Shift代表取締役

    主なコンテストキャリア
    2014年
    ベストボディジャパン神戸大会フレッシャーズクラス優勝
    キングオブフィジーク大阪メンズフィジーク173cm以下級3位
    第一回JBBF日本メンズフィジーク選手権176cm以下級&オーバーオール優勝

    2015年
    JBBFアジア選手権選考会176cm以下級優勝
    アジア選手権メンズフィジーク172cm超級優勝

Text:
Samondogawa Jun
Photo:
Yoshiteru Takahashi
[ 月刊ボディビルディング 2015年10月号 ]

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