フィジーク・オンライン
  • トップ
  • スペシャリスト
  • 経営者
  • 【600号記念特別インタビュー】次の50年に向けての夢、決意 公益社団法人日本ボディビルフィットネス連盟会長 玉利 齊氏 SPECIAL INTERVIEW

【600号記念特別インタビュー】次の50年に向けての夢、決意 公益社団法人日本ボディビルフィットネス連盟会長
玉利 齊氏
SPECIAL INTERVIEW

この記事をシェアする

0
[ 月刊ボディビルディング 2013年9月号 ]
掲載日:2017.09.07
半世紀を超える歩みを続けてきた日本のボディビルが今、さらに新たな道筋を得ていこうとしている。

今回は、本誌600号記念の特別インタビューとして公益社団法人日本ボディビルフィットネス連盟会長・玉利齊氏に日本国内のボディビルの現状ならびに今後の目標、そして決意についてお話をうかがった。
記事画像1

公益社団法人化の意義

橋本 月刊ボディビルディングがこのたび600号をかぞえることとなりましたが、このように刊行を重ねることができたのも連盟と共に歩んできたからこそだと考えております。そしてその連盟がこのたび相当に厳しい審査をクリアし、また名称も新たまり、公益社団法人日本ボディビルフィットネス連盟となられましたが、その中には相当な展望や意志もあるのではないかと思います。

玉利 私どもは日本のスポーツ界の中でスポーツとしてボディビルを発展させていかなければならない立場にありますが、その点において私はかねてからボディビルは究極の目標として「オリンピック競技となることを目指すべき」という考えをもっておりました。そして長野オリンピックがひらかれたおりの国際オリンピック委員会(IOC)総会でボディビルがオリンピックの認定種目に指定されました。これはオリンピック競技としての参加はまだではあるけれども、いわばIOCの予備軍というような形です。一方それと同時にアジアオリンピック協議会(OCA)では正式競技に受け入れられました。

橋本 それは、たしか2001年でしたね。玉利 はい。その後、日本オリンピック委員会(JOC)への加盟も実現していくわけです。JOCの加盟団体は約40ほどありますが、その多くが公益社団法人化を目指しており、その点、他の団体と足並みをそろえていくため、そしてスポーツ界においていわば市民権を確立していく上で公益社団法人化は大切なことでした。

橋本 日本体育協会(体協)への加盟についてはいかがでしょうか。

玉利 県レベルの段階においては、現在、山口県のみが加盟しています。本来ならば、社団法人であり、全国の統括団体であり、ましてJOCに加盟している団体であり、さらに競技としてアジア大会での種目になっていれば、そのままスムーズに体協へ加盟となっていかなくてはいけませんが、さまざまな規則などがあり、今日においても未だ加盟は実現していません。ただ、やはりこれまでの成果を見てくださり、あと少しで加盟は認めていただけるという段階までは来てはいます。ですから公益社団法人化の次の目標として、現在は体協への加盟を目指しております。

 その一方、この体協加盟に関しては、ジムのオーナーの方々の中には直接メリットがないと考えている人も多いようですが、そのようなことはありません。体協加盟ということになれば、体協の推進している「国民の健康づくり」においてもボディビルがより役割を担い、参画をする機会もでき、そうなると新たなステイタスも確立されていきます。また県大会などにおけるスポンサーも増えていきますから、相当な意義があるのです。

橋本 なるほど。体協加盟によって地域スポーツ振興においてそれぞれのジムの方々が役割を担うチャンスができるということですね。

玉利 その通りです。スポーツ界という土壌でさらに力を発揮できるのです。そうなれば行政も協力してくれますし、孤立することなどもありません。これまでのボディビル界は、それができる要素を持ちながら積極的に行動しなかったという現状がありましたが、このたび公益社団法人化し、国民の公益性追求という目標をもった近代化された組織としての形を明確にいたしましたので、今後はそのようなあり方を進めていくことが大切であると考えております。
ボディビル競技は文化の域にまで達するようになるべきです

競技としてのボディビル、その現状

記事画像2
橋本 その他にも連盟としての課題はいろいろとあるかと思いますが、その一つとして、ボディビルの競技人口を増大化などもあるかと思います。

玉利 まずその点について現状を申し上げますと、現在、選手として登録されている方の数がグロスで3564名となっています。その上で年度ごとの登録更新がなされるわけですが、今年度において登録してきている人数が1811名です。そして審査員が1級から3級までありますが、トータルで576人。そして指導員、こちらも1級から3級までのトータルで777人です。つまり、これだけの数がいわゆる競技スポーツとしての人口ですね。もちろん、登録はしていない方や参加を目指している方などという潜在的な人数を含めればさらに多い数字になるでしょう。しかし、この人数を見る限り、他のスポーツ競技に比べて確かにボディビルの競技人口は多いとはいえません。それゆえにやはり競技スポーツとしての発展のために競技人口の増加は課題となりますし、その上で「オリンピック種目化」という方向を目指すことは大切になるでしょう。

橋本 そうですね。もしボディビルがオリンピック種目になれば、オリンピックに出ることを目標とした上での志願者が増加していくでしょうね。一方、競技人口の増大ということにおいては、ジム加盟という制約をはずしての個人加盟ということも認めるなどの競技大会参加のオープン化ということはお考えでしょうか。

玉利 ボディビの競技人口は減ってはいないのですが、伸びてもいないというのが現状です。一方、現在ではフィットネスクラブなどで、ボディビルという名ではなく、ウエイトトレーニングとかマシントレーニングという名で、いわゆるレジスタントエクササイズに取り組むことができるようになりましたが、このようなトレーニングはかつてはボディビルジムでなければできませんでした。

 少し前まではボディビルジムの数は全国で約600でした。それが現在では約300と半減しています。それに対して、現在、全国には約2000ものフィットネスクラブがあり、そこには必ずウエイトトレーニング用のマシンを置いていますし、さらに公立の施設の多くにおいてもそのような設備をおいています。つまり最初はボディビルジムのみで行われていたことが今では広くさまざまな場所で行なわれているということです。ただ、ともすればこれまでのボディビル界ではそのようなジム以外でトレーニングした方の選手参加を認めないという向きがありました。しかし、それではいけないと思いますし、意識を変えていかなくてはならないと思います。まず組織の側の人間は、ボディビル全体を発展させることを考えなくてはならない。そのためのパイをこちらに取り込まないでいては、競技人口増大や全体としての発展ができるはずがありません。すでに裾野拡大のための土壌はできているのですから、それをチャンスにするべきです。

橋本 ボディビル競技がより充実していくためには競技人口の増大の他にも、国際的に発展していくことなども大切になってくると思われますが、その点において取り組むべき課題はありますでしょうか。

玉利 まず一つは、競技レベルの向上です。 私は常々、「体育、スポーツ、そして芸術、この3つがミックスしたものがボディビル競技である」といっています。つまりボディビル競技とは見せる競技であり、その際、「きれいだな、美しいな」という印象を見る人に与えないといけませんし、それは、いわゆるただの「筋肉ごりごりの力みあい」では感じさせることはできません。そしてその点、最近の日本のボディビルは、特にトップ選手などにおいては、そのような「あるべき姿」に近づいているように感じます。

橋本 そうですね。確かに日本選手権大会におけるトップ選手のフリーポーズなどは実に素晴らしいですね。

玉利 その点においては日本の選手は世界中のどこの国の選手よりも優れているように思います。例えばアメリカのプロ選手の姿などは、いかにも大きくすごい筋肉を誇るようないわば「動物的印象の姿」であり、そこには「人間的な美しさ」というものを感じることは難しいかもしれません。ですがやはり、私は「人間的な美しさ」を追及し高めていくことが競技レベルの向上の道筋であると考えております。いうなれば感動を与えるということです。

 そしてさらに競技として国際的に発展していくという上で欠かせないのは、日本の選手が国際競技大会で理屈抜きにメダルを数多く獲得することです。「日本のボディビルというものは、国際的にこれだけ強いのだ」ということを実証していくことです。そして、さらに課題となるのは、選手層の拡大です。特にこれからの良い選手を数多く輩出させていくことができるように、若い選手の層を拡大していくことです。

橋本 若い選手層の拡大とは、やはり高校生や大学生までも含めてお考えでしょうか。

玉利 韓国の選手権大会に呼ばれてあちらの大会を見ていますと、日本とは逆の現象に気がつきます。マスターズとジュニアの選手の数をそれぞれ見てみますと、日本の場合はマスターズで100人を越えることもあるのに対して、ジュニアは多くても20人くらいです。ところが韓国ではジュニアが100人を越すと思えば、マスターズは20人もいないというような具合なのです。その上でレベルで比較すると、マスターズでは日本の方がずっと上であるのに対して、ジュニアにおいては日本のジュニアがはるかに及ばないと思えるほど韓国の方が高いレベルとなっています。このような現状ですから、韓国では、ボディビル競技の選手がどんどんと出てくるのです。

橋本 ボディビル競技をスポーツとしてより評価させるということも、やはり大事な課題となってきますね。

玉利 全くその通りです。スポーツというのはルールを守るということが根幹ですね。スポーツと見世物との違いは、ルールおよびマナーがあるか否かであろうかと思います。またスポーツに対して見世物というのはその場限りの刹那的・刺激的な方面へと向かっているものであろうと思います。その点、ボディビルは油断をするとドーピングなどで見世物的方面へと行ってしまうこともありえます。見世物とは異なり、ルールがありマナーがあることがスポーツの基本ですし、その方向を歩むことで文化として定着していくことができるのです。見世物は文化にはなりえません。私は文化というものは永続性があり、国民に夢や感動ややすらぎを与えるものであると思っています。ですからボディビルは文化の方向性に歩んでいかなくてはならないですし、そのようにしていかないと競技としても根付いていくことはできないと思います。

橋本 その意味においてもアンチドーピングは大切なことですね。

玉利 現在のIOC会長のジャック・ロゲ氏は非常にボディビルに対して厳しい意見を持っているのですが、その理由は彼は医師であり、アメリカのプロのボディビル選手などにはドーピング使用の選手も多いことをよく知っているからです。その点の巻き返しは、本来、国際連盟(IFBB)が行わなければならないのですが、そうした中でボディビルについて純粋にスポーツ論および文化論を説いて頑張っているのが日本のボディビルなのです。例えば役員として私などがそうしたことを会議で発言していますし、また選手レベルにおいては、日本人選手の中には国際大会においては一人もドーピング使用者を出していません。

 やはり、ボディビルがスポーツとして正当な評価を受ける上で絶対に避けて通れないのがアンチドーピングです。そして、これはこと日本に関しては非常に良い評価を受けています。つまり、これはやろうと思えば本来できるはずのことなのですが、世界各国のボディビルにおいては、単に大きな筋肉を見て喜ぶようなマニアック的傾向に対しての迎合が捨てきれずになかなか実行することができないところもあるようです。確かにマニアック迎合は採算性においてはもっとも直結しやすいというのが現状です。しかし、世界各国のボディビル指導者はそのようなマニアック的傾向に対しての迎合は捨てるべきですし、その上で本来目指すべき方向に目覚めるべきでしょう。
記事画像3
アンチドーピングを徹底する日本のボディビルは正当なボディビルとして国際的な場においても高い評価と尊敬の念を集めている。国際会議において玉利会長が中心的な位置へといざなわれるのもその表れであるといえよう。
記事画像4
ボディビルとは、「健康とは何か」を目に見える形で体現したものなのです

国民の健康づくりにおける役割

橋本 健康づくりという観点において、やはりボディビルという世界には大きな役割や魅力があると思いますが、その点はいかがでしょうか。

玉利 それは実に良いご指摘だと思います。ただ、健康という言葉は現在では、誰しもが口にしますし、さまざまなスポーツ団体やフィットネスクラブも健康の大切さに関して語っています。しかし、「健康とは何か」ということについて具体的に語ることのできる人はなかなかいないようです。

橋本 そうですね。確かに病気でなければそれだけで健康とはいいきれないですね。玉利 その点、その健康というものを具体的に視覚的に示しているのがボディビルなのです。ボディビルの筋肉隆々とした肉体を見て、やはりそこからは「健康というもの」を感じるかと思います。健康でなければあのようにはなれませんからね。つまり単純にいえば、健康を目に見える形で表していくのがボディビルなのです。

 そして、その一方で日本の厚生労働省が健康日本21という国民運動を展開している中で標語があり、それが健康というもののために必要なことについて、わかりやすく述べています。すなわち「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後に薬」というものです。つまり運動と食事が大事であるということ、この点についてはかねてより「運動、栄養、休養」といっていますが、その際、それらを具体的にどのようにして満たしていくかが課題になります。

 最近ではメタボとかロコモとか、そのような問題がとりざたされておりますね。メタボ、すなわちメタボリックシンドロームとは肥満。そしてロコモというのは医学用語ですが、すなわちロコモティブシンドロームという高齢により筋肉で動かせる手足が弱ってくると寝たきりになってしまうという問題です。

 厚生労働省はメタボリックシンドロームに対しては運動をしなさいといっている。そのためには健康づくりを果たすことのできる適切な場が必要になります。そこで全国のフィットネスクラブに対してその上での条件を満たしている施設には、厚生労働大臣認定健康増進施設と認定していく制度を作ろうということになったのです。そこにおける基本条件は4つでして、まず健康指導においては医療機関との連携ができるということ、これが第一。そして、さまざまな健康度や年齢層の方々が来ても対応が出来る多様性のある指導ができること、つまり画一的な指導ではなく個人個人にあわせた適切な指導ができるプログラムがあること、これが第二。そしてそのようなプログラムに応じた指導を行える資格を持った指導者がいること、これが第三。そして最後に、施設そのものが不衛生でなく安全性がしっかりあることです。つまりプログラムとそれを生かすマンパワー、そしてハードとしての施設、さらに医療機関との連携、これらがあることが審査の上で認められると厚生労働大臣認定の健康増進施設という表示をつけることができるのです。ただ現在、全国に約2000あるフィットネスクラブのうち、この資格を得ているのがせいぜいおよそ400くらいです。

橋本 やはりそうなのですか。私自身もフィットネスクラブに出向いた時に、トレーニングをしようとしても、それに対してしっかりと指導をしてくれる指導員がいないということを感じることがあります。やはり、このたび日本ボディビルフィットネス連盟として名称も変えたことには、そのようなフィットネスクラブにおける指導の役割も取り組んでいきたいという意思があるのでしょうね。

玉利 そうですね。アメリカのフィットネスクラブなどですと、それこそボディビル出身の筋骨のたくましい指導員が明るく的確に指導してくれ、その指導を受ける人たちもそのような指導員の姿にあこがれてさらにやる気が出てくるということもあるようです。日本でもボディビルジムとフィットネスクラブ、さらには公立の運動施設という垣根を越えてボディビル出身の人たちが彼らが持つ見事な肉体、そして高度な知識や経験を生かしてさらに広く指導活動を行うことが大切です。

橋本 フィットネスクラブなどでトレーニングを重ねている若い人たちの中には、ボディビルの大会に出場するようないわゆるハードな肉体は目指さないけれど、ある程度鍛えられて均整のとれた肉体に自信を持つ人も多いようですし、また中高年以上の年代の方々でもそのようなレベルでのトレーニングを目指す方々もいるようです。また最近はベストボディコンテストというものがテレビなどで一般の方々にも紹介されて話題にもなっています。実際に私もその大会を見に行きましたが、確かに本格的なボディビルの大会における肉体のレベルには及ぶべくもありませんが、大会そのものは実に熱気のある雰囲気で盛り上がっていました。

玉利 確かにそれくらいのレベルを意識して目指し取り組む方々もおられると思います。そこで今回、なぜ我々が組織名称を日本ボディビルフィットネス連盟へと変更したのかということをお話ししたいのですが、その理由のまず第一が、5年前にIFBBがボディビルフィットネス連盟としたことにあります。そして、その際世界各国の連盟においても同じくするようにという連絡がありました。ただ、もう一つの理由として、一般の方の健康づくりとしてのフィットネスについてより取り組んでいきたいという意志を表したということでもあるのです。つまり、「競技には出ないけれども健康でいたい」あるいは「あまりお腹が出すぎているような不恰好な姿になることは避けたい」このように考えて運動をする人は男女の隔てなく実に多く、そのような人たちへの指導にもより積極的に取り組んでいくべきであると考えているのです。かつて約600存在していたボディビルジムの数は現在では約300と半減、そしてその数を以前の数に戻すことは難しいでしょう。しかしトレーニング指導を受けてもらう人たちの数を増やすことはさほど難しいことではないはずです。

 以前、「あなたはどのような運動に取り組んでいますか」という調査が行われた際、いろいろなスポーツ競技がある中、「ウエイトトレーニングに取り組んでいる」という答えは2・3番目くらいの上位にきていたそうです。やはり今やウエイトトレーニングに取り組む人の数自体は相当なものとなっており、そうした方々を取り込んでいくべきですし、そうしたことが組織としての発展さらにはボディビル全体としての発展になっていくのです。

橋本 国民の健康づくりにおけるボディビルの役割として近年、注目を集めていることに高齢者の方々が健康維持のために筋力トレーニングを行っているということがありますね。

玉利 先ほどロコモということを申し上げましたが、メタボは乗り越えても、今度は後期高齢者となってロコモの問題、つまり身体が動けなくなってくるという問題に多くの方が直面します。そして、それに対応するものとしてウエイトトレーニングが再認識されてきました。というよりもそれまでは、ウエイトトレーニングやボディビルなどは「高齢者が行うべきものではない」というのがいわば常識で、高齢者の運動といえば、軽いウォーキングや柔軟体操などといわれていましたが、近年、筋力トレーニングの意義が注目されてきて、高齢者の運動というものの常識をくつがえしてきていますね。そして、このような現状はボディビルにも大きな役割や課題を示しているものであるといえます。

 こうした現状にボディビルが対応していく上では、指導者にとっての課題が出てきます。すなわち今までのボディビルの選手としての体験、ならびに選手や一般人の筋力作り指導に関してだけの知識や体験だけでなく高齢者に関しての医学的知識など、あらたな知識や理解がなくてはいけなくなってきます。

 また現在のボディビルの指導者はボディビル公認指導者制度のもとで連盟が公認指導者としての認定を行っています。これはもちろん「ボディビルに関しての指導者認定」であり、本来、ボディビルには「健康づくり」や「スポーツ指導」などあらゆる要素をすべて含めているのですが、どうしても一般の方にとっては、ボディビルという言葉が表に出ると「競技を目指し、極限までの肉体鍛錬を追い求める人だけのもの」というイメージとして感じてしまい、高齢者のための指導者にはふさわしくないと考えてしまう方も多いようです。

 これで最近では、私は東京大学の石井直方氏と相談して「ヘルスウエイトトレーナー」という名称にて高齢者のための指導に対応していく必要がるのではないかと考えています。
記事画像5
玉利 齊(たまり ひとし)
公益社団法人日本ボディビルフィットネス連盟会長。昭和28 年、早稲田大学在学中に日本初のボディビルクラブとして誕生した「早稲田バーベルクラブ」の設立メンバー(初代主将)として関わり、以降、指導者育成や健康づくりの指導などを通して、スポーツ振興ならびにその普及活動を行っている。また、作家三島由紀夫氏にトレーニング指導をしたことでも知られている。2007年、国際ボディビル連盟より最高のIFBBゴールド勲章が授与された他、2009年には旭日双光章を受章。

スポーツ界における指導的立場

橋本 スポーツ界においてもやはりボディビルには果たすべき重要な役割があるのではないかと思いますが。

玉利 まず各種スポーツにおける筋力づくり、そして傷害予防という点です。各種スポーツにおいては種目ごとに独特の筋力が要求されますが、そのような場合の強化トレーニングとしての役割。また、筋力ができていないのに無理な動きをすると負担がかかり傷害がおこりやすかったりしますが、そのようなことのないように十分な筋力をつけていく上での傷害予防としての役割。そして、そうはいってもやはり怪我をしてしまったという場合においてのリハビリテーション応用としての役割などです。

 これらのことにはすべて技術と理論が伴わないといけませんが、ボディビルにはこうしたことに対応できる素地があります。また最近では、筋力強化という面だけでなく、それに筋肉を癒すという技術、つまりマッサージなどを加えてスポーツトレーナーとして役割を果たしていくという方向もあります。

橋本 なるほど。それは新しい展開ですね。それでは、最後になりますが、今後のボディビル界の目指す具体的な目標についておにうかがいできればと思います。

玉利 これは簡潔に3つに集約できます。一つは競技の場において、トップアスリートのレベルアップにより、その演技力が人々を芸術的感動にまで高める方向を導くことです。つまりただ単に筋肉の大きさだけを求めるのではない、ボディビルが競技として完成されるにしたがって人々が芸術作品を見るような感動を与えるような競技としていきたいということです。

 さらに二つ目は体協加盟を実現し、スポーツ界における筋力強化のリーダーシップをとることです。これは実現可能なはずです。体協主催によることで地方にも広く浸透していくことがより可能になっていきます。

 そして三つ目ですが、健康づくりとしてのボディビルをフィットネスの名称で普及させ、さらにそれを競技化させていくことです。競技化することで選手を登録できますし、それにより選手層が拡大していきます。ぜひともそれに努めたいです。

橋本 これからも玉利会長主導の下で日本ボディビルフィットネス連盟がさらに発展していくことを願っておりますし、楽しみにいたしております。本日はさまざまなお話をお聞かせいただき誠にありがとうございました。

玉利 こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
記事画像6
インタビュアー
橋本雄一(体育とスポーツ出版社社長)
[ 月刊ボディビルディング 2013年9月号 ]

Recommend