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〝はちみつ〟と〝ローヤルゼリー〟

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[ 月刊ボディビルディング 1973年7月号 ]
掲載日:2017.10.27
野沢 秀雄

<ハチのむさしは……>

 人間は勝手なものだ。ほかの動物たちがせっせと努力して築きあげた財産を平気な顔をして奪ってしまう。
 はちみつは,ハチが冬を過ごすために,花から花へとかけずりまわって採集した栄養物だし,ローヤルゼリーはハチのいわば母乳で,これがないと幼虫は育たない。
 ハチは,こうして苦労して集めた財産をまもるために〝針〟が与えられており,ハチの巣に近づこうとする者をチクリと攻撃するが,巧妙な人間の仕掛けにはかなわず,はちみつやローヤルゼリーを奪われてしまう。
 これでは「ハチのむさし」じゃないけれど,頭にきて,暴れまわるのは当然であろう。

<長寿村の研究>

 はちみつが甘くておいしいことは紀元前2000年のエジプト時代からわかっていた。キリストが生まれたときに,各国の偉い人たちがプレゼントに持ちよったのも,つぼに入ったはちみつだった。
 また,古くから伝わる中国の漢方でも,はちみつが病気の治療によい食品だということが認められている。
 しかし,近年になってはちみつやローヤルゼリーの人気が急に高まってきたのは,コーカサス地方の長寿村を研究した結果によるところが大きい。140歳とか160歳の老人が,日焼した顔で毎日元気に農作業や牧畜に精出している。食生活ははちみつとローヤルゼリー。それに新鮮な空気と太陽だ。以来各国の科学者たちが,スタミナと長寿の研究を開始した。

<スタミナの秘密>

 はちみつの主成分は,果糖とぶどう糖が大部分を占め,そのほか,砂糖・タンパク質・ギ酸・乳酸・りんご酸・色素・芳香物質・ゴム質・ろう質物・ミネラルを含んでいる。中でもとくに果糖は,スポーツや労働の疲労を回復するのに有効である。
 ローヤルゼリーの成分は,タンパク質・糖質・アミノ酸・脂質・ビタミン・ミネラル・有機酸など,約40種の栄養素が確認されているほか,R物質という未知の物質があり,これがスタミナに関係あると報告されている。
 また日本人研究者によって,パロチンに似たホルモン状の物質が発見され長寿とスタミナの源ではないかといわれている。
 さらに,ビタミンの一種であるパントテン酸の含有量が多く,がんに効力があるという報告もなされている。それにしても,ローヤルゼリーは神秘のベールが厚く,その研究に尽した功績で,ブテナン博士はノーベル平和賞を受けている。
 このように,ローヤルゼリーはごくわずかの微量成分で,ホルモンや薬品のような作用を示し,スタミナの強化に役立つことはたしかなようだ。

<よい商品の買い方>

 残念なことに,はちみつやローヤルゼリーに人気が出ると,ニセモノを売りつける悪徳業者があとをたたず,見分け方を知らない消費者は簡単にだまされてしまう。
 最近は技術が進歩して,果糖とぶどう糖の混合液が非常に安い値段でできるようになり,この水飴状の液体がはちみつによく似ているので,「はちみつ」といって売りつけたり,はちみつと混ぜてうすめて販売するなどということが平気で行われている。
 見分け方として,冬は果糖の結晶が沈んで白くなると教えられていたが,これさえも人工的にいくらでも操作が可能になっている。値段が高いからといって本物とは限らず,かえって高い値段をつけて売りこむ業者さえいるのでご用心。
 業界では,なんとかウソツキ商品を追放しようと規約をつくり,純粋なはちみつのみに「純粋」の表示を認め,水飴を混ぜたものには,単なる「はちみつ」または「混和はちみつ」と表示させている。信頼できる業者から「純粋はちみつ」をわけてもらうのが一番である。

<ローヤルゼリーはもっと複雑>

 ローヤルゼリーも,ほんとはそれほど高くない原価で日本に入ってくる。乾操させたり,錠剤にしたものは効力が弱まっているので,なるべく液状のドロッとしたものを手に入れたほうがよい。5~10度の冷たいところに保存しておくことがポイントである。
 インチキ商品が多いので,信頼できるメーカー品をえらび,さらに,品質保証の有無をきくとよい。ニセモノとホンモノを見分ける方法が非常にむずかしいので,薬品などと同様に,メーカーを信ずる以外にない。人工的につくったものとちがって,天然に産するものは微量の栄養素にちがいがあるものだ。
 カロリーは,はちみつ大さじ1ぱい(22グラム)で約70カロリーある。牛乳などに加えて飲むといいだろう。ローヤルゼリーは,耳かき1ぱいぐらいを毎日飲むのがふつうで,カロリーとしては5カロリー以下である。
[ 月刊ボディビルディング 1973年7月号 ]

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