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なんでもQ&Aお答えします 1973年7月号

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[ 月刊ボディビルディング 1973年7月号 ]
掲載日:2017.10.27

疲労を感じなくても継続休養は必要か

Q
 ボディビルを始めて1年になる21才の学生です。いままで週3回のトレーニングを確実に実行してきましたが,疲労らしい疲労を感じたことはありません。それでも長期的な継続休養は必要なのでしようか。(府中市・武井 厚)
A
 普通,トレーニングを熱心に続けていると,大なり小なり疲労が蓄積してくるものですそして,そのままトレーニングを続けていると過労におちいる危険性があるのです。これを防ぐために,時々トレーニングを中止して,10日間程度の継続休養をとるわけです。
 あなたの場合は,1年間も熱心にトレーニングを続けながら,一度も疲労を感じないとのことですが,まったく疲労を感じなければ休養をとる必要もないわけです。しかし,このことを言葉をかえていうならば,いまあなたの行なっているトレーニングの量が,体力に比較して軽過ぎるからだともいえます。
 体力を維持すればよいといった程度の,いわゆる健康管理としてのボディビルなら,軽過ぎるくらいでも,その目的は達せられますが,もっと積極的な体力づくりを目的としているのでしたら,ある程度,疲労感が残るぐらいのトレーニングでなければ,その目的を達することはできません。
 あなたの細かい練習内容が書いてないのでわかりませんが,重量,回数,セット数などをもう少し増やしてみてはいかがでしようか。

最上のトレーニング法

Q
 現在25才で,年令的には少し遅かったと思いますが,半年程前からボディビルを始めました。この半年間に,体重5kg,胸囲7cm,上腕囲3cm,大腿囲4cm増ということで,予想外の効果を得ることができました。
 しかし,効果が出れば出るで,さらに欲が出るもので,近頃はもっと急速に効果をあげる方法はないものかと,アレコレ手を変え品を変え,スケジュールも1カ月ごとに組み変えるなど,いろいろ工夫しています。
 でも,正直にいうと,そんな工夫をしている割には思うように効果があがらず,このところ少し焦り気味なのです。スケジュールは,4年も5年も経験を積んだ人に見てもらい,いつもよくできていると誉められるのですが,どうして予期するほどの効果が得られないのでしようか。
 もし,もっと効果的なトレーニング法があるなら教えてください。頼りにしています。(茨城・佐藤良一)
A
 半年間の経験の割には一応の効果をあげたといってよいでしょう。
 3~6カ月の経験者で,ある程度の効果を得た人の多くは,もっと急速に筋肉が発達しないものかと,あなたのようにアレコレ運動種目やスケジュールを変え過ぎたりするようです。なかには,あまりやたらに変えたために,かえって体調をくずしたり,効果を半減してしまっている人も少なくないようです。
 あなたの場合は,しっかりした経験者にスケジュールを見てもらい,1カ月ごとに変えているということなのでそれほどこのような間違いは犯していないと思います。
 とはいえ,いままでの発達状況からみて,さらにそれ以上に急速な発達を望むのは少々欲ばり過ぎです。というのは,ボディビルを始めてから,もっとも急速に発達する期間は3~6カ月ぐらいの間で,その後,発達は徐々に緩やかになり,それが3~4年間ぐらい続き,その後は,きわめて緩慢な発達を続ける,というのが一般的な傾向です。したがって,あなたの場合も,これまでの6カ月のような割合で発達させようとしても,そう簡単ではないからです。
 実際,3~4年以上の経験を有するビルダーが,上腕を僅か1cm太くするのに,1年ないしそれ以上の年月を要していることが珍しくなく,むしろ,それが普通だといっても過言ではないでしょう。要するに,ボディビルの経験が長くなればなるほど,一般的にあまり急速な発達を得ることは困難になる傾向があるということです。
 そして,もっとも効果的なトレーニング法といっても,早い話が,すべてのトレーニングは各々効果的であり。それらのトレーニングを行うにあたって,なによりも熱心に,精神を集中させて行うことが,より効果を促進させる決め手になるのです。
 したがって,経験の浅い練習者が,しばしば「最高に効果的なトレーニング法を教えて欲しい」といいますが,指導員あるいは経験豊かな人でも,特別なトレーニング法を示すことはできないのです。いずれにしても,トレーニングする人の意欲と,目的に見合ったスケジュールを忠実に実行することが効果を決定する主因なのです。魔法のようなトレーニング法はあり得ません。

何年ぐらいやればよいか

Q
 18才の高校生です。最近,ボディビルで男性的な逞しい体をつくり,あわせて力を強くしたいと思うようになりました。
 そこで教えて欲しいのは,何年ぐらいボディビルをやればコンテストに入賞できるようになれるのか,そして,何年ぐらいやれば体が落ちない(元に戻らない)ようになるかということです。(北海道 Y・Y生)
A
 コンテストに入賞するといっても素質や生活環境等の条件によって大きく左右されるので一概にはいえませんが,ミスター日本コンテスト・クラスの大会に入賞するには,条件的に相当恵まれている人でさえ,最低4~5年は必要でしよう。ごく例外的には2~3年で入賞した人もいますが,逆に10年以上の年月を費やしても,入賞できない人もたくさんいます。
 いずれにしても,そのようになるのに要する年月は,前述のように,その人の素質と環境,および努力によって異なることを重ねて申しあげておきます。
 次に,何年ぐらいやれば元に戻らないか,という質問ですが,これはきわめて単純素朴な質問であり,ボディビルをよく理解している人にしてみればナンセンスな質問だと思われるかも知れません。しかし,実際は案外多くの人が,ボディビルを始めるにあたって考える,真面目な疑問のようです。
 ボディビルを短期間行なった人がトレーニングをやめると,短期間に元に戻り,長期間熱心に続けた人は,やはり長期間にわたって徐々に筋肉が退化してきます。もちろん,トレーニングを始める前とまったく同様になるということではありませんが。いずれにしても,やめれば退化することだけは確実です。
 このような傾向は,筋肉の発達だけに限ったことではなく,スポーツ選手の競技能力や,頭の働きについても同じような傾向があるようです。
 何はともあれ,ボディビルを始めたら,かりにコンテストに入賞できようができまいが,健康を保持するためになんらかの形で長くトレーニングを続けたいものです。

均整美と運動種目

Q
わたしは,決してミスター何々というような,いわゆるコンテスト・ビルダーを目指しているわけではありません。しかし古代ギリシャの格闘競技者というか,へラクレスのような逞しく,しかも均整のとれた体になりたいという夢を持っています。
 ボディビルを始めてから1年少々になりますが,身長170cmに対し,体重70kg,胸囲最大107cm,上腕囲37cmに発達し,多少脂肪がついているとはいえ,仲間たちからよく発達したものだと羨ましがられています。
 とはいえ,いままで続けてきた初心者向きの基礎種目だけでは,わたしの夢の実現は不可能ではないかと近頃考えています。そんなに全身のバルクが増大しなくてもよいから,均整のとれた体にしたいと願っています。
 そこで,全身の筋肉を万遍なく,均整よく発達させるための効果的なトレーニング法を教えてください。年令21才。食料品店経営。(秋田県S・I)
A

 あなたは男性の体に対する審美眼が人一倍するどいようですね。確かに古代ギリシャの格闘競技者,あるいはへラクレスはいかにも運動神経のよさそうな,しかも頑強そうで均整のとれた体をしていますね。
 あのような体を目標にしているのであれば,あなたのいわれるように,基礎的な運動種目のみでは不十分です。かといって,基礎的な運動種目はあくまでもトレーニングの中心をなすもので,これをおろそかにしてはならないことはいうまでもありません。
 全身の筋肉を万遍なく発達させたいといっても,かりに全身の筋肉の各部分に新たに1種目ずつ加えるとすればそれだけで20~30種目にもなってしまい,下手をすると,かえってどの筋肉部位も思うように発達が得られない,ということがないとも限りません。
 このように運動種目が増え,全身を多角的に鍛えようとするならば,少なくとも分割法(上体と下体,体前面と後面という具合に鍛練部位を分けて,1日2回,あるいは1日ごとに鍛練部位を変えて行う方法)をとらない限り全部を1日で消化することは困難になってきます。
 もう一つの方法としては,発達の遅れている部分の鍛練を優先的に行う方法があります。この場合,全身を鏡に写して見るとか,見えない部分は誰かに見てもらうか写真をとってもらってバランスのとれていない部分,発達の遅れている部分を探して,そこを優先的に鍛えるわけです。
 このような方法,すなわち,弱点を探して,そこに重点を置いてトレーニングする方法は,欧米の一流ビルダーにおいても常識的な方法であり,従来からの運動種目のうちで必要と思われるものは残し,さし当って重要でないと思われるものは省略し,弱点の補強に必要な種目を新しく加えるようにします。あなたの場合も,このあたりから始めるのが賢明だと思います。
 また,この優先法と,前述の分割法を併用する方法もあります。他にもいろいろ細かい注意事項があるかと思いますが,身近に経験者もおられることでしようから,よく相談してトレーニングを工夫してみてください。

指導員になりたいが

Q
 ボディビルを始めてから3年半になる21才のサラリーマンです。ボディビルを知らなかった,かつての私は,人並以下の体力と健康しか持ち合わせていませんでした。しかし,ボディビルを始めてからは,ぐんぐん体重が増え,いまでは体力と健康に絶対的な自信を持てるようになりました。これまでになれたのは,私を指導してくれたジムの会長さん,そして,周囲の仲間たちのお陰だと,心から感謝しています。ところで私は,こんなに効果のすぐれたボディビルを,本当によく理解している人がまだまだ少ないことを思うにつけ,なんとか多くの人に教えてあげたいと考えるようになりました。もちろん,仕事と指導員のお手伝いを両立させるのも,そう簡単なことではないし,また,指導員になろうと思ったところで,どうしたらなれるのかわかりません。
 そこで,お聞きしたいのですが,指導員を養成する機関はないものでしょうか。そして,指導員になった場合,どこか雇ってくれるところがあるかどうか教えてください。(東京S・T)
A

 あなたと同じような考えを持っている人はたくさんいると思います。一つでも多くのジムができ,一人でも多くの有能な指導員が増えることが,ボディビルの普及につながることはいうまでもありません。
 ところが,現状においては,営業的にみるとジム経営はそう大きな収益をあげることが期待できず,多くのジム経営者は,ボディビルを1人でも多くの人にやらせてあげたい,自分自身の健康と体力づくりをする場としてジムを持ちたい,と考え,利益追求は二の次にしている人が多いといっても過言ではありません。
 したがって,全国的にジムの数も徐々に増えてはいますが,急激に増えるとも考えられません。

 そんなわけで,指導員になりたい人は多くても,その希望が実現する人はきわめて幸運だといってよいほど,指導員への道は「狭き門」になっているというのが実状です。
 ボディビル関係者の間でも,以前から優秀な指導員の養成は必須の課題とされ,その方法などについて議論されてきました。しかし,まえに述べたように,ジム経営が決して多大の利益に結びつき難いこともあり,いくら指導員を養成したところで,職場が少なすぎては職業として成り立たず,その他いろいろの問題もあって現在まで実現できなかったわけです。
 とはいえ,最近の傾向として「やるスポーツ」が振興しつつあり,ボディビル愛好者の増加も期待できますのでボディビル関係団体も大同団結して,一段とボディビルの普及活動に力を入れると同時に,本格的な指導員養成機関設立の必要性にせまられています。
 しかし,まだ実際には設立されていないので,もし周囲から指導員になって欲しいという依頼があり,あなた自身の努力で可能性が開けそうなら指導員になるのが現実的です。
 ただし,中途半端な気持で,単に憧れや金もうけの手段として指導員への道を選ぶのはやめるべきです。それは技術的にも人間的にも会員たちから信頼されるはずがないからです。あなたはそうではないと思いますが……。


(解答・日本ボディビルダーズ連盟書記長 福田 弘)
[ 月刊ボディビルディング 1973年7月号 ]

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