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なんでもQ&Aお答えします 1973年11月号

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[ 月刊ボディビルディング 1973年11月号 ]
掲載日:2017.11.23

初心者トレーニングは筋力重視か、筋肥大重視か?

Q
 私はボディビルを始めてからまだ3カ月ですが,筋肉をつけ,同時に筋力をつけるにはどうしたらよいのでしょうか。サイズを大きくするトレーニングと,筋力をつけるトレーニングをどのような割合で実施したらよいのか詳しくお教えください。(和島市・水野)
A
 筋力を向上させるトレーニングは,同時にサイズを大きくする効果ももたらしますが,パンプ・アップを主とする筋肥大のためのトレーニングの方が,前者よりもサイズは早く大きくなり易いといえます。言い変えれば,パワーリフティングのトレーニングとマッスル(筋肉)トレーニングとではどちらが早く体が発達するかの問題です。当然,マッスル・トレーニングの方が効果があるわけですが,大きく考えれば,パワーのトレーニングでも筋肥大はするのですから,どちらも50歩,100歩で,効果という点でそんなに大きな差はありません。
 しかし,あなたはパワーリフテイングのトレーニングと,マッスル・トレーニングを合わせた方法を質問されているので,どちらも50歩,100歩などというアイマイな解答では満足されないでしょう。そんな中途半端なことではなく,どうしたら一番効率良く,筋力や,サイズや,バルクや,カットが同時に得られるかということだと思います。
 パワーリフティングの選手たちは,コンテスト・ビルダーよりも筋力は強いが,プロポーションという点では劣っています。コンテスト・ビルダーたちからみれば,まったくその逆のことがいえます。すなわち,一般的にリフターはプロポーションに欠点があり,ビルダーは筋力に欠点があるのです。しかし,一流ビルダーの中にはこの両方を兼ね備えた人も多数おりますが,それを得るまでには長い年月と努力があったのです。
 ボディビル・ジムなどでよく見かけることですが,先輩たちがスーパー・セットやチーティングをしていると,入会してまだ一週間くらいしかたっていないのに,自分に与えられたスケジュールを捨てて,先輩たちのマネをする人がいます。
 また,誰かが100kgぐらいのスクワットを行なっていると,まだやっと1~2回くらいしかできないのに100kgを担ぐ人がいたり,50kgのベンチ・プレスがやっとなのに,ラタラル・レイズやディップスで大胸筋のトレーニングに夢中の人もいます。しっかり基礎ができていないうちに,ただ効果をあせって先輩たちのマネをしても決して良い効果は得られません。
 では,最も効果的と思われる方法をお教えしましょう。
 まず初心者コースを大切に考えて,基礎体力を完全に身につけるまではスケジュールを変えないことだと思います。ベンチ・プレスやスクワット等はセット間休憩を3分間くらいにして,筋力重視のトレーニングをすること。それ以外のアーム・カールやシット・アップ等は1分間休憩のトレーニングにすることです。
 この練習を積み重ねていって,ベンチ・プレスが80kg,スクワットが130kgぐらいが完全に1回できるようになるまではスケジュールを変えないつもりでトレーニングするのです。他のスポーツ経験者で,いきなりこれが可能であればウェイト・トレーニングに馴れることを主眼にして,それほど初心者スケジュールにこだわらなくて結構です。
 この目標に達することができたならば,次はパワー・アップのトレーニングに留意しながらスケジュールを作成していってください。あなたの望む力と美を両立させるためのトレーニングの基礎的な1つの方法として参考にしてください。

コンセントレーションの効果は?

Q
 よく筋肉および筋力の発達には意識の集中力が大切だといわれます。しかし,集中力がなければ発達しないものでしょうか?私はそうは思いません。ただ漠然とトレーニングしているのと比べて,より効果的だということだと思います。
 たいへん無理な質問ですが,意識をする,しないで,どのくらい効果に差があるものでしょうか。よろしくお願いします。(神戸市・田村)
A
 これは非常に難しいご質問です。意識の集中(コンセントレーション)は,確かにボディビルにとって大変重要なことです。でも,あなたのおっしゃるように,意識しなくても十分発達します。農耕馬とサラブレットの違いは馬自身が意識してつくった体格ではないように,自ずと機能に合った発達体形なのですから,別に意識,無意識には関係のないことです。ここで一言つけ加えたいことは,重量負荷を与えるボディビル運動においては,まったく意識しないで運動することはありません。鍛えようとしている部分に必ずいくらかは意識が働いているはずです。
 一流のパワーリフターやマッスル・ビルダーは,非常にコンセントレーションがうまいことは事実です。パワーリフティングの試合でも,いつ試技を終わったかわからないような感じの人に一流の人はいません。
 マッスル・ビルダーでは,これまたいま自分が鍛えている部分を鏡に映しにらみつけるようにしながらトレーニングしています。ちょっと見ると,自分自身にみとれているようにも見えますが,本人にはそんなつもりはまったく無いのですから,他人がどう見ようともお構いなしにやっています。
 コンセントレーションの極端な例はジムの仲間どうしの会話までが邪魔に感じて,耳に綿をつめてトレーニングする人がいるくらいです。もっと進んで,強い黒い色のサングラスまでかけて練習をする人がいると聞きます。さらにもう一歩進むと,ついにはジムではトレーニングができなくなってしまい,自分自分のホーム・ジムをつくるところまでたどり着くのです。(ホーム・ジムを持っている人を非難しているのではありません。中にはそんな極端な人もいるという例をあげたまでです)
 ここまでくれば,どこからどこまでがアブノーマルか私にはわかりませんが,これくらいコンセントレーションを深く考える人もいるのです。私はあなたのご質問のコンセントレーションの差については,それほど大きいものだとは思いませんが,ある程度影響があるとは思います。
 集中力とは精神力と同じようなものです。なんとしてもこの腕をあと2cm太くするんだ,と思ってトレーニングする人と,毎日の惰性でトレーニングしている人とでは当然差がつくことでしょう。しかし,一歩間違うと,この集中力がとんでもなく発展していって集中力という言葉が〝神経質〟と変わってしまうようでは逆にマイナスになるばかりです。
 本来,トレーニングのコンセントレーションとは,アーム・カール等のときに,「いま自分は上腕二頭筋のトレーニングをしているのだ」と,自分自身にいい聞かせることです。この意味以上に深く考えるのも難しいことです。

胃の具合が良くならない

Q
 毎月「ボディビルディング」誌を楽しく見せていただいています。私は小さいときから胃腸が弱く,現在も医者に行っています。この春,大学に入り頑張っていますが,あいも変わらず胃腸の悪さに悩まされています。
 4カ月前ですが,大学の近くにへルス・センターがありましたので思い切って入会しました。途中1カ月間ばかり都合で休みましたが,正味3カ月練習しました。
 入会前の体位は身長169cm,体重57kg,胸囲85cmでしたが,この3カ月で体重が5kg,胸囲が4cm増え,体の発達という面では満足しています。ただ胃腸の方は一向に良くならず,このまま続けていけばなおるものかどうか悩んでいます。
 なお,いつも食べ物が胃腸の中に残っているようで重くるしく,スカッとした空腹や食欲などは感じたことがありません。練習後もみんなのように腹がへらず,仕方なく無理に食べているといった状態です。病院でレントゲン検査も受けましたが,胃下垂と腸が少し悪い程度であるから運動はさしつかえないといわれました。
 ボディビルで胃腸を丈夫にし,健康な体になれるようアドバイスをお願いします。(世田谷区 角 博正)
A
 あなたは体重が3カ月で5kgも増加したというのに,相変らず胃の調子が悪くて悩んでいるとのことですが,先ず知っておいていただきたいことは,体格の発達と平行して,胃腸の調子が必ず良くなるとは限らないということです。
 胃下垂は病気であって病気ではないと良くいわれます。統計上では日本人の3割は胃下垂だといわれています。自分では胃下垂ではないと思っている人の中にも胃下垂の人は多いのです。ですから胃下垂の人でもトレーニングによって体格は発達するのです。そしてあなたもこのままトレーニングを続けていけば,いつかは胃のことなど忘れてしまうでしょう。
 また,レントゲンの結果,胃下垂のほかに腸が少し悪いとのことですが,多分,胃下垂とともに胃の筋肉の弛緩(ゆるむこと)による軽い胃アトニー症かも知れません。胃アトニー症とは胃から腸への排出時間が長くなり,食事を終わってからいつまでも上腹部に重圧感や膨張感を感じて食欲が出ないのです。
 この原因は,体質的に胃が下っていて,そのような人は胃ばかりでなく,内臓全体が多少下がっていますが,そういった胃の弱いタイプの人が不摂生や過労の場合,胃下垂から胃アトニー症へとなるのです。軽い胃アトニー症は前記のような自覚症状だけでまだとくに病気というほどのものでもありませんが,重症になれば胃の中に食べたものが長く残り,栄養不良や胃拡張になってしまいます。
 もうこうなってからではいくらトレーニングをしてもなおりません。俗にボディビルは胃を治すといわれますが重症になってしまってからではボディビルより手術が必要です。バーベルではなくメスでなくてはなおりません。胃ガンがボディビルで治らないのと同じことです。
 幸いあなたは栄養不良にもなっていない軽症なので,トレーニングによって体位向上したのです。ただ,それと同じペースで胃の方は治らなかっただけです。医者も別に心配ないのでスポーツを勧めているのです。あなたの胃はもう半分治ったも同じです。このままトレーニングを続けていってください。そして,オーバー・ワークに気をつければ大丈夫です。
 もう1つ重要なことは,神経質に胃のことをいつもクヨクヨ悩んだり,考えたりしないことです。でないと治るのに時間がかかってしまいます。
 神経質の人に胃弱が多く,ビルダーにはどういうわけか神経質の人が多くて,ベテラン・ビルダーであっても,中には胃の悪い人がいるのです。逞しい肉体を誇るビルダーに胃弱で悩んでいるなどとは,とうてい一般の人には信じられないことでしょう。あなたもきょう,あすに死ぬ病気でもないのですから,悩まないで大らかな気分でトレーニングを続けてください。

無気力なときの練習法は?

Q
 私は週6日,規則正しく練習していますが,ときにはどうしても気分がのらない日があります。そのようなときでも,生活のリズムを崩さないで練習した方が良いのでしょうか? シュワルツェネガーはそんなときでも必ず練習をすると書いてありましたのでおたずねします。
 私は年令20才,ボディビル歴3年で身長174cm,体重70kg,胸囲104cmです。(仙台市・佐藤)
A
 あなたは立派な体格の方ですね。おそらくコンテストを目指して毎日トレーニングに励んでおられることと思います。
 ご質問についてまず結論から申しましょう。上級者でも自分で気力が無いと感じたときはトレーニングを休むのが良いことです。気力が無いのは,精神的,肉体的に疲労していることの自覚症状なのです。オーバー・ワークを避けるには,いつも自分の体調に気をつけていなければいけません。トレーニングを休んだ翌日も,なお気力が無いようでしたら,まとめて2~3日休んだ方が良いでしょう。
 しかし,あまり長く休むと今度は逆にトレーニング自体が苦痛になってしまいますから,よほどの場合以外は休養は3日以内にとどめて,またトレーニングを続けてください。いいかえれば,2~3日ぐらいの休養は,ときどき疲れを感じたらその都度自由にとるようにすることが,ボディビルを長続きさせる秘談ともいえるのではないかと思います。
 2~3日休んだために,トレーニング・スケジュールがメチャメチャになってしまい,また始めから作り変える様な作成の仕方は感心しません。それには最初にスケジュールを作成するときに,ある程度弾力的なものにしておくことが必要です。
 また,トレーニングの途中で根気がなくなったときにも,思い切ってそのあとの練習を中止することもときには必要です。
 なんか消極的なことばかりいっているようで,いま流行の「グウタラなんとか」のようだと思った方もあるでしょう。しかし,このように疲労を感じたときはには直ぐ休み,逆に気力・体力の充実しているときには,計画上のノルマ以上のトレーニングをするのも1つの方法です。この不規則トレーニングも1つのリズムといえばリズムでしょうから,これであなたはいままでよりもずっと楽に自由に効果的なトレーニングができると思います。

体毛とオリーブ油について

Q
 ことしの夏,始めてコンテストを見たのですが,そのとき不思議に感じたことは,ほとんどの選手に体毛が無いことです。友だちに質問したところ,「あれは剃ったんだろう」とのことでしたが,体毛があまり目立つのは審査のマイナスになるのでしょうか?
 次に日焼けした選手でいっぱいのコンテストでしたが,オリーブ・オイルの使用は禁じられているとのことでした。それはどうしてでしょうか?
(浜松 S・Y)
A
 体毛がマイナスの要因になるかどうかは非常にむずかしい問題ですが,現実の問題として,とくに体毛の濃い人の場合,いくらいい脚をしていても,濃い体毛のためにせっかくのデフィニションがかくれてしまうということが考えられます。
それがために,実際にコンテストに出場する選手たちに聞いてみると,とくに濃い人は剃っているようです。
 私も体毛が濃い方で,始めてコンテストに出たときは,何も知らずにそのまま出場しましたところ,司会者から「胸毛で勝負」などとひやかされ,気がついて回りの選手を見て,始めてみんなが剃って出場していることを知りました。
 次に,オリーブ油の禁止理由は,コンテストをプール・サイドで行うような場合,プールの規則として禁じているところもあり,また,屋内会場では舞台をオイルで汚すおそれがあるからです。それ以外にも,オイルを使用すると,あまりにギンギラギンになりすぎ,見物する側にとっては嫌味になる場合もあるのです。
 嫌味を感じない程度で,回りのものも汚さず,人体にも害にならない小麦色のボディ・カラーでも販売されれば良いと私は思うのですが。
 ビルダーが日光浴に使う時間やエネルギーはたいへんなものです。そのような時間をトレーニングや自分のもっと有意義な時間に使って,合理的にボディ・カラーを使用するのもスピード時代の今日では1つの方法ではないかと思います。
 もちろん,日光浴が健康に良いことはいうまでもありませんが,社会人ビルダーにとって,夏の休日は皮膚を焼く日光浴のためにあって,自分のためにないようなものです。これではのんびり女性とデートもできないことでしょう。
 社会人がコンテストに出るだけでも大へんなのに,そのうえ日焼けしていないのが理由で多少でも審査上マイナスになるのは残念なことです。そのためにもボディ・カラーみたいなものがあれば便利なのではないでしょうか。

日本人と外人の体格差

Q
 毎月ボディビル誌を愛読しております。そして毎月思うことですが,雑誌を見るたびに日本人と外人とは体格,体型に数段の差があるような気がします。この差はトレーニングでしょうか,それとも先天的なものでしょうか。(M・S)
A
 黄色人種と欧米人との体格差は,ビルダーに限らず一般人を比較してもわかるように,先天的に違うところがあります。
 日本人も近年になって相当体位は向上しましたが,プロポーションの点でまだまだ完全に同格とまではいっていません。そのへんがビルダーになってからも影響してくるのだと思います。プロポーション以外に,筋肉の発達度という点でも違う感じがします。そう感じられる例をあげるとなお判かり易いと思います。
 以前,私のところに練習に来た混血(フランスとの)の19才の青年は,トレーニングを開始してから約1年で軽く10kg以上も体重が増加し,そのうえ余分な脂肪もなく,プロポーションも良く,会員のすべてが驚くような発達ぶりでした。
 彼と同じ時期に入会した人たちが,なんとか彼に追いつこうと,どんなに努力しても追いつけず,彼自身も,自分の体が他の人よりも早く発達することに驚いていたくらいです。彼は入会3カ月後くらいから意欲的にトレーニングをして,そのために以前は50kgしかなかった体重が65kgにもなったのです。とくに栄養に気をつけたこともなく,3食とも外食でした。
 しかし,皮肉にも彼の職業がファッションモデルだったので,洋服のサイズが合わなくなってついに失業してしまいました。その後彼はジムに来なくなってしまいましたが,もし続けていれば,いまごろは立派なビルダーになっていたことでしょう。
 混血であっても,日本人とこんなに差があるのですから,完全な白人とはやはりどうしようもない差があるような気がします。
 ただ,外人全部が発達が早いというのでもなく,やはり私のところの会員で,ドイツ人の大学生はいくらトレーニングしても少しも体重が増えずに悩んでいました。
 ここでもう一度考えてみると,素質のある外人は同じトレーニングをしても日本人より発達が早いのではないかということです。技術的な面ではアメリカだってヨーロッパだって日本と少しも変わっていないのですから,考えられるのは,人種的発達差としか考えられません。しかし,最近における日本人ビルダーの体格を見ると,このようなハンディキャップがあるにもかかわらず,これを努力でカバーしているような気がします。
 そして,まじめで努力をいとわない日本人の性格が,きっと近い将来,体格的にも社会的にもボディビル全体のレベルを高くすることは間違いないと思います。

(解答は五反田ボディビル・センター 位田達穂コーチ)
[ 月刊ボディビルディング 1973年11月号 ]

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