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〝体力測定に思う〟

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[ 月刊ボディビルディング 1973年12月号 ]
掲載日:2017.10.28
グランプリ・トレイニング・センター
会長 滝沢新一
 去る10月10日の体育の日は,各地で体育に因んだ運動会や体力づくり等の催し物が数多く行われていたようである。私もあるデパートが企画した,日常あまり運動をすることのない一般社会人を対象とした,体力測定と体力づくりの相談・指導を担当することになった。
 当初,このような体力測定はせいぜい半日か1日ぐらいで終える場合が多いので,そんなごく普通の体力測定だけを行うものと考えていたところ,5日間にわたる日数と,約70坪というスペースを使って行うもので,従来デパートなどが行なっていたありきたりの名目だけの催し物とは違った本格的なものであることがわかった。
 準備も慎重に行い,デパートの係の人や,この企画を一緒に担当した私の知人である高校,大学の体育の先生などと何回も打ち合わせを行なった。その結果,これから述べるような内容にまとまった。
 期間中デパート側のPRは「トレイニング・ルーム開設! 年1回の体力測定に参加しましよう」というタイトルで,指導は大学の助教授,講師,看護婦,並びに日本体育協会のスポーツ・トレイナー等によって行われることが付記された。そして,次のような順序にしたがって,体力測定,体力づくりのための相談が実施された。
 このような内容で,期間中,多くの人が体力測定を受けた。意外だったのは,女性の参加者が多かったことである。これは,会場がデパートという女性になじみの深いところだったことにもよるのであろう。
 測定結果は,やはり運動不足のためか,若い人でも中には自分の年令以上の測定結果(体力年令)が出てガッカリしている人や,中年の女性の中には測定中にすでにかなりの疲労状態になってしまった人もいた。そしてほとんどの人が自分の体力不足を認識するとともに,体力づくりの必要性を身をもって感じたようである。
 体力測定の方法については,今回は体力測定プラス体力づくりの相談と指導ということに重点を置いていたうえに,限られた時間内にできるだけ多くの人に参加してもらうようにしたために,上記の測定だけしかできなかったのが少し残念であった。
 体力測定にはこのほかいろいろの方法があり,たんに体力測定のみを目的として実施するのであれば,さらに何種目かを加えて広い範囲から測定することが望ましいが,思えば,完全な体力測定を行うことは不可能であるからこれも仕方のないことかも知れない。
では次に,体力測定に採用した各種目のやり方と結果について簡単に記してみたい。(図1参照)
[図1] 体力測定の順序と方法

[図1] 体力測定の順序と方法

<反復横とび>
 床に引かれた3本の線の間を,一定のステップで20秒間に何回反復できるかによって敏捷性をみるわけだが,この種目では,男性の方が女性よるはるかに良い結果が出ていた。しかし,男性でも30才を越すと20才台の女性よりも劣る人が多くみられた。女性の場合は,若い人と年配の人の差はあまりみられなかったが,中年の男性と同様に足の運びを間違える人が多いのが目についた。

<閉眠片足立ち>
 合図と同時に片足を床からあげ,両腕を水平に開き,目を閉じて何秒間バランスをくずさずに立っていられるかというもので,これは調整力(平衡性)をみる種目である。この種目も,男性の方が長い間ふらつかないで立っていられる人が多かったが,男性,女性とも,中年以上になると極端に短くなる人が多かった。

<握カ>
 これは一般にもよく行われている種目だが,男性,女性とも年令による差はあまりなかった。中には,若い人より良い結果を出した中年の男性がかなりいたのにはおどろかされた。

<垂直とび>
 これは瞬発力をみるもので,各人の身長に合わせてセットされた測定器に最大の脚力を出してとび上がるのであるが,この種目は若い男性が圧倒的にすぐれており,中には60cm以上もとび上がる人もいた。

<その場かけ足>
 一定のリズムに合わせて,その場で2分間足踏みを行い,1分間の休息をとったところで脈博数をはかる。つまり,1分間の休息の間にどのくらい回復したかを測定するものである。この種目は比較的運動量が少ないためか,若い人の場合,日頃運動をしている人と,していない人の間にあまり差がみられなかった。ただ,男女とも,30才を過ぎた人の場合は回復が非常に遅く持久性,並びに心肺機能の低下していることがよくあらわれていた。


   ◇◇◇


 以上のようにして体力測定をすませた人は,各担当指導者から測定結果に基づいて,今後の日常生活における体力づくりの必要性,方法などをアドバイスされ,トレイニング・ルームにおいて各種器具の使用方法,効果,その人に必要な器具の選定などについての指導を受けるのである。
 男性の中にはウェイト・トレイニングに興味を持つ人もあり,バーベルによる運動を指導したのであるが,ほとんどの人がウェイト・トレイニングそのものを全く知らず,トレイニング・センターなどで練習している人以外の一般の人にとって,ウェイト・トレイニングはまだまだなじみの薄い運動であると感じた。
 また,この催し物では各種のトレイニング器具も陳列されていたが,とくに家庭で比較的簡単にできる器具が数多く開発されていたのが目についた。中にはあまり効果のあがりそうもないものや,すぐに故障したり,取扱い次第では危険性もあると思われるようなものもあった。この種の器具を購入する際は,実際に使用してみて,果たして目的にかなう器具であるかどうか,充分検討することが望ましい。
 参加者の中にはさっそく器具などの購入を希望する人もいたりして,なかなか活気にあふれた5日間であった。体力測定などに日頃あまり縁のない人々にとって,結果はともかく,このような催し物に参加したということに充分満足していたようである。このことがわれわれ関係者にとっては大きな喜びであった。

ウェイト・トレイニング練習者と体力測定

 体力の非常にすぐれている人というと,各種のスポーツ選手などがすぐに頭に浮ぶが,われわれウェイト・トレイニング練習者は,体力づくりの原点からスタートして練習をしているので体力に関することでは昔からいろいろな記録やエピソードも数多くあるようだが,ここでは,そのような,その場限りの記録をつくることではなく,日頃のトレイニング種目を応用した体力測定の実施を提案したい。
 たとえば,50kgのべンチ・プレスを一定の時間内(30秒間程度)で何回できるか。また行なったあとの脈博などを記録しておくのである。そして,これを定期的に行えば,筋力や持久力などの向上や低下などを数値としてはっきりつかむことができる。
 こんなふうに,他の種目についてもいろいろと工夫して行えば,いままで気づかなかった自分の弱点などがわかり,以後のトレイニングのすすめ方においてもプラスになると思われるのでぜひ実行してもらいたい。
 とかくウェイト・トレイニングは筋肉をつくり,筋力を強くするだけの運動と思われがちだが,体力とはそれだけのことだろうか? 持久力・平衡性・敏捷性など,全身的・総合的にバランスがとれていなければ,真に体力があるとはいえないし,筋骨逞しい男がちょっとしたことで風邪をひいたり,下痢で苦しんでいる図など,ユーモラスではあっても,決して好ましいことではない。ビクともしない強い内臓器官と,総合的な体力機能をきたえることをおこたってはならないと思うのである。
[ 月刊ボディビルディング 1973年12月号 ]

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