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トレーニングスケジュール ~ その作り方と考え方⑤ ~

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月刊ボディビルディング1969年5月号
掲載日:2018.01.27
吉 田 実(第一ボディビル・センター)

スーパー・セッツ

 今月号では、中・上級者の用いるトレーニング・システムのなかにあっても、最も効果の大きなもののひとつに数えられている、スーパー・セッツ・システムを解説しましょう。

 スーパー・セッツ・システムとは、2つの運動種目を組み合わせて、まず1つの種目の運動を行ない、その直後に全く休まずに、残る種目を続けて終らせてから休憩をとるというトレーニング・システムです。

 つまり、異なった2種目を一対のものと考えて、通常の2セット分の運動量を、セット間のインターバルなしに連続して行なう方法です。

このスーパー・セッツ・システムは1つ1つの種目を単独で行なう普通のセット・システムに較べて、鍛えようとする筋肉に、極めて強い刺激を与えると同時に、その部分により多くの血液を集めて、最大限のパンプ・アップを促進する卓効のあるトレーニング法として、全世界の専門ビルダーに愛用されているシステムです。

 この種目の組み合わせ方には、大別して3通りの方法があります。

 その第一は、同一の筋群を鍛えるものではあるが、運動方法あるいは主に用いる筋肉が異なる2種目を一組にする方法です。たとえば、ベンチ・プレスとベント・アーム・ラタラル、あるいは、フレンチ・プレスとスロー・カール、バック・プレスとスタンディング・ローなどの組み合わせがこの部類に属します。これが、最もスタンダードなやり方といえましょう。

 第二には、2つの運動種目がやはり同一の筋群を鍛えるもので、しかも、運動方法あるいは主に用いる筋肉が同じかまたは酷似している場合です。べンチ・プレスとダンベル・べンチ・プ
レス、フレンチ・プレスとワンハンド・フレンチ・プレス、あるいはバック・プレスとダンベル・プレスなどの組み合わせがこれになります。この方法は、さきのスタンダードなものに較べると、練習がツキイことは言うまでもありません。

 第三には、異なった筋群を鍛える2種目を組み合わせる方法です。ベンチ・プレスとチン・ビハインド・ネック、バック・プレスとフレンチ・プレス、ラット・マシーンとバー・ディップスなどがこれに当てはまります。

 ただし、異なった筋群を鍛えるものといっても、近接した筋群でなければいけません。例えば、胸と大腿、肩と腹などの組み合わせは効果的ではありません。

 スーパー・セッツ・システムは、セット間の休憩をせずに2種目続けてトレーニングすることによって、筋肉に強い刺激とパンプ・アップを与えることが大きな目的ですから、その目的から外れるような方法を用いたのでは、せっかくのスーパー・セッツ法も何をやったのかわからなくなります。

 それから、このスーパー・セッツ・システムから飛躍させて、工夫しだいでは同一筋群または近接筋群を鍛える4~6種目を1グループにして、途中でまったく休まず行なうのは無理でしょうから、休憩時間に長短の変化をつけた、サイクル・トレーニング・システムのバリエーションも案出できると思いますが、その方法についてはここでは割愛します。

パンプ・アップと筋肉発達

 さきほど、スーパー・セッツ・システムとは、セット間の休憩をせずに2種目続けてトレーニングすることによって、筋肉に強い刺激とパンプ・アップを与えて、より大きな発達を促す方法であると述べましたが、はたしてパンプ・アップは、筋肉発達に直接大きな関連をもつものなのでしょうか?

 パンプ・アップとは、運動することによって筋細胞内に生成された乳酸などの疲労物質を科学変化させるのに必要とされる酸素を運んだり、あるいは筋組織に栄養分を補給するために、激しく使われた筋肉に血液が多く動員される結果として血管、特に毛細血管が一時的に膨張している状態をいいます。

 人間の体とは良くできたもので、必要とされるものは発達し、そうでないものは退化する傾向をもっておりますが、本当に鍛え込まれたスポーツマンの毛細血管の数は、普通人のそれよりも40~50%も多くなっています。これは、運動時にはその運動の強度と継続時間により、平常の数倍から数十倍のガス交換が要求されるので、その必要に応じて、長い年月のトレーニング期間中に毛細血管が増えたものです。

 そうしてみると、体質などにより一概にはいえませんが、ビルダーも初心者よりは熟練者のほうがパンプ・アップし易いのは当然のことと言えます。

 このパンプ・アップと、筋線維の肥大すなわち筋肉発達の過程とには、どこかに接点があるのでしょうが、現在の生理学界においては、パンプ・アップが筋肉発達に必要不可欠のものなのか、あるいは不可欠とは言わないまでも密接な関係を持つものなのか、それとも、この両者は全く関係のないものなのか、そのいずれともはっきりと解明されてはおりません。

 だが、世界のボディビル界の多くの人達は、パンプ・アップが筋肉発達に有効なものであると信じているようです。特にワイダー・システムでは、このパンプ・アップを非常に重要視している、というよりもむしろパンプ・アップをトレーニングの基礎理論にしているように見受けられます。
記事画像1

スーパー・セッツ・システムによるトレーニング・スケジュールの1例

記事画像2
 以上を応じてセット数を増減し隔日に行なう。練習量が多くて無理だと思う人は*印の種目を省略する。なお、組み合わせた2種目を各1セットずつ、通常の2セット分の運動量を1スーパー・セットと呼ぶ。
 これと対照的な考え方が、AAUミスター・アメリカのボブ・ガイダが用いて世に広く知られたP・H・A(ペリフェラル・ハート・アクション)システムです。このシステムについては、後日詳しく解説するつもりで居りますので、ここでは簡単にその方法のみを説明することにします。

 異なった筋群を鍛える5~6種目を1グループにして、最初の種目の運動を行なったら、セット間の休みをとらずに次の種目に移り、また同様にして次から次の種目へと、途中まったく休憩せずに連続して、サイクルをまわるように、各人の体力および目的に応じて、3~5周繰り返す方法です。

 セット間の休みをとらずに次の種目に移るところは、前述のスーパー・セッツ・システムと似ていますが、スーパー・セッツでは、同一あるいは近接の筋群の2種目を組み合わせて、その部分に血液を長く留めておきます。

 それに反して、このP・H・Aシステムでは、異なった筋群の運動種目を組み合わせることによって、血液を1カ所に停滞させずに、常に体中を大きく循環させ、パンプ・アップさせないものです。このシステムを採用して効果をあげたビルダーは、ボブ・ガイダ1人にとどまらず、世界の一流ビルダーの中にも数々の実例が報告されています。

 パンプ・アップと筋肉発達の関係は表面では簡単な問題のように見えますが、実は諸々の疑問が内在しており、私自身も、パンプ・アップ法を支持する陣営に味方して良いものかどうかと、態度を保留している次第です。

 しかし、パンプ・アップが筋肉発達にどれほど寄与するものなのか、あるいは、まったく関連のないものなのかが解明されていないということが、そのまま、スーパー・セッツ・システムのトレーニング法としての価値を低下させることには繋がりません。

 それは、ちょうど、ニンニクや朝鮮人参が、スタミナをつける食べものだと古来から知られてきたが、これほど学問の進んだ今日においても、まだそれに含まれる人類の未知の成分がありあるいは成分は判っていても、それがどんな働きをするものなのかが判明していないものも少なくないが、依然としてスタミナ食として独自の立場を保ち、その名声が衰えないのと同様です。
月刊ボディビルディング1969年5月号

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