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メキシコ・オリンピック大会
重量あげ競技結果報告

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月刊ボディビルディング1968年12月号
掲載日:2018.02.06
記事画像1
 インスルへンデス劇場で行われたメキシコ大会重量あげ競技は,大きな番狂せもなく,記録的にもやや低調であった。記録で目立ったのはミドル級のクレンツォフのジャーク187.5kgと,
バンタム級のナシリのジャーク150kg,及びミドル・へビー級のカンガスニエミのスナッチ158kgの各々の世界新記録であった。それでは各クラスの結果を大ざっばに記してみましょう。

●バンタム級

 混戦を予想されたこのクラスは優勝候補の一角チェチン,一ノ関両者の不調により優勝争いはナシリと,フェルディの一騎打ちになった。リンピック初参加のチェチンの不調は兎も角一ノ関選手の不調さは特に目に付いた。最初のプレスでは110kgの好スタートを切り,メダルは確実にいけると思ったのも束の間,スナッチでは3回目に107.5kgに成功,危うくゼロ敗を
まぬがれ,ジャークでは,いつも軽くあげている137.5kgをクリーンで失敗する有様。これは風邪をひいて熱を出したこと,同時に混戦というなかで起った心理的動揺も不調の原因になっているのではないかと思われる。
 不調両者の敗退により銅メダルを拾ったのはトレビッキであったが,逆に惜しいところで優勝を逃がしたのは,フェルディである。今度こそは優勝をと心に期していた彼は体重差逆転負けで,又もやくやし涙を呑まされた。だがフェルディは立派である。仕事中右手の末節骨を1本失い,もう1本の指は自由に動かせられなく,その握力は普通人と同程度か,それ以下でしかない。しかしそれでも世界記録を保持し国際競技会では常に好成績を収めている。
 そのフェルディに逆点勝ちしたナシリは,23才,身長148cm,体重56kgのミニマンだが,その足腰の強さは抜群220kg前後のスクワットを行なう。自己の体重の約4倍である。ジャーク150kgの驚異的世界新記録を樹立し,トータル367.5kgの世界タイ記録をマークしたが,彼の実力はそれ以上であり,370~375kgは可能と思われ,バンタム級はここしばらくナシリの王座は
くずれそうにない。

●フェザー級

 三宅兄弟のオリンピック重量あげ史上初の「兄弟メダリスト」が誕生し,予想通り金,銅を獲得したが,兄選手は予想を少々下回る記録に終った。しかし実力からみる400kgと以上は絶対出来る筈であり,次期ミュンへン大会で405~410kgを成し遂げ,重量あげ初のオリンピック3回連続優勝をしてもらいたいものである。
 銀を予想していたノワックが不調で伏兵シャニゼがそれにとって代わったが,ノワックは良いところなく東京大会の記録に及ばず375kgで5位に止まった。
 しかし三宅弟選手の活躍ぶりは全くみごとであった。兄選手はかつて「強心臓」といわれていたが,そのおカブをとったような大胆不敵な試合態度で実に頼もしかった。兄選手の記録を破るような優秀な選手になるよう祈ってやまない。
 全般的にみて記録的には少々低調であったが,シャニゼ,ウォジノウスキーの2人の選手が台頭してきて,今後のフェザー級は,この2人の進歩によって大きく変貌することは間違いな
い。

●ライト級

 ライト級でまず思うことは,八田選手がメダルをとりそこねたが,かなり立派な活躍ぶりであったことと,老雄ジーリンスキーは峠を越えたのではないかと思われる試合ぶりであった。
 ジーリンスキーに代って銀メダルを獲得したジャライヤーはスナッチ,ジャークにおいて今後世界新記録を更新するのではないかと思われる,予想外の活躍ぶりであった。
 バシャノフスキーは相変らず強味を見せたが,競争相手に不足があってか記録の更新はならなかった。
 惜しくもメダルを逃がした八田選手はプレス2回,スナッチ3回と彼にしてみれば珍らしく高い成功率で試合をすすめ,ジャーク1回目155kgに成功し417.5kgの日本新記録を樹立して4位に入賞した。しかし2回目,3回目の試技で自己のベスト記録160kgに成功していたら銀,又は銅メダルを獲得出来たろうと思うと160kgの失敗が非常に残念であった。木村選手はジャークで追い込み逆転をねらったが,惜しくも入賞を逃がした。しかしこれにくさらず,ライバル八田選手と共に向上し合ってもらいたい。

●ミドル級

 ミドル級はニップの不調とシミルノフの不参加により少々迫力に欠ける試合であったが,クレンツォフの圧倒的強さと,彼に続くのは大内選手以外にいないことを証明したような感の試合経過であった。
 この試合でクレンツォフはジャークにおいて187.5kgという超人的な大記録に成功した。この記録は全階級を通じて最も優れた記録であり,かなり長期に渡り,クレンツォフ以外破ることは不可能と思える。どうやらバシャノフスキー時代から怪物クレンツォフ時代に世界の重量あげ界は変貌しつつあるといえよう。
 大内選手はスンナリ銀メダルを獲得したが,プレス1回,スナッチ1回,ジャーク2回の低い成功率でベスト記録に及ばなかったが,ミュンへン大会では怪物クレンツォフを破るような怪物になってもらいたい。
 銅メダルはニップ(アメリカ),デートリッヒ(東ドイツ)の不調により,バコスが獲得した。
 三輪選手は健闘空しく10位に終ったが,その気になってやれば記録は向上する筈。少なくとも今迄のベスト記録を合計すれば437.5kgになり入賞圏内にある。実力からすればミュンへンもねらえる筈。

●ライト・ヘビー級

 予想通りの混戦を演じたこのクラスは,ベレス(ハンガリー)の敗退,30才の新人セリツキーの優勝と,予想から一寸ズレた結果に終ったが,優勝したセリツキーと,銀メダル獲得のベリヤエフが体重差で金,銀を分け合う激戦を演じた。
 しかし両者共トータル485kgの世界タイ記録をマークしたとはいえ,少々物足りない記録に終った感がある。彼等の実力からみれば490~495kgの世界新記録が生まれても不思議ではないからである。
 それにしても一昨年485kgの世界新記録を樹立して王者の復活を思わせたベレスの低調さは,前東京大会の不調を思い出させるような記録に終り,オジメクに銅メダルを譲り4位に落ちたのは残念である。このクラスの6位入賞者は全員共産圏選手であったことは三宅兄弟の兄弟メダリストに共に珍らしいことである。

●ミドル・ヘビー級

 カンガスニエミの楽勝,タルツの順当な銀メダルと,スンナリ収まったが記録としては両者共ベストとはいえなかった。それにしてもこのクラスにおける両者の実力は圧倒的なもので,他の選手を全く寄せ付けなかった。両者の争いは今後興味あるものになりそうである。
 銅メダル獲得のゴラブは,カリニチェンコの不参加からすれば順当なところ。しかしそれより目に付いたのは4位に入賞した新人ヨハンソン(スエーデン)である。彼はかつて国際競技に参加したことのない無名選手であるが,492.5kgの五輪新記録という素晴しい成績を収めデビューした。

●へビー級

 世界一の力持ちをうたわれるザボチンスキー,新鋭べドナースキー(アメリカ)不参加のためか記録的に全く無理をせず,期待していた600kgの壁を破らなかったのは残念であり,全く興味を欠く試合ぶりであった。
 予想外の活躍をしたレディングの銀メダル獲得,19才のマング(西ドイツ)がスナッチ152.5kg,ジャーク195kg,トータル525kgの3つのジュニア世界新記録を樹立して5位に入賞という活躍が無かったら,全く面白くない試合であったと思える。
(福田 弘)
(注)P=プレス,S=スナッチ,J=ジャーク,T=トータル。数字の単位はkg。

(注)P=プレス,S=スナッチ,J=ジャーク,T=トータル。数字の単位はkg。

月刊ボディビルディング1968年12月号

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