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世界のビルダー●トレーニングの比較(1)
広背筋のトレーニング

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月刊ボディビルディング1971年4月号
掲載日:2018.07.08
高山勝一郎
 世界四十数億の人間には、みな違った体質があり体格がある。だれ一人として同一の体を持ち得ない。

 それと同様に、その体をトレーニングし、筋力や健康を増加させようとする試みにも千差万別のやり方がある。

 要は、自分に最もあったトレーニング方法を如何に適確に、しかも早くつかむかが重要なのである。

 ここでは、世界的にその名を知られているビルダーが、どのようなトレーニング理論にもとづき、どのような練習方法をとっているかを、各筋肉群別に比較していこうと思う。

 すでに上級者の域に達したビルダーにも、あるいは全くの初級者にも、そして特に、自分のトレーニング法に疑問を抱き、何か新しい方法をとり入れたいと願う人々に、何らかの参考となれば幸いである。

 広背筋はビルダーにとって最も重要な部分であり、肩巾を広くみせ、逆三角の体形を生むこの筋肉は、世界のビルダーが最も関心をよせるものといえよう。IFBBのワイダー氏は、この筋肉をウイング(翼)と称し、フランク・ゼーン、セルジオ・オリバ、ディープ・ドレイパー、チャック・サイプス等にそれぞれの体型に合ったトレーニング・システムを課し成功させている。

 広背筋のみならず、固有背筋、大・小田筋,菱形筋,下後背筋,僧帽筋を含む背筋群および、前鋸筋を充分に運動刺激することによって、広さのみでなく厚みのあるパックをつくることが大切であるというのがワイダー氏の意見であるというのがワイダー氏の意見である。

フランク・ゼーンのトレーニング法

前鋸筋まで鍛える
 まず、1970年度NABBAのアマチュア・ミスター・ユニバースになったフランク・ゼーンの上背鍛練法を紹介しよう。

第1スーパー・セット・・・上部広背筋種目プラス上部前鋸筋種目

第2スーパー・セット・・・中部広背筋種目プラス中部前鋸筋種目

第3スーパー・セット・・・下部広背筋種目プラス下部前鋸筋種目という6種目の構成であるが、広背筋はともかく、前鋸筋まで上・中・下にわけて鍛えるあたりはまことにゆき届いた配慮というべきだろう。

上背部のトレーニング

 これを具体的に説明すると、第1スーパー・セットがラット・マシーン・プルダウン・ビハインド・ネックと、セレイト・ストレッチング・エクササイズ(前鋸筋伸展運動)の組み合わせである。ラット・マシーンはウェイトを77kgから100kgまで増やしながら、回数は逆に10〜10〜9〜8〜7〜6とセットごとに減らしていく。そして、腰を浮かさないように注意してバーは肩を触れるまで充分引き込むのである。さらに休みをいれないで次の運動に移る。
(ラット・セレイト・ストレッチングで広背筋を鍛えるフランク・ゼーン)

(ラット・セレイト・ストレッチングで広背筋を鍛えるフランク・ゼーン)

 細い縦の支柱(例えばラット・マシーンの支柱でもよい)の基部に両足を揃えてつけ、1メートルほど上部を両手の指を組んで体を支える。そして、広背筋と前鋸筋に充分緊張を与えながらゆっくり体を引きつけて、また戻すこの運動で上背はリフレッシュされ、休みなしでラット・マシーンに戻れる各6セットのスーパー・セットを終えると第2のスーパー・セットに移る。

中背部のトレーニング

 中背部は、先端に50kgから60kgのプレートをつけたローイング・バーを用いたレバレッジ・ロー(つまり、エンド・オブ・バー・ローイング)とスインギング・セレイト・エクササイズで鍛える。後者は、三角型のクロス・グリップをチンニング・バーにひっかけ手の甲を内側に向けて、逆手でこれにぶらさがり、膝を曲げて下肢を床と平行に揃え、体をスイング(振る)させるのである。これは手が疲れて体を支えられなくなるまで行なうのであるがレパレッジ・ローに戻る前に小休止して手の力を回復させなければならない。
 両種とも6セット行ない。手を充分休めてから第3スーパー・セットに入る
(ラット・マシーン・プルダウンを愛用するケン・ウォーラー)

(ラット・マシーン・プルダウンを愛用するケン・ウォーラー)

下背筋のトレーニング

 今度は、ラット・ケーブル・ローとチンニング・セレイト・コントラクションである。ケープル・ローはプーリーに半身となり、背を床と平行にかがめ、グリップを片手ににぎって下部滑車から斜め上に胸筋の端につくまで引っばるのである。そして、広背下部を充分意識して10回6セットぐらい行なえば大きな効果が期待できよう。

 もちろん1セットにつき、手をかえて左右両手を交互に行なう。休みなしで次のチンニングに移るのであるが、これも変っている。

 まず、第2スーパー・セットのときと同じように、クロス・グリップに逆手でぶらさがる。腕を曲げないで体を後にそらし、ゆっくりと背が床と平行になるまでもち上げる。そして、前鋸筋を緊張させたまま、ゆっくりともとへ戻す。これを両手がしびれてくるまでくり返す。さらに少し手を休めてから次のセットに移るのである。

 こうして3スーパー・セットをおわる頃になると、広背部と前鋸筋はいやが上にもパンプ・アップしている。

最後に余分の脂肪をとり広背を美しく仕上げる

 しかし、これで終りではない。ベンチに腰かけ、広背を緊張させたまま、100回のツイストを行なう。バーを肩にかけ、体をひねるのであるが、これは、背筋に附着した余分の脂肪をとり除き広背をより美しく仕上げるのである。

 フランク・ゼーンは、彼自身のトレーニングについて次のようにいっている。

「コンテストやエキジビジョンの無い時には、いろいろなトレーニング・ルーティーンを考案し、かつ、種目にも新しいものをとり入れて、バリエーションをつけている。これが新しい刺激を生み、より効果を上げる結果になる」・・・と。

シュワルツェガーも集中法

 しかし、この集中コースは、広背筋に関しては実に大きな効果があると、アーノルド・シュワルツェネガー(正しくはシュバルツェネガーと呼ぶのだが)も激賛しており、彼もまた、集中の必要があるときには、大同小異のスーパー・セットを採用しているのである。彼の通常の広背筋種目は、やはりベント・ローイングとチンニングのみであるが、ただし、そのセット数は10〜15セットと驚くほど多い。

ウォーラーも多セット主義者

 ミスターUSAのケン・ウォーラーも多セット主義者の1人で、通常のトレーニングで、ラット・マシーン・プル・ダウンを12セット、チンニングを5セットから10セット行なっている。
また、ラット・マシーンは4セットごとにアングルを変えて、多角的な刺激を得るように工夫しているし、同様の目的で、チンニングもグリップの巾を変えて行なっている。

セット数が極端に少ない力ール・スミス

 前記の2人に比べて、セット数が各種目とも2セットと極端に少ないビルダーもいる。それはミスター・ジュニアUSAのカール・スミスである。

 彼は、「セット数は少なくても、その内容が充実していて、必要な筋肉に適確な刺激が与えられるならば、それでよいではないか」と、いっている。

 具体的なトレーニング方法は、ワイド・グリップ・ビハインド・ネック・チンニング10回、ラット・マシーン10回、クロス・グリップ・チンニングが10回で、それぞれの直後にベント・オーバー・ローイングを8回ずつ続けて行ない、結局、3スーパー・セットを2セットずつやるという方法をとっている。

 各種目のあとにベント・ローを続けて広背筋を充分にパンプ・アップさせようとする一種のバーン・メソッドだが、彼はこの独得の方法で、みごとに成功したといえよう。

 スティーブ・リーブスもセット数の少ない1人である。彼は現在43歳だが彼は全盛時代でさえ、ラット・マシーン、ベント・オーバー・ローイング、ベント・アーム・プル・オーバーをそれぞれ10回から15回までで3セット行なうぐらいにとどめていたという。
(ワイド・グリップ・ビハインド・ネック・チンニングで広背筋を鍛えるボイヤー・コー)

(ワイド・グリップ・ビハインド・ネック・チンニングで広背筋を鍛えるボイヤー・コー)

(ピーター・マッカーシーのプルダウン・ウイズ・ラットバー)

(ピーター・マッカーシーのプルダウン・ウイズ・ラットバー)

ボイヤー・コーのトレーニング法

 それでは、昨年秋に来日し、日本のボディビル・ファンの前に、そのみごとな肉体を披露したボイヤー・コーはどうだろうか。

 彼の背筋トレーニングは、集中コースの場合は8種目5セット。通常の場合は6種目4セットで構成されている。いずれも広背筋種目を4種目含みスーパー・セットで行なわれる。

アイソレーションが難しい

「広背筋種目に関しては、アイソレーション(分離トレーニング)が非常に難しい。それは、他の筋肉が、この運動に参加する率が、他の筋肉のトレーニングより著しく大きいからだ。

 練習生がよく、広背筋の運動をしていたら、広背筋より、かえって上腕三頭筋の方が発達してきた・・・と、こぼしているのを耳にするが、これは、トレーニング姿勢の悪さとか、広背筋に対する意識の集中不足にもよるが、何よりもアイソレーションが難しいからである」と彼は述べている。

 では、彼の背筋集中トレーニングの内容を紹介しよう。

 まず、上背部と僧帽筋のためにハイ・プル(スタンディング・ロー)とショルダー・シュラッグを行なう。ウェイトリフティングの選手の僧帽筋が一様に発達しているのは、超重量のプルアップとクリーン動作に起因するので
はないか、と考えた彼は、バーベルのハイ・プルとダンベルのシュラッグを5スーパー・セット交互に続ける方法をとっている。

 第2.スーパー・セットは下背部のためのスティッフ・レッグ・デッド・リフトとグッド・モーニング・エクササイズで構成される。いずれも脚は膝をまげないでロックしたままで、各セットとも6回ずつ交互に行なう。

 次の4種目は、広背筋中心で2セットずつをスーパー・セットに組み、いずれも8回から10回を交互に5セット行なうのである。

①ワイド・グリップ・ビハインド・ネック・チンニング・・・できるだけ握り巾を広くとり。肘を平行に保って、ゆっくり引き上げる。

②べント・オーパー・ローイング…べンチの上に立ち、バーベルを下ろす際に、広背筋の下部がひきつけるほど、充分に伸びるようにする。

③クロス・グリップ・チンニング・・・体をそらせるようにして胸がグリップにつくまで引き上げる。下ろしたときに、広背部が伸びきるようにして正しく広背筋に運動させる。

④ワン・アーム・プーリー・ロー・・・プーリー・ウェイトを使って、片手でゆっくり引き上げる。
 広背筋のトレーニング法には、全部で30種類の方法があるが、ある種目を続けていて効果がうすれてきたと思ったら、すぐ種目を変えて、常に新しい刺激を得るように心がけることが大切だとボイヤー・コーはいっている。

フランコ・コロンボのトレーニング法

日本人向きのトレーニング
 フランコ・コロンボも通常時は、ベント・ロー、ラット・マシーン、チンニング、ベント・アーム・プル、ワンハンド・ローの中から3種目を選んで広背を鍛えているが、ここで特筆すべきは、彼のべント・ローイングの方法である。

 足をロック(まっすぐのばして固定)し、足台(ブロックまたは木片)を用いて行なう。比較的足が短かく、手の長いと思われるビルダーには足台が必要で、10kg以上のプレートがついたバーベルでは、足台がないと手を伸ばしきらないうちに、すなわち、広背筋下部が伸びきらない前に、プレートが床について、効果を半減させると考えられる。ボイヤー・コーがベンチの上でベント・ローイングを行なうのも同じ理由である。

 とくに、足の短い日本人にとってはこのことは大いに参考になることであろう。
こうしてみてくると、やはり、チンニング・ローイング・モーションとラット・マシーンが広背筋種目の主流となっていることがわかる。
(チンニング・マシーンでトレーニングにはげむシュワルツェネガー)

(チンニング・マシーンでトレーニングにはげむシュワルツェネガー)

(日本のビルダーの中で、とくに背筋のすばらしい末光選手)

(日本のビルダーの中で、とくに背筋のすばらしい末光選手)

チンニングは効果絶大

 NABBAミスター・ユニバースに3度選ばれたレジ・パークも、チンニング、ベント・ロー、ワンハンド・ロー、ラット・マシーンの4種目を各8回5セットずつ行なっているし、ミスター南半球になったピーター・マッカーシー(オーストラリア)もチンニング10回6セット、ベント・ロー6回6セット、ラット・マシーン6回6セットである。日本のコンテスト・ビルダーもほとんどこの3種目をアレンジしているようである。

 そして、それぞれのトレーニングに絶対といっていいほど、必ずとり入れられているのがチンニングである。

 例外はスティーブ・リーブスぐらいである。彼がラット・マシーンの愛用者であることは有名なのだが、これとても、彼の背の高さと、足の長さがチンニングに不向きにできているからで、チンニングに替る種目として、ラット・マシーンにたよっているわけであって、決してチンニングの効果を否定しているわけではない。

 かって私が遠藤光男選手に、広背筋に最も効果がある種目について質問したとき、彼は即座に、それはチンニングだと返事をしたのを思い出す。それはもう3年も前の話だが、彼はその頃広背筋のトレーニングとして、フロント・ワイド・グリップ・チンニング、ビハインド・ネック・チンニング、クロス・グリップ・チンニング、ラット・マシーンというように4種目のうち3つまでがチンニングで構成されたトレーニングを行なっていた筈である

 セルジオ・オリバが前述の6種目のうち半分を、遠藤選手と同じチン二ング種目で行ない、広背を拡げていったことも不思議と符合するのである。

逞しい背筋で知られる末光選手も必ずローイングとチンニングは忘れないで練習にとり入れている。
月刊ボディビルディング1971年4月号

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