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いつまでも若く美しく

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月刊ボディビルディング1969年6月号
掲載日:2018.02.20
ナカタ・トレーニング・ルーム
中田信子
記事画像1
「アッ……しまった!!」と言うのも遅くアキレス腿が切れてしまい、今まで長い間張りつめていた心と体がくずれ去ってしまった。

 小学生の頃からクラシック・バレーのとりこになり、やっと〝白鳥の湖〟の準主役をかちとり、猛烈に張り切って練習を重ねていた時である。

 もう駄目!! もう駄目と何度くりかえしくやしく思ったことだろう。

 足の痛さを思うたびに涙が出、お先真暗で何をする気力もなくバレーもぶっつりやめてしまった。

 そんな時である。ある機会から御主人がボディビルをやっている〝安岐寿司〟という寿司屋へ行くようになり、ボディビルの話をきくようになった。

 初めは何と動物的で気持の悪い事をするのであろうと理解することができず、一年位は写真を見せられるたびにイヤダイヤダと思っていた。……と……ある日ひょっこり山口会長がこられ、色々とお話をし、また実際に会長の若々しい若ものと変らない体を見ている内に、いつのまにか健康の大切さイコール、体作りがどんなに大変なことであり、又いかに人々が自分の体を無視しているかを知り、自分自身を含めておそろしくさえ感じたのです。

 そして、そうこうしている内にボディビルの話が楽しくなりだし、又、大阪のビルダー達とも知り会い、いつのまにかボディビルの通になっていました。

 そして女性にもできないものだろうかと考えだし私もやりたくなっていた時でした。

「大阪武育センター」で女子の指導者がいないのでやってみないか……と誘われたのは……

 一応の知識はあるものの実際にできるだろうか? と心配もしましたが体もクラシック・バレーできたえてあるので、えい!! とばかりやってみることにしました。

 それからというもの東京の「国立トレーニング・センター」へ指導者として勉強をするため毎日レッスンを受けに行き、夜は夜でその日の復習をホテルの床を使って練習をしたので、じゅうたんがうすくなったのではないかと今だに気がひけております。

 指導開始!! 幸い練習員が少なく、私も会員の一人のつもりで一諸にやりながら色々と知識を得ていき、人間の体の無限の可能性を知りました。又、男性のやり方そのままを女性に当てはめてはだめなことも知り、色々失敗をしながらも私なりの〝女子トレーニング法〟を作り出し、その結果、素晴らしい効果をあげていますので、現在は誰にも負けないつもりで自信を持って指導致しております。

 私がボディビルを指導しだしてから一番うれしかったことは、私のトレーニング・センターから4人の〝ミス・インターナショナル〟代表を出した時です。別に特別にひっぱってきて育てたのではなく、練習員の中から推選し、当選したのですからその時の私の得意顔を思ってください。

 4人とも頭も良く素直で、私のたてた〝トレーニング・スケジュール〟に必死に食いついて来てくれました。

 そして東京へ応援に行き、玉利理事長その他の方々のお手をもわずらわせましたが、残念ながら一位にはなることができませんでした。でも本当に良い思い出になりました。

 いつまでも若く美しくというこは、人間の理想でもあり、ことに、女性の願ってやまないことだと思います。もちろん私も同じです。
練習生にコーチする筆者

練習生にコーチする筆者

 日本では美しくというと、すぐ若くといいますが(もちろん美しさイコール、若さですが)その背後には人間の健康美つまり心とからだの調和された美しさというものが、やはり問題にならなければいけないのではないでしょうか?

 ティーン・エイジャーの美しさは美しいことは美しいのですが、そこには何か足りないものが感じられる,というのが目の肥えた教養のある人の見方だと思います。

 こういう意味で、私は、ティーン・エイジャーのような若さだけが美しいと思う美しさの観念をかえたいのです。
サイクリング・マシンでのトレーニング

サイクリング・マシンでのトレーニング

 つまり35歳から40歳が女性の盛りだといいますね。顔はそばで見れば小さいしわもよっている。しかし、何となくしわの中に経験が折り込まれているというような深みのある美しさ、つまり人間の精神的、または経験的な美しさがあふれているということです。

 婦人科のお医者さんが言っておられましたが20歳から50歳までは全然ちがわないと……顔を見れば違っているけれど肉体的には差がないということです。

 ですから、どんどん遠慮せずに運動をやっていたただきたいものです。そして内面からの美しさを持った女性が多くなってほしいですネ……。

 重役、社長というと太った猪首型を連想しますが、欧米では猪首型は含水炭素をたっぷり取って体をあまり動かさない職業人、つまり門衛スタイルということになっています。

 だんな様が門衛スタイルになったからと言って生命保険めあてに喜ぶ奥様ではいけませんネ。また、体重をゴルフやテニスで減らそうなどという妄想は、プロ選手でない限りよした方がよいでしょう。

 一時間ゴルフコースを廻っても減る脂肪は40グラム位で、小さなビフテキを一キレ食べると回復してしまいます。

 ダンナ様を長生きさすのも奥様のアドバイス一つです。どうぞ一日も早く御夫妻でボディビルにはげんでくださいませ。

 始めてボディビルの門をくぐった半数以上の人が同じ事をききます。

「男性の様に筋肉がもりもりと出てくるんじゃあないでしょうか?」無理のないことです。私も始めはその一員だったのですから……しかし彼女達はもう一度同じことをいいます。

「一ケ月でこんなに細くなったわ…」

 一例をあげますと、50歳になる方で胃下垂になやみ毎日医者通いと薬ばかり飲んでいた方が、半月目には医者通いを忘れ、二ケ月目には薬を飲むのも忘れだし、細い体にバストがくっきりわかる位になりました。今では若い人に負けず15キロ~17.5キロ位のバーベルを軽々とベンチ・プレスしていらっしゃいます。

 またウエスト等は細くなるのが早く、だいたい一ケ月位で最低4~5センチ最高15センチも細くなった人がいらっしゃいます。

 太っている人は一日も早く重たい荷物をはずしていただきたいものです。

 太っている人にはこんなに欠点があるのですよ。

①太った分の脂肪組織を養わなければならない心臓の負担

②それだけの重荷をかついで暮らす心肺の負担

③成人病の死亡率は50%くらい上昇する危険

④決断力の鈍くなること

⑤交通事故率のふえること

⑥洋服の布地代は割り増し料金になること

⑦タクシー等の乗り物で肩身の狭い思いをする

⑧セックスが弱ってくる

⑨動作が不活発になって運動量が減るためよけい太ってくる

 まだまだたくさんありますが、思いあたるだけでもこれだけあります。

 私も自分の体を研究材料として一生続けて行き、いつまでも若々しくおりたく思っておりますので皆様いっしょにがんばりましょう。
月刊ボディビルディング1969年6月号

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