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72才から始めた健康管理 上野万平さんの〝努力〟

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月刊ボディビルディング1971年8月号
掲載日:2018.06.29
広島トレーニング・センター 金 沢 利 翼
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 人間の最高の幸福とは、一生を健康で過ごすことではないでしようか。なぜなら、健康こそは金銭によって求め得ることのできない尊いものであり。その人の努力によってのみ勝ちとることができるものであるからです。

 人間は、とかく健康であるときには感謝の気持を粗末にして、身体の鍛練を怠り、病気になって始めて健康であることのありがたさを痛切に感ずるものです。そして、常に健康を保つための努力を、我々は日常生活においてしているかどうか反省する必要があると思います。

 さて、ここに紹介する人、上野万平(73才)さんは、トレーニングによって、真の健康をとり戻した1人です。機能回復と健康管理を目指してトレーニングを始めて1年になりますが、最近、上野さんの努力が認められて、ローカル放送ですが、テレビを通して、そのトレーニングの模様と、73才の努力で得た健康が紹介されました。

 上野さんは、かつては脳軟化症に見舞われ、殆んど意識不明の状態が数日続き、その果てに左腕、右脚がマヒして自由に動かなくなり、加えて口も思うようにきけなくなってしまった。そして、市内の病院に8ヵ月間リハビリーテイションのため入院し、健康をとり戻すことに専念した。

 退院後もトレーニングを欠かさず、毎朝、自宅から公園まで往復約4000歩の散歩を続け、健康になるための努力をしてきました。その願望はさらに燃えあがり、家族の否定的な言葉を振り切ってトレーニング・センターの門をたたいたのです。

 それは、昨年の7月7日のことです上野さんは杖をついて、入口のドアーのところに立っていましたが、脚は殆んどその杖だけを頼りに立っているように弱々しく、いまにもころんでしまいそうな状態でした。

 そして上野さんは〝あっしは72才ですが、トレーニングはできますか〟と遠慮がちに尋ねられた。しばらく話しているうちに、健康になるためにウェイト・トレーニングもやってみたいという上野さんの熱意にうたれ、私もリハビリーテイションにウェイト・トレーニングをミックスした方法や、その効果等について説明した。

 上野さんは翌日さっそく会社の自動車に送られて、フロシキにトレーニング用品をつつんでやってきた。最初はトレーニング・シャツの着替えにも手間がかかり、運動もすべてスローモーションだった。やがて1ヵ月、2ヵ月と経過するに従って、身体の機能も活発になり、始めのうちは自動車で送り迎えしてもらっていたのが1人でバスに乗って練習にやってくるようになった。

 現在行なっている上野さんのトレーニング・スケジュールは、シット・アップ20回×5、自転車5km、レッグ・エクステンション20kg×10回×5、レッグ・カール5kg×10回×5、インクライン・ダンベル・ラタラル・レイズ7.5kg×10×5回、ラット・マシン・プルバック7.5kg×10回×5、ベンチ・プレス23kg×10回×5。レッグ・プレス20kg×10回×5。

 上野さんは〝人生は何事も努力ですよ。どのような状態にあろうとも一生努力を忘れてはならない。常に希望をもってやってみることです。もちろん人生の幸福も健康も努力して勝ちとるのです〟若い会員たちから〝万平さん〟と親しまれている上野さんはこう語っている。
かつて脳軟化症で意識不明になったとは思えない上野さんの元気な姿

かつて脳軟化症で意識不明になったとは思えない上野さんの元気な姿

月刊ボディビルディング1971年8月号

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