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世界のビルダー●トレーニングの比較 ⑤ 胸部のトレーニング

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月刊ボディビルディング1971年8月号
掲載日:2018.01.09
高山勝一郎
 厚く広い胸は、裸体の時のみならず着衣の際にも美しい立姿を構成する大切な要素である。

 胸囲は、大胸筋の大きさだけでなく広背筋の広さが加わって始めてその数値が増大するのではあるが、胸囲が大胸筋の大きさを表わす一つのバロメーターとすれば、アーノルド・シュワルツェネガーの58インチ(148センチ)、ディヴ・ドレイノパーの54インチ(138センチ)等々、欧米のビルダーには逞しい胸部を持つものが多い。

 さりとて、彼等が生れつき大きな胸廓に恵まれていたかというとそうではない。

 シュワルツェネガーなどは、トレーニング開始時わずか39インチしかなかったのである。

 「生れつき胸部が貧弱だった私は、特にこの部分に懸命のトレーニングを加えた。しかし、全体の筋肉から見て一番発達が遅れたのは胸部である。

 最初、私は大胸筋だけ発達させればよいと思っていた。

 だが、胸の発達には、胸廓を拡げることが不可欠だと教えられて始めて眼がさめ、ようやく今の胸を得られるようになった」とシュワルツェネガーは語っている。

-----胸廓拡大法-----

「シュワルツェネガー」
 彼の胸部集中トレーニングの際は、次の七種目が採用され、しかも④と⑤の種目の前にはスクワットをかませ胸廓を拡げることに努力していたあとが判るのである。

 一方、腹部を細くするトレーニングを怠らず、いやが上にも胸部を強調できるように工夫している。

① フロア・プッシュ・アップ
 ウォーム・アップ用。床に両手を広めにつき、足を台の上にのせて、腕立て伏せを行なう。

② ベンチ・プレス
 可能な最高重量を附加したバーベルでゆっくり行なう。

③ ダンベル・プレス
 ベンチは時に応じ、フラットかインクラインでバリエーションをつける。

④ ラタラル・レイズ
 スクワット(ディープ・ニー・ベント)を行なって直後に胸廓を拡げる目的でダンベルを下ろしつつ深く息を吸う。

⑤ アーム・プルオーバー
 通常ベント・アームで。これもスクワットを入れてその直後に行なう。

⑥ バー・ディップス
 下部大胸筋の発達をねらう。

⑦ デクライン・バーベル・プレス
 下部大胸筋のキレをねらう。

 回数は各セットとも8~10回、セット数は各種目とも5~8セットと多セット主義である。
シュワルツェネガーの148センチの胸囲はこうしてつくられた

シュワルツェネガーの148センチの胸囲はこうしてつくられた

-----左右バランスよく-----

「マイク・カッツ」
 ミスター・アメリカ・コンテストで連続ベスト・チェスト賞に輝いたのがマイク・カッツである。

 シュワルツェネガーが胸廓の発達に重点をおいたのに対し、カッツは、胸廊、胸筋ともども、左右を平均に発達させることに重点をおいた。

 彼は、胸のトレーニングの都度、鏡に自分の体をうつし、左右の胸にバランスを与え得るようプログラムを作成して、それに従って練習を行なったという。

 そしてさらに、火曜・木曜・土曜には集中して胸筋肉群を鍛え、月曜・水曜・金曜には胸廓を拡げることに集中したのであるから、これは胸部トレーニングとして完全といえよう。

 次の最初の3種目が火・木・土に、そしてあとの3種目が月・水・金にカッツが行なったものである。

① ベンチ・プレス
 重いウェイトを用い、バーベルを胸筋でもち上げるように意識を集中して行なう。背はベッタリ、ベンチにつけておき、アーチを作ったりしないことが大切。6回の6セット。

② インクライン・ベンチ・プレス
 45~50キロ(片手)のダンベルを用い、背を浮かさぬよう注意してゆっくり上下する。6回6セット。

③ ディップス
 ウェイトを腰につけ、深いバー・ディップスを行なう。

 各セット8回で5セット。

④ インクライン・ダンベル・フライ
 片手40キロのダンベルで、肘を曲げたべント・アーム・スタイル。

 胸上で腕をクロスさせる。8回の4セット。

⑤ デクライン・ダンベル・フライ
 デクライン・ベンチで行なうほかは④と同じ。

⑥ プル・オーバー
 スクワットを挿入して、その直後にベント・アーム・プルを行なう。

 肩をベンチの外へ出し深く呼吸しつつ行なう。12回ずつ8セット。
カッツは胸廓、胸筋ともども左右の胸をバランスよく発達させるようプログラムを作成している

カッツは胸廓、胸筋ともども左右の胸をバランスよく発達させるようプログラムを作成している

-----効果絶大のジャイアント・セット-----

「エド・ジュリアーニ」
 相当な上級者ともなれば、ジャイアント・セットを試みて徹底したパンプ・アップをねらってみるのも一方法である。

 ジャイアント・セットとは、別名スーパー・ダブル・トライ・セットとも呼ばれるもので、同一筋肉群の運動を数種目各1セットずつを、休みなく続けて1セットとし、これを3~5セット行なうという大変きびしいトレーニング方法であるが、その効果は絶大であると思う。

 一定の運動に慣れた筋肉に思いきった刺激を与え、あらたな発達を促がすことになる。

 さて、IFBBのチャンピオン、エド・ジュリアーニは、次の6種目をジャイアント・セットで行なっている。

① ベンチ・プレス
 ミディアム・グリップしたバーベルで大胸筋をフルに動作させて8回。

② インクライン・プレス
 バーベルを胸へおろす時、息を吸うことに注意。8回。

③ ベント・アーム・フライ
 ベンチの端に肩のみをかけて行なうラタラル・レイズ、10回。

④ ダンベル・プルオーバー
 シングル・ダンベルで、腕を伸ばしたまま深く頭の向うへおろし、胸の直上へゆっくり戻す、8回。

⑤ ケーブル・クラッシュ
 大胸筋の内側を鍛えるのによく、ケーブルのグリップを両手でにぎりクロス・オーバーで引く、10回。

⑥ バー・ディップス
 胸筋下部、上腕筋、三角筋にも効く、8回。
エド・ジュリアーニは、大胸筋の内側を鍛えるのによくケーブル・クラッシュを用いる

エド・ジュリアーニは、大胸筋の内側を鍛えるのによくケーブル・クラッシュを用いる

-----ミスター・フロリダは胸で取る-----

「ロダートとナーシー」
 さてここで二人のミスター・フロリダを登場させよう。

 昨年のジーン・ナーシーと数年前のドン・ロダートである。

 二人ともすばらしい大胸筋の持ち主である。

 特にジーン・ナーシーは、51インチの胸筋をホーム・トレーニングでものにしたのであるから立派である。

 彼は上半身を月・水・金曜日に鍛えているが、その時の大胸筋の種目は次の通りである。

① ベント・アーム・プルオーバー
 特にカーリング・バーを用いてグリップの角度を変えながら行なう。

② プーリー・フライズ
 プーリー・ウェイトを用いたラタラル・レイズ。胸上でクロスさせる。

③ ケーブル・プル
 エキスパンダーを横に引く運動。

④ ダンベル・フライズ
 重いダンベルをべント・アームで振るラタラル・レイズ。

⑤ ベンチ・プレス
 これもへビー・ウェイトで行なう。各種目とも7~9回を5~8セット行なっている。


 ドン・ロダートのトレーニングは次の通り。

① ダンベル・プレス
 片手40キロで10回を4セット。

② インクライン・ダンベル・フライ
 片手35キロで8回を4セット。

③ ディップス
 40キロのウェイトをつけて8回を4セット。

④ ベンチ・プレス
 130キロのバーベルで、5回を5セット。

-----英国系は重量主義?-----

「コロンベラとフィリップス」
 自分に可能な最大の重量を使用すべし・・・大胸筋にはこの法則が適用される根拠があるとみえて、へビー・ウェイトでトレーニングするビルダーが多い。

 ミスター・サウス・ウェールズ(英国)のピーター・フィリップスは、52インチの胸を誇っているが、彼も相当に重いウェイトを使用しているようである。

① ベンチ・プレス
 150キロのバーベルで10回を3セット。170キロで8回を2セット。最後に150キロで10回を1セット行なう。

② デクライン・ベンチ・プレス
 120キロのバーベルで10回を2セット。続いて8回を3セット。

③ ダンベル・プルオーバー
 シングル・ダンベル60キロで10回を4セット。

④ ラタラル・レイズ
 片手40キロずつを持ちべント・アームで行なう。

 ③と④の種目はスーパー・セットに組む。

 ミスター・オーストラリアのフランク・コロンベラは、週6日、各2時間半ずつのトレーニングだが、胸部は,スプリット・システムで週3回鍛えている。

 いずれも、へビー・ウェイトの使用を基調にしたものである。

① ベンチ・プレス
 重量は130キロから200キロに至る4段階で、③・④・⑤セットに最重量をもってくる山型トレーニング法を採用。

 各8回ずつで6セット行なう。

② インクライン・ベンチ・プレス
 ①より重量をやや減ずる。

 やはり8回の6セット。

③ ラタラル・レイズ
 スクワットのあと行なう。重いダンベルを使用。8回6セット。

④ バー・ディップス
 腰にウェイトをつける。15回の6セットを行なう。
クロス・オーバーで胸部を鍛えるコロンボ

クロス・オーバーで胸部を鍛えるコロンボ

-----鏡の前で想を練る-----

「フランセスコ・コロンブ」
 通称フランセスコ・コロンブは、デフィニションのすばらしい大胸筋を誇っている。

 彼も、前述のマイク・カッツ同様、トレーニングを始める前に自分の体を鏡にうつし、どの部分をどう鍛えるか器具は何をどう使うのが最も効果的か今日の体調では何回の何セットがよいか...等の想を練ってから、そのプログラムに従ってトレーニングにとりかかるのである。

 胸を各角度から総合的に鍛えるため種目数は多いが、これはあくまで胸部集中時のもので、通常は3種目迄にとどめる方が上策と彼は語っている。

① ベンチ・プレス
 胸の厚みにはやはり重いウェイトが必要。180キロで10回は可能なので,これを3セット目にいれる。

 通常8回の5セット。

② クロス・オーバー・エクササイズ
 プーリーを使って胸上でゆっくりクロスさせる。各セット20回。

③ ラタラル・レイズ
 30キロダンベルでベント・アーム・スタイル。6回から10回を5セット。

④ クロス・オーバー・エクササイズ
 ①と②、③と④はスーパー・セットに組む。

⑤ インクライン・ベンチ・プレス
 大胸筋と三角筋の美しい結合をねらう。15回の3セット。

⑥ プル・オーバー
 ストレート・アームでバーベルを大きく振る。前鋸筋にも効く。15回。

⑦ バー・ディップス
 カウントせず極限まで行なう。

 ⑤・⑥・⑦はトライ・セットに組み3セットを行なう。

 各トライ・セットの直後にクロス・オーバー・エクササイズをいれることもある。
ドレイバーのベンチプレス

ドレイバーのベンチプレス

-----重さはフィーリングできめる-----

「ディブ・ドレイパー」
 ドレイパーはオーバー・バルクだとよくいわれているが、岩石のデフィニションもよく兼ねそなえている。

 彼は、あまりへビー・ウェイトを用いない。400ポンド(182キロ)でべンチ・プレスができるのだが、ふだんはわずか235ポンドのバーベルしか使わない。

 重さは、その時のフィーリングで選ぶ方がよいと彼は考えている。

 すなわち、オーバー・トレーニングを避け、あくまで、その日の体調をもとにして重さを選ぶのである。彼の胸部のトレーニングは

① ベンチ・プレス
 ワイド・グリップを主体に。

② デクライン・ダンベル・フライズ
 斜角30度のベンチで。

 ①と②はスーパー・セットに組み、各10回ずつの6セットを行なう。

③ インクライン・ベンチ・プレス
 斜角40度のベンチで軽い重量を使用。

④ ダンベル・プルオーバー
 シングル・ダンベルをストレート・アームで。

⑤ バー・ディップス
 ワイド・グリップで深く。

 ③・④・⑤の種目はトライ・セットに組み、それぞれ8回から10回を6セット行なっている。

 ちなみに、彼の胸部トレーニングに使用する時間はほぼ30分。スプリット・システムの一部として週3回の鍛練である。
月刊ボディビルディング1971年8月号

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