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ボディビルへの招待 幸福を売る男

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月刊ボディビルディング1971年9月号
掲載日:2018.03.07
野沢秀雄
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 真夏の暑い日、汗をダラダラ流してなぜ今日もバーベルととりくむのか? 冬の寒い日、かじかむ手に息をふきかけ、シャフトの冷たさに泣けてくることもあった……。
 ある若者はいう。「体に自信ができたので人生がとても明るくなりました。毎日生きているのが楽しい。もちろん女の子の人気もバツグンですよ」またある青年はいう。「健康管理にとてもいいんです。バーベルをあげると体の調子がよく、食欲も出るし夜もぐっすり眠れます。そして仕事に張り合いが出て疲れません」そしてある中年紳士「長年の胃腸病がうそのようになおりました。もうやめられません」
 職場や家庭でおこるいろいろのストレスーーそのモヤモヤした気持がバーベルをあげてるとふっ飛ぶという人・窮屈な職場から解放されていろいろの人と話しながら練習できる雰囲気が好きな人・体力に自信をつけて将来自分で何かをやろうとしている人・他人のあげられない重いバーベルをあげるのが楽しい人・まわりの人たちからいい体だといわれるのが楽しい人……。
 ボディビルの目的は練習者によってそれぞれちがっている。けれども2つの大きな理由は誰にでも共通する。自分を完成する喜びのあることとやれば必ずむくわれることだ。
 ところでボディビルでつくりあげた体をどう使えばいいのだろうか? ある人は自分が満足できればそれでいいというし、ある人はもっと何かがあるはずだと考える。立派な体をつくりあげるまでには並大抵でない苦労がある。この誘惑の多い現代ーーほかの人たちがテレビを見たり、ボーリングをしたり、あるいは勉強やアルバイトをしているはずの時間を、黙々とトレーニングにはげんできた。食事や睡眠に気もつかってきた。なにより重いバーベルとの必死の戦い一一それは文字どおり血と汗の成果なのだ。
 そこで私は考える。こうしてつくりあげた理想的な肉体は、健康と健康美そのものだ。現代においては健康イコール幸福なのだ。幸福を追及する権利が誰にでもあるのに実際はどうだろう一一社会に多くの青年がいるが、みんな何かを求めて不安で疲れきっている。このボディビルを知らない青年たち、知っていても自分にはできないと思っている青年たちにボディビルのすばらしさを知らせようではないか。自分のカで健康をつくる喜びや筋肉がパンプ・アップして痛くなったときに感ずる生きた充実感を、そのすばらしい身体でもって……。友だちばかりでなく知らない人たちにも語りかけて、一人でも多くの仲間にこの幸福感を味わってもらおう。一人ひとりの人聞が健康で幸福になる社会、そんな社会が明るい未来の日本をつくる。どんな仕事をするにしろ、どんな社会がくるにしろ、体力をつくり余裕ある精神を持つことが人びとを幸福にする。だとすれば成功したビルダーは幸福を売るセールス・マンであり、幸福を配達する運転手である。協会もジムも雑誌もビルダーの皆さんのためにカをおしまない。
月刊ボディビルディング1971年9月号

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