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ホルモン料理

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月刊ボディビルディング1971年11月号
掲載日:2018.04.13
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〈ウハウハくるよ〉

 牛・豚・とり・うさぎ・羊・馬などの内臓(モツ)を料理したのがホルモン料理。

 誰がつけたか知らないが、実にいいネーミングだ。名前をきいただけでスタミナがモリモリ、性力が倍増するような印象をうける。そのためか、ここぞというときに、お銚子をつけて、ホルモン料理で「イッパイヤッカ」という愛用者が多い。

 "自分はこんなにスタミナをつけたからナ"という暗示が頭の中にできるので、本番は安心してハッスル。そして「やっぱり効果があるわい、ウッシッシ」というわけ。

 しかし、本当にホルモン料理が効いたかどうかは、まったく別。いろんな内臓のなかには、ひよっとしたら例の部品が入っていることもあるが、残念なことに、ホルモンは調理中に分解してしまう。あるいは、そのまま口に入ったとしても、胃や腸でバラバラに分解されてしまうので、ストレートにその役目を果すわけではない。

〈スタミナの秘密〉

 それではなぜこんなに人気があるのか。レバー(肝臓)を例にとって調べてみよう。まずタンパク質が多い。牛のモモ肉に匹敵するくらいだ。だから食べただけで体がホカホカ暖かくなるこれは特異動的作用といって、タンパク質が分解されるときに、持っているカロリーの30%に相当するエネルギーが使われるためだ。

 また、ビタミンやミネラルが多い。ビタミンA・B12・B1・B2・D・ナイアシン・鉄・カルシウム……。そのほか野菜や果物にしかないはずのビタミンCまであるのだから驚きだ。悪性の貧血にレバーがいいのは、その中に含まれている鉄分のためだ。ビタミンB12とB2は成長促進ビタミンといって、体を大きくするのに役立つビタミンだ。

 にわとりやねずみを使って実験してみると、レバーを与えないものは成長が遅く、骨格も貧弱なのに対し、レバーをすりおろして、えさの中に混ぜて与えたものは立派な体格に育っていく

〈ホルモン料理の歴史〉

 動物の肉を愛用したヨーロッパの人たちも、内臓だけは気味わるがって食べるのを嫌っていた。くさりやすくて中毒にかかった人が大勢いたせいもある。

 いまもチェコのある地方を除いてはあまり愛用されていない。けれども、肝臓・賢臓(マメ)・脾臓・脳など合計すると、動物の全体重の20〜30%にもなるので、捨ててしまうわけにいかない。そこで、これらの臓器はもっぱらハム会社に払い下げられ、ソーセージの原料となる。また、腸はハムやソーセージをつつむ膜(ケーミング)に使われる。

 内臓をもっとも有効に使っているのは中国人。とくに、広東料理にはタップリと使われている。横浜の中華街を歩いた人ならば、店頭にぶら下った内臓をみてゲンナリした経験を一度はお持ちだろう。

 外観はともかく、なれてしまえば味のほうはなかなかいけるものだ。いやな臭いをとるために、いろいろの工夫もされている。日本でも価格が安いために、庶民の食べ物として、ヤキトリやレバーいために多く使われている。

〈うまい料理法〉

 内臓には血液が多く、酵素が作用しやすい状態になっている。だからくさるのが早いので、手早く料理しなければならない。

 よく塩もみし、しようがをおろした酒で洗うと臭いがよくとれる。油やバターでいためるときは、サッと短時間で処理するのがコツ。ゆっくりいためると、コリコリした歯ごたえがなくなりまずくなる。

 タマネギ・ニンジン・しいたけ・ピーマンをあわせていためると、レバーの「五目いため」ができる。いためる順序は、にんじんをトップに、しいたけ・タマネギ・ピーマン・レバーの順にいためるとよい。

 ヤキトリをつくるには、ネギやタマネギを交互に串にさして、風味のバランスをとることがポイント。串ざしができたら、調味液に軽くつける。調味液は、しょうゆとみりんを1:1で混ぜ、その中に、しょうがとニンニクをすりおろしたものを使うとよい。串を焼火であぶってできあがり。リースとときがらしを適当に混ぜたタレを上からかけるとさらにうまい。

〈食事のヒント〉

 どう組み合わせると、栄養のバランスがとれるか考えてみよう。
(酒のさかなの場合)

(酒のさかなの場合)

(夕食の場合) なお、レバー・ペーストの缶詰が市販されているので、パンなどにぬって食べるのもよい。100g入りで240カロリー、タンパク質16.3g。(野沢)

(夕食の場合) なお、レバー・ペーストの缶詰が市販されているので、パンなどにぬって食べるのもよい。100g入りで240カロリー、タンパク質16.3g。(野沢)

月刊ボディビルディング1971年11月号

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