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'71ミスター日本コンテスト観戦記

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月刊ボディビルディング1971年12月号
掲載日:2018.05.24
JBBA事務局長 '68ミスター日本 吉田 実
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 10月9日、全国のボディビル・ファンが待ちに待った'71ミスター日本コンテストだ。正午の開場を前にして、午前10時には会場の神田共立講堂を取り巻くファンの行列が約500名。コンテストの大盛況が予想された。

 このときすでに会場内では、出場選手にとっての最初の関門、第1次予選(裏審査)が始まっていた。11名の日本ボディビル協会公認審査員を前にして、比較審査を受けている選手の顔はどれも真剣そのものだ。

 もっともな話だ。ことし1年間の練習の成果を競い合う今日のこの舞台で他の選手に遅れをとったのでは、なんのために毎日血みどろなトレーニングを積んだのかわからない。

 全国都道府県大会で、表彰台に昇って数々のトロフィーをその手に握り、会心の微笑をもらした選手ばかりが68名。いずれがアヤメかカキツバタ。それぞれ郷土の期待を一身に荷なって責任は重大だ。

 各審査員が、よいと思う選手12名程度に○印のチェックをしたあと、部分賞の選考だ。

 胸・腕・腹・背・脚の各部分ごとに自信のある選手のみが進み出て一列に並び、得意の筋肉を披露した。

 審査員がその中から最も秀れていると感じた選手のゼッケン番号を、審査用紙にひとつだけ記入するわけだ。

"石神と須藤に話題が集中"

 第2次予選は約1500名の大観衆を前にして、本舞台上で行なわれた。

 選手に許されるのはフリー・ポーズが3つ。晴れの舞台で最も得意なポーズをとる選手の表情は、喜びと緊張が交差していた。この第2次予選も、さきの第1次予選(裏審査)と同様にチェック方式だ。こうして、第1次と第2次予選の合計チェック数により、決勝進出者が決定された。

 大観衆を前にしてスポット・ライトに照らされてポーズするのと、無味乾燥な裏審査とは多少異なった審査結果が出るものだ。糸崎(石川)はこの第2次予選でクローズ・アップされた選手だ。

 この予選審査(第1次、第2次)で高い点数を集めたのは末光健ー(東京)、重村洵(東京)、石神日出喜(兵庫)、杉田茂(大阪)、須藤孝三(三重)の5名だ。

 末光、重村、杉田は戦前から優勝候補の一角に数えられていた選手だからとりたてて何もいうことはないが、石神と須藤のフレッシュな魅力は、予選審査でひときわ光っていた。控室での審査員の話題は、もっぱらこの両選手に集中した。

 前記5選手の他に宇戸信ー(広島)、木本五郎(大阪)、水上彪(東京)、小斉平豊(鹿児島)、糸崎大三(石川)、大石秀雄(静岡)、佐藤大機(千葉)の7名、合計12名が予選を通過した。

 残念ながら決勝にこそ進出できなかったが、生田目博仁(愛知)、鈴木東一(東京)、後藤武雄(東京)、磯村敏夫(東京)、吉川進(神奈川)といった選手たちが少差で迫っていた。来年の健斗を期待したい。

"末光が第17代ミスター日本"

 12名の選手による決勝審査は、1人2分程度以内のフリー・ポーズだ。ボディ・コンテストの華ともいうべきフリー・ポーズが、ことしの日本最高レベルのビルダーたちによって乱れ咲いた。

 長年のトレーニングの結果、築きあげた肉体を通して「何もの」かを訴えている。文字や言葉を用いて表現するのではない。ビルダーが肉体を通して表現するものは、たんに筋肉の大きさばかりではないのだ。

 このポージングの短い時間のあいだに、選手と観衆の心が完全に融け合って醸しだされるドラマの素晴らしさはとうてい筆舌に尽くせぬものだ。

 大観衆は、ボディビルダーの美の極致に魅了され、熱いタメ息をつくのみであった。

 アッという間に決勝審査30分が過ぎ去り、場内には虚脱感にも似たものが流れた。

 審査の結果は、おおかたの戦前の予想どおり、第17代ミスター日本の栄冠は末光健ー選手の頭上に輝いた。

 この末光は、いままでの日本のビルダーの中にその例を見ない、筋肉のスゴ味で勝負するタイプの、文字どうりコンテスト・ビルダーの典型だ。

 数年前より定評のあった背筋の見事さに加えて、ゴムマリをつけたような大きな肩、深く彫り込まれてゼイ肉のひとカケラもない腹筋、他の部分に丁度釣り合いのとれる太さの腕、形よく大きく切れ込んだ胸。どれをとってみても迫力十分だ。

 脚を除いた4つの部分賞とモスト・マスキュラーマンのタイトルを独占したことからもそれが証明された。

 ミスター日本コンテスト終了後、突如来日した'70ミスター・アメリカ優勝'70〜'71NABBAミスター・ユニバース・コンテストのショートマン・クラス優勝のクリス・ディカーソンが、この末光を見て、「来年のミスター・ユニバース・コンテストのショートマン・クラスの優勝は、おそらく自分か末光選手のどちらかだろう」と語っていた。

 外交辞令としていくらか割引いて受け取るとしても、彼の本心がチラついていたと解釈してよい言葉だ。

 これから1年間、努力と精進を重ねて、来秋のミスター・ユニバースで健斗する末光にファンとともに声援を送りたい。
末光健一選手

末光健一選手

"抜群のポージング−−杉田  大胸筋とバランス−−石神"

 杉田は石神の猛追を振り切って2位の座を死守した。

 本誌10月号のミスター日本予想記事のなかで、私は優勝候補を末光、杉田、小島、宮本、小笹の5名に絞った。そのうち、小島、宮本、小笹が欠場したのだから、杉田としても準優勝は余人に譲れないところだ。

 全選手がリラックス・ポーズで整列したときには、お世辞にも杉田を優勝候補としては指名できなかった。だがひとたびポージングしたときに、この男は変身したのだ。

 スポーツマンらしいキビキビした持ち味を遺憾なく発揮したポーズは、見る者を幻想の世界に誘い込んだ。

 冷静な目で部分部分の筋肉を観察すれば、バルクがあるでもなく、デフィニションがよいわけでもない。自分の体の持ち味と短所を彼自身知り尽くしているのだ。その体を部分としてではなく、全体として表現するところに巧さがあるわけだ。

 このように感じたままを率直に書いたが、その後の情報によると杉田は8月の始めから9月半ばまでの約1カ月半を、事情あってまったく練習できなかったようだ。

 お父さんが大病で入院して、大量の輸血が必要となり、杉田が継続的にその供与を行なったため、約6kgの体重減をきたし、本大会の出場は諦めていた。

 だが、周囲から再三の強いすすめがあり、順位を無視して出場を決意。努力の甲斐があって残る1カ月間で何とか体重だけは回復したが、筋肉的には満足のいくところまで調整できる筈はなかった。

 この不利を克服して準優勝した杉田の根性を高く評価したい。

 来年はぜひベスト・コンディションで出場して、ファンにその雄姿を見せてもらいたいものである。

 3位の石神は実によく健斗した。昨年度は10位にこそ入賞したが、その後あまりボディビル界の話題にのぼらなかった。

 それが、本大会の裏審査で、全選手が横3列に整列したとき、最前列に末光とともにひときわ光彩を放つ男がいた。ゼッケン6番石神だ。身長こそ低いが、非常にバランスのよい体だ。とくに大胸筋の大きさが目立った。

 ポーズもまとまりがあり、研究のあとが偲ばれた。短身を感じさせない大胆なポージングを、堂々と披瀝する選手だ。

 だが、一部の審査員の間からは「あまりにもまとまり過ぎた体だ。新人らしい荒けずりなところがない」との批評もでた。

 これは決して石神をけなした言葉ではない。むしろ称賛の言葉だが、今後飛躍的な成長を期待するのに、一沫の不安を感じたのであろうか。来年のコンテストで、一段と逞しさを増した石神の体が、その不安を吹き飛ばしてくれるものと信じている私だ。

 4位の重村は安定した実力を持ったビルダーだ。例年の本大会で常に上位入賞を果していた。身辺に漂よわす雰囲気は現役ビルダー中最右翼のものを持っている。知性派ビルダーといわれるところだ。

 昨年に比較してひとまわりのバルク増加が認められ、線の太い体になっただが、そのバルク増加に気がついた観客がどれだけいたろうか。

 体つき、ポージングなどファンの頭の中には重村の固定したイメージが焼き付いているのではなかろうか。そんな反応を観客から感じ取ったのは私だけではない筈だ。同様の意見が多数聞かれた。

 今後ミスター日本優勝を十分狙える選手なのだから、思い切ったイメージ・チェンジを図ってはどうだろうか。

 とはいっても、現在の素晴らしい体形、ポージング、雰囲気をそこなったのでは何の意味もないので、難しい注文だ。

 5位の須藤は、前述のように石神とともに人気が集中した新人だ。

 私は8月8日のミスター中部日本コンテストで、ゲスト審査員を勤めた折この須藤を始めて見た。このときは、長崎清、大石秀雄、金森隆機についで4位だったが、その天性ともいうべきプロポーションのよさに魅せられたものだ。

 そのコンテストの講評で私は「この中部日本地区から、近い将来ミスター日本級の大物が出現するとしたら、この須藤を置いて他にはない」と断言したものだ。

 その後、ミスター実業団青年の部優勝に続いて、本大会5位入賞の快進撃よく奮起してくれたものだ。

 脚の部分賞授賞の蔭にかくれたが、下半身に負けないほど立派な上体だ。首が極端に細いのはいただけないが、来年はこれを克服してくれるだろう。

 174センチの身長と、20才の若さから、期待するところは無限に拡がる。

 決勝進出者のなかで、抜群に拙いポージングだったが、ことしは何もいうまい。心おごることなく精進を重ねることができたら、必ず大成する選手だ一番の敵は慢心と銘記すべきだ。

 6位の水上は予想外の健斗をした。9月18日のミスター東京コンテストでは、私も審査員の一員だった。このときの感想では、正直いって、ことしのミスター東京入賞者のなかから、ミスター日本の決勝進出者はでないのではないかと思った。

 彼はその予想を見事ハネ返してくれた。どこといってとくに目立つところはないが、全体によくまとまっている。

 学連のコンテストに出場経験が多かっただけに、ポージングは板についている。とくに、バック・ポーズの体の捻り具合は見事だ。

 もうひとまわりスケールを大きくして、来年はぜひ上位入賞を狙ってもらいたいものだ。
石神日出喜選手

石神日出喜選手

杉田茂選手

杉田茂選手

須藤孝三選手

須藤孝三選手

"小斉平の心意気"

 6位までに入賞は果せなかったが、小斉平の決勝進出は、最大限の称賛の言葉を送るに足ることだ。37才の年令をよく克服して、毎年前進を続けているこの選手には、心から脱帽する。

 もうひと息で予選通過だった、38才の後藤とともに、ビルダーの鏡といいたい。

 宇戸は来年おおいに期待できる選手だ。従来はバルクのみに頼って、筋肉のカットが足りなかったが、今年はその弱点を多少なりとも補っていた。

 これから一年、デフィニション獲得と、ポージングの研究がゆき届けば、来年は上位入賞どころか、優勝争いの一角に加わることも望みなきにしもあらずだ。彼の順位を上まわる潜在的実力を高く評価した。

 木本は腕と脚のバルクの大きさで、他の選手を圧していた。だが、惜しいかな脂がのりすぎていた。今後はバルク増加の考えを捨てて、デフィニション獲得に邁進すべきだ。

 多少バルクが落ちても、その分だけデフィニションと取り替えることができれば、いまの木本にはどれだけプラスになるかわからないのだ。

 その心の切り替えができれば、宇戸と並んで、来年は予想外の活躍が期待できるところだ。

 何はともあれ、選手層の厚さが目立った本大会であった。(文中、選手の敬称は略させていただきました)
小斉平豊選手

小斉平豊選手

宇戸信一選手

宇戸信一選手

お詫び

 10月9日共立講堂で開催した、本協会主催'71ミスター日本コンテストに際し、シュワルツェネガーとコロンボの両選手のゲスト・ポーズを予定して、その旨をプログラムにも掲載しましたが、両選手から何の連絡もなく、一方的にその契約を不履行された結果、不出場となり、当日ご来場のファンの皆様に多大のご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

 現在、本協会では両選手の真意を究明のうえ、善後策を講ずべく、只今調査中でございます。実情が判明しだい発表する所存ですので何卒よろしくお願いいたします。

日本ボディビル協会

理事長 小寺金四郎
'71ミスター日本コンテスト上位入賞者6名の選手に対する各審査員の採点表
記事画像8
 10月8日開催の日本ボディビル協会理事会の決議にもとずき、上位6名の選手に対する各審査員の採点を発表します。

 得点および順位の決定は、日本ボディビル協会ボディ・コンテスト実施規程により、各選手に対する最高点と最低点をカットして、残りの9名の審査員の合計得点による。
月刊ボディビルディング1971年12月号

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