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Invitation to Bodybuilding ~ ボディビルのすすめ ~1969年10月号

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月刊ボディビルディング1969年10月号
掲載日:2018.01.23
 バーベル・トレーニングを通じて作り上げられるたくましい肉体にともなう強じんな精神力……これこそ、ボディビルが生む最大の産物である。ビルダーでも、この無形の財産に気づかぬ人がたくさんいる。

 体が弱く、何事にもひっこみじあんで性格の暗い人が、肉体を改造するにつれ、明るく、積極的な性格の持ち主に変わっていくのである。

 暗い、みじめな人生を送ってきた青年が、ボディビルを通して人生観を切りかえ、明るい、真実一路の道を進んでいく例はいくらでもある。

 私ごとで恐縮だが、私自身の体験から、ボディビルの効果をのべよう。

 24~36歳ごろまで、胃をわずらい、そりゃあつらかった。なんとか治らぬものか、といろいろ薬をのんだ。だが激務のため休むひまもなく、年中寝不足。酒は飲み、タバコをぷかぷか……ますますいけない。そこで、ふとボディビルのバーベルに目をつけた。あれなら、だれにも迷惑をかけず、自分ひとりでできる。

 さっそく、自宅に器具をそろえ、朝晩どころか、人と話をしているさいちゅうでも、ダンベルを右に左にふりまわしてトレーニング。おかげで、目方はぐんぐんふえ、胃痛もいつしか忘却の彼方。54kgのやせた体は60、63、65、67、70、そしてついに74kgにふえていった。おのれ自身、まっことびっくりした。これほどキキメがあるとは!勇気がわいた。生きる楽しみが加わってきた。自信もついた。男一匹、この頑健な体さえあれば、どんなつらい仕事も耐えぬいてみせるぞっ!こんな気分になってきたのが4年目である。

 何をやっても、長つづきせんタチだが、このボディビルだけは、もう8年近くつづいている。

 それというのも、体質改善に必死だったからだと思う。もし動機が薄弱でそれこそカッコよさばかりを求めてこの道にはいっていたら、とっくの昔にゴルフか、ほかのスポーツにくらがえしていたかもしれない。

 ビルダーの多くを見ても、コツコツたゆまずにやっている人たちは、みな貴重な動機をもっているようだ。

 まことに体の貧弱だった作家の三島由紀夫さんが、小さいながらすばらしい肉体を誇り、すすんで映画に出たり自衛隊にはいったりするのも、もとはといえば、腺病質な体をきたえなおそうとしたからだろう。作家仲間の吉行淳之介さんだったと思うが、「三島がボディビルをやっていなかったら、彼の作風はもっとちがっていたものになっていたろう」といっている。すばらしい頭脳の持ち主だけに、もちろん天下に知られる作品を生み出していたろうが、もっと暗い、ペシミスティックなものがあったにちがいない。三島さんは、いずれノーベル賞を受けるほどの大作家になるだろう。いまでも1作1作が国内、外に波紋を呼ぶ高い評価を受けているのだから……

「作家の生活は、自分の内臓機能との戦いだ」と彼はいっているが、ボディビルでその戦いに勝ち、今日の三島文学を生んだともいえる。まさに「詩人の顔、そして闘士の体」である。

 だから、この道にはいろうかどうかと迷っている人、始めてまもない人たちに、私はこう申し上げたい。

 ボディビルは、肉体、精神ばかりでなく、自分の仕事、生活面に無限の活力をあたえてくれる、と信じることだ。そのためには、何も考えず、ひたすら1カ月間バーベルをにぎり、持ち上げ存分の汗をかいてみることだ。そして自分の体に変化を見いだし、多少の発達を確認できたら、さらにもう1カ月つづけてみることである。この機会に自分自身の肉体上、精神上に革命を試みてみることだ。これは、だれを相手にするものでもなく、おのれ自身を敵とし、克服することによって、生きるために必要な可能性の限界を追求することなのである。

 あるいは、こんなふうに考えてみたらどうだろう。

 あなたが、いささかの費用を投じて身につけたボディビルを通じて、何ものかを再生産するのだ、と。つまり、ボディビルの生産的価値づけである。

 あなたは、まずすばらしい肉体を獲得する。ここでは、病気その他のムダな出費を節約することができる。次に不屈の精神も手に入れる。病気がちな体では、とても考えることのできない積極的な闘争心である。これであなたは、多くの競争相手をしのぎ、サラリーマンであれば、数倍の勤務成績をあげることができる。

 あなたが、自信にあふれた心身をもとに、あらたな事業をおこし、商売をはじめたら、これは文字どおり、ボディビルの再生産価値が立証されたことになる。ボディビルから、あなたは投資した分の数十倍、数百倍の代償をうばいとることだ。(S.S.)
月刊ボディビルディング1969年10月号

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