フィジーク・オンライン

ボディビルへの招待
ストレス解消にボディビルを

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1972年3月号
掲載日:2018.03.06
後藤 紀久
厚生省は先ごろ精神衛生に関する世論調査の結果を発表した。
人間を取り巻く生活環境は日増しに煩雑化し、日常のイライラ(ストレス)を感じる人々が増えているというのである。これが長く続くと、イライラがこうじてセミ・ノイローゼ→ノイローゼへと進んでしまう。こうなると大変である。
さて、その調査結果を示すと、日常生活でイライラすることがありますか?という問に対して、イエスが60%、ノーが38%、わからないが2%だそうだ。
その原因については、仕事の関係28%、家庭内の問題20%、経済問題および健康、能力について18%、家庭外の対人関係17%、交通問題13%などとなっている。
では、ストレスはどうして起こるのだろうか。それは、暑さ・寒さ・不安・心配・怒り・騒音・薬物・感染など(このようにストレスの原因となるものをストレサーという)が加わることによって起きる生体機能の変化をストレスと呼ぶ。
われわれの体はストレスに対して常に一定の反応を示す。この反応様相を汎適応症候群という。そのもっとも顕著な症状は、副腎皮質肥大、血液像の変化(リンパ球、好酸球の減少)、胃腸の潰瘍などである。
前述のようにストレスが生じ、その結果として、副腎皮質の機能亢進が適応現象(警告反応)としてみられる。これは、アドレナリンという物質により刺激された下垂体前葉から分泌されるホルモンACTH(副腎皮質刺激ホルモン)によるものである。このとき副腎皮質中のコレステリンがホルモンに変わるので、同時にアスコルビン酸(ビタミンC)が減少する。
ビタミンCの補給がないと、ホルモン障害のためにいろいろの生理作用が不活発となるので、Cの豊富な野菜や果物の補給が大切である。
また、体内のビタミンB1も消耗するといわれている。ネズミにB1を注射したあとで、ベルと光線と動揺を何回もストレサーとして繰り返して与え、その後、体内のB1を調べてみると、まったくなくなってしまっているという。(学研・岩尾博士)
さて、このようなストレスの原因を完全に解決することは困難としても、そのイライラを処理することは、その人の努力によってかなり可能であろう。
その方法として精神安定剤(トランキライザー)を飲む人もいるが、これは危険なもので素人にはとてもすすめられない。最近、メプロバメート系の精神安定剤は習慣性が強く、中止すると言語障害や強度のけいれんを起こし人体に有害であるという報告もあった。
また、酒を飲んでストレスを解消しようとする人もいるが、これもあまり好ましい方法とはいえない。
それでは何を! それは誰にでも手軽にでき、かつ、体力づくりとしても有効なボディビルに打ちこむに限る。
職場での生存競争、対人関係、交通混雑などでイライラしている人は、バーベルを力いっばい持ちあげ、逞しい体で重くのしかかるストレスを叩きつぶしてしまうのだ。昼休みや終業後に上役・ライバル・売上・公害などの名前をつけたバーベルを、片っぱしからやっつけ、精神的なわずらわしさを打ち破るのだ。
そして、野菜・果物をよく食べ、他人の練習量、体のサイズなどにはあまり気をつかわず、自分の体を鍛えていることをよく自覚して、ストレス解消に励むことが、これからますます複雑になる70年代の社会生活を生きぬく最善の道であろう。
(筆者は、実業団加盟・国立予防衛生研究所ボディビル・クラブ代表)
月刊ボディビルディング1972年3月号

Recommend