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ミュンヘン・オリンピックの重量あげ金メダルを予想すれば

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月刊ボディビルディング1972年3月号
掲載日:2018.01.12
いよいよ今年はミュンへン・オリンピックの年である。ところで日本はいったいどのくらいの金メダルがとれるだろうか、という話が、ぼつぼつうわさされるようになってきた。
そして、スポーツ評論家、あるいは各スポーツ競技団体の関係者は、マスコミの質問に答えて金メダルの皮算用をする。
そのような「専門家」の予想によると、大方は「重量あげはフェザー級の三宅兄弟、ライト・へビー級の大内仁選手が金メダル候補。ことに三宅兄選手の優勝は堅い」というふうに確信をもって言っている。
そして、このような予想は、日本の重量あげファンのみんなが期待しているところだが、果してどれほど現実性があるだろうか。
これに対して「残念ながら、重量あげの金メダルは望めない」という予想もできるのだ。
というのは、細かいことはぬきにしても、大ざっぱなところ、まず考えなければならないのは、東ヨーロッパ共産諸国とソ連のミュンへン・オリンピックへの力の入れ方である。これは、政治的に考えてみれば容易に理解できること。
それを前提にして考えれば、すでにそこから金メダルへの差が生じてくるのがわかるが、その次に「競技判定」につきものの「不公平」も計算に入れなければならない。
というのは、実力が同等なら、判定に左右される可能性がきわめて高く、極論をいえば「判定が勝敗を決する」ともいえる。そして、それは日本選手に有利とはいえないのだ。
それは、ちょうど三宅兄弟(ことに兄)に当てはめることができる。
彼と同等の実力を有するY・ゴルブツォフ(ソ連)、ボイノウスキー(ポーランド)それと、この2人につづくD・シャニゼ(ソ連)、ノワック(ポーランド)が出場するとなると、まったくの混戦状態になり、おまけに中国が参加することにでもなったら、肖明祥選手がこれに加わり、もう誰が金メダルを獲得するか見当もつかない。
その結果、三宅兄弟は金メダルはおろか、3~5位に転落する可能性もある。結局三宅兄弟は405kg前後をマークできるような実力をもたない限り、金メダルは難しい。
また、大内選手は、ライト・へビー級で出場するとなれば、彼が1969年世界選手権大会で優勝した頃と比べ、トータルで20kgも記録が更新され、しかも、まだ5~10kgはすぐにでも更新されそうに予想される。それに対して大内選手は、その後ほとんど記録が伸びていない。
したがって、金メダルはG・イワンチェンコ(ソ連)が出場すれば有力とみられ、K・カンガスニエミ(フィンランド)、G・ホルバス(ハンガリー)あたりがこれを追う形が予想される。大内選手は銅メダルを狙うのが精一杯で、下手をすると6位あたりに止まる可能性もある。
こんな訳で、こんな否定的というか悲観的な予想もできるのだが、重量あげファンはどのような期待と予想をしているだろうか?
いずれにしても、大方の「専門家」の予想のように、理想的な方を実現してもらうべく、選手たちに頑張ってもらいたいものである。(H・F)
月刊ボディビルディング1972年3月号

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