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ミスター全日本選抜コンテストの採点簿
くミスター九州コンテストも同時開催>

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月刊ボディビルディング1972年9月号
掲載日:2018.07.03
JBBA事務局長 吉田 実
昨年度ミスター日本コンテストの上位入賞者と、ミスター日本のタイトルホルダーを招待して行うミスター全日本選抜コンテストが、7月23日(日)福岡県の福岡市民会館で、ミスター九州コンテストと合同で行われた。
招待選手は、'60'63ミスター日本金沢利翼、'69ミスター日本吉村太一、'71ミスター日本末光健一、杉田茂、石神日出喜、重村洵、須藤孝三、水上彪、宇戸信一、それにプロとしてゲスト招待の'66ミスター日本遠藤光男の合計12名による豪華版。
'67ミスター日本小笹和俊、'70ミスター日本武本蒼岳の両選手が都合により欠場したのが惜しまれる。
全日本選抜コンテストは、遠藤プロを除く前記9名の招待選手と、この日同時開催されたミスター九州の上位10名が挑戦する形で行われた。
細かい採点は一切せず、19名の選手の中から、最優秀と思われる選手を1人だけ各審査員が書き出し、指名の最も多い選手を優勝者とした。
桃山和幸審査委員長以下、福井統、浦岡悟、黒木幸郎、政枝勝憲、神谷幸男、赤木享、吉田実の8審査員がその任にあたった。

”レベルの高い九州”

まずは露払いのミスター九州の模様から記そう。
順位は午後2時から行われた裏審査と、午後6時開始の本舞台上、合わせて2回の審査により決定された。
参加選手62名の全体的レベルは極めて高く、ブロック大会としては関東に次ぐものといっても過言ではない。
九州地区では、このミスター九州とミスター西海が大きな大会だ。去る5月14日、佐世保市で開催されたミスター西海を始めて観戦するチャンスを得たときにも感じたことではあるが、いまさらながら九州ボディビル界のレベルの高さを思い知らされた。
九州ボディビル協会が設立されてから今年で16年目というから、これも当然といえないことはない。

”ミスター九州は四強の争い”

優勝は牧島進一郎、小斉平豊、寺川和昭、香月末光の4選手によって争われた。
小斉平は昨年度ミスター日本7位、香月と牧島は本年5月のミスター西海で小斉平を破っているのだから、読者の皆様にもこの大会のレベルのだいたいの見当がつくだろう。
小斉平は、ミスター西海では脂肪ののり過ぎと練習不足から4位とふるわなかったが、このときには復調していた。売りものの脚と腹部に、多少ゼイ肉がなかったとはいえないが、十分に持ち味が生かされていた。
ポージングもベテランらしく落ち付いていた。線の細い自分の体型をよく知っているのだろう。大きなポーズをせずにこじんまりとまとめていた。
7年のボディビル歴をもつ香月は、全体のバランスからすれば、どこにも欠点がなく各部とも円満な発達をとげている。
だが、他の選手と並んでポーズしたときに、迫力をまったく感じさせない。これは、ミスター西海優勝という過信がそうさせたのかも知れない。
ちようど、'70ミスター・アジア優勝直後、ミスター日本で見せた宮本皜のニュアンスと同様である。発奮して精進するならば、ミスター日本で決勝進出も可能な選手だけに惜しまれる。
筋肉的にいえば、肩から腕にもうひとまわりバルクが欲しい。他はすべてよい。
牧島は、本年度ミスター日本で決勝進出可能な1人だろう。予選で落ちるか決勝に残るかのスレスレの線上には7〜8人がひしめいているが、その集団に間違いなく入る選手だ。
筋肉部位では脚、広背、胸、肩がよく、均斉のとれた発達を見せている。ボディビル歴3年とは思えないバランスぶりだ。ポージングも洗練されており、アピールのしかたも心得ている。
寺川は1年3カ月というキャリアが信じ難いほど筋肉にスゴ味がある。このまま発達をとげたら小笹和俊、宮本皜タイプのビルダーに大成すること疑いなし。

ミスター九州の順位は次のとおり。
記事画像1
[ミスター九州1位牧島選手]

[ミスター九州1位牧島選手]

[ミスター九州2位小斉平選手]

[ミスター九州2位小斉平選手]

[ミスター九州3位香月選手]

[ミスター九州3位香月選手]

['71ミスター日本7位宇戸選手]

['71ミスター日本7位宇戸選手]

['71ミスター日本6位水上選手]

['71ミスター日本6位水上選手]

['71ミスター日本5位須藤選手]

['71ミスター日本5位須藤選手]

特筆されるのは、上位6名のうち5名までが北九州から選出されていることだ。北九州ボディビル・センターと住友金属の所属選手だが、恐れいったものだ。
北九州ボディビル・センター会長の政枝勝憲氏によれば「北九州はボディビル人口が多く、しかも経験1〜3年の台頭勢力が目立つ」とのことだ。九州ボディビル界の目となっている。

”招待選手に歯が立たず”

いよいよ本番の全日本選抜コンテスト。待期していた前記の招待9選手にミスター九州の上位10名がチャレンジした。
だが、悲しいかな実力的には遠く及ばず、胸を借りたブツカリ稽古のようだった。ここでは招待選手にのみ焦点を合わせることにしたい。
以下は、本年度ミスター日本の前哨戦としての情報と、ミスター日本優勝者たちの近況報告のつもりで書き流した。
審査員としての立場からも、各選手を採点するのではなく、1人のみを指名すればよいのだから、気持はいたって安らかなものだ。

”須藤選手は格段の進歩”

ポージング順に紹介したい。宇戸信一は昨年のミスター日本で7位だったが、筆者は順位を上まわる潜在的実力を高く評価していた。
7月2日のミスター愛媛で見せたゲスト・ポーズのときには、脂が多くバルクのみしか感じられなかったが、僅か20日後のこの大会では、いくぶんなりともデフィニションの影らしきものが認められた。
一番の売りものである腕を中心としたポーズを繰り返す。確かに腕の迫力では参加選手随一だ。だが、バックが弱い。
水上彪は、昨年に比べ完全にひとまわり大きくなった。昨年ミスター東京優勝、ミスター日本6位入賞に気をよくして、練習に精を出したものと容易に想像がつく。
体に丸味がでてきたが、厚味がもう少し欲しいところだ。部分的には肩のバルクをつけたい感じ。リラックスしているときはいいが、ポージングすると、ベテラン選手と比較して、何かもう一息もの足りない感じがする。
須藤孝三は昨年より格段の進歩をみせた。そうそうたるメンバーに伍して一歩も譲るところがない。むしろ、下半身では断然リード。胸、肩、首のバルク・アップが目立つ。しかし、これはリラックスしているときの話だ。
ポージングしたときに、体の伸びがほとんどない。有力選手は、ポーズすれば何割かは実力以上の体に見せるものだ。
須藤はむしろポーズしないほうがよい点がつく。下半身はともかくとして上半身を大きく見せられず、全体に縮こまっている。ベテラン相手では荷が重いというところか。上半身のポージング技術が今後の課題だ。
重村洵は、昨年に比べほとんど進歩していないように見受けられるが、ひとまわりずつ進歩した他の選手に混っても、安定した実力を感じさせるから不思議だ。
イメージ・チェンジを図って、とり慣れたポージングに新味を出そうと努力していることは判るが、まだシックリと決っていない。これがもし、ポージングの崩れにつながるものならば、一考を要する。最大の課題は小手先のものではなく、バルク・アップだ。
['71ミスター日本4位重村選手]

['71ミスター日本4位重村選手]

['71ミスター日本3位石神選手]

['71ミスター日本3位石神選手]

['71ミスター日本2位杉田選手]

['71ミスター日本2位杉田選手]

[全日本選抜コンテスト優勝末光選手]

[全日本選抜コンテスト優勝末光選手]

['69ミスター日本吉村選手]

['69ミスター日本吉村選手]

['60'63ミスター日本金沢選手]

['60'63ミスター日本金沢選手]

'72ミスター日本優勝候補は杉田

石神日出喜は、昨年からとくに大きくなったとは思われないが、体と実力に、落ち着きと安定が根ざしたようだ。とくに、バックのよさでは末光とこの石神の2人が目立った。
体形上から止むを得ないことかも知れないが、いかにもポーズが小さい。ボイヤー・コーばりに、両手を横に広く開いたポーズは成功であり、背の低さを感じさせず、タテ横をそれぞれ四割程度拡張したように見せられるのであるから、他のポーズでも、もうひと工夫の余地はありそうだ。
杉田茂は、昨年に比べて雲泥の差といってよい。
昨年のミスター日本直前、病気の父親のために継続的な輸血と看病のため練習もろくにできずに出場したのだったから、それに比較して進歩なしではお話にならないが、確かに格段の進歩だ。
首から僧帽にかけてはもの足りないが、肩、腕、脚、広背のバルク・アップは目ざましい。ひと口にいって逞しくなった。迫力もでた。
昨年のミスター日本2位というところから、順番からいくと当然今年の最有力候補だが、なぜか今まで筆者は優勝候補として杉田の名前をあげられなかった。しかし、今の杉田にはその資格が十分にある。

”筋肉のスゴ味ではやはり末光”

末光健一は、今秋のミスター・ユニバースに日本代表選手として挑戦することでもあり、当然ながら参加選手中で最高の実力を保持していなければならない。
そして、ファンの期待には十分こたえたが、昨年からの進歩があまり見られなかったのは残念だ。とくに、食事のアンバランスが原因なのであろう、肌のブツブツした多くの吹出ものは、国際コンテストでは大きく減点されるのは必定。
何をするのにも、日本ボディビル界の選手の目標になるのだから、自重を要望したい。
部分部分の筋肉のスゴ味では、他の選手をまったく寄せつけない。ミスター・ユニバースでの健斗が期待される。吉村太一は肌のツヤ、ポージング、迫力において、'69ミスター日本優勝当時と比較すればいくらか精彩を欠いていたが、さすがにミスター日本のタイトル・ホルダー。
下半身は相変わらず細いが、リラックス時の上半身の大きさは、現役のパリパリと並んでも、むしろリードしている。15代ミスター日本の貫禄といったところか。
金沢利翼は1960年のミスター日本優勝当時は、日本ボディビル界に一時代を作った選手だ。本格的なバルク・ビルダーとして他の追随を許さなかった。それから12年を経た今日、さすがに後進の台頭の前に影は薄れたとはいうものの、これだけのメンバーに伍して、まったく五分に渡り合っているということは、ただただ敬服するばかりだ。
本年度ミスター日本に出場の意欲をもち、ビル・パール、レジ・パークの日本版ともいうべき偉業に挑戦しようとしている彼に声援をおくろうではないか。
ミスター日本までに残すは3カ月、筋肉のキレをひとまわりもふたまわりも刻み込まなければ望みは達成できないが、成就を祈ろう。

”全員一致、末光が優勝”

コンテストの結果は、8審査員がまったく同意見で、末光の優勝が決った。
ミスター・ユニバースを目前に控えた末光であってみれば、ここで余人に遅れをとったのでは男が立たない。勝っておごることなく、ユニバース目指してなお一層の精進を望みたい。
九州地区で始めて行われた、日本ボディビル界最高レベルの選手を一堂に集めたこのコンテストは、九州ボディビル界によき刺激剤となって、今後ますますの発展が約束されるものと信じて疑わない。(文中、選手の敬称を略させていただきました)
月刊ボディビルディング1972年9月号

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