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協会批判にお答えして

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月刊ボディビルディング1972年10月号
掲載日:2018.06.02
日本ボディビル協会事務局長
吉田実
 本誌9月号に、錦糸町ボディビル・センター会長の遠藤光男氏が「日本ボディビル界の過去〜現在〜未来」と題する拙稿への反論と、JBBA批判記事を執筆された。拙稿への反駁だけなら、見解の相違と聞き流せるが、JBBAに対する批判がその大半を占めていたので、事務局長としての立場から批判にお答えせねばなるまい。

 「JBBAは、ここ十数年間なんの普及運動も行事もしていない。それが証拠には、一般の練習者はジムに入会するまでボディビル協会のあることすらほとんど知らない。つまり、JBBAの普及活動によってボディビルを知り、これを実践するためにジムに入会するというケースは皆無に等しい」と氏は胸を張って批判する。

 この意見は、ボディビルをジムという観点からのみとらえており、ジム経営者としての立場から直接的な普及以外を考慮せぬもので、その視野はあまりにも狭い。JBBAとしての大局的見地からの普及活動とは、氏のいわれるような形態のものばかりを考えていない。

 ボディビルが、日本で本格的に行われるようになってから今年で20年、JBBAは設立後僅か18年を迎えたばかり。「バーベル運動をすると筋肉が硬くなりスピードが鈍り、心臓を圧迫して健康に悪い」「コケおどしの筋肉ばかりを発達させるものだ」と、スポーツ界、医学界をはじめとして世間からツマ弾きされていたものが、今日のスポーツ界では男子選手はいうに及ばず、女子選手でさえも必須の運動となった。

 ウェイト・トレーニングを行わずして、一流選手になることは不可能に近くなり、今後この傾向は深まるばかりだ。

 一般人の社会体育においても、今やこのウェイト・トレーニングが、水泳と共に2本の柱になっている。今後、社会体育が国民の間に浸透すればするほど、ボディビル実践者は、増加しても減少することなどまったく考えられない。さらに一歩進めて、全国の学校の正課体育にとり入れられる日も近い。すでに、大学ではもちろんのこと、高校でもウェイト・トレーニングを正課体育にしているところが多くなっている。

 これがすべてJBBAの努力によって達成されたとは間違ってもいわないが、日本のボディビル界の中心にあって、常にリードしてきたJBBAの役割は大きい。これが大局的見地に立つ本当の普及活動といえるのではないだろうか。

 他のスポーツを例にとっても、氏のいわれるような普及活動によって、協会の存在を知ってから、そのスポーツを実践するなどということは皆無に等しい。

 さらに突っ込んで考えれば、現在、全国の民間ジムは同好会を含めても約150軒。かりに1軒平均100名の会員として、これらジムで練習する者は合計15,000名にすぎない。ボディビル人口50万人とも100万人ともいわれている時代に、その何パーセントが民間ジムで練習しているというのだ。

 最近数年間、世間のボディビルに対する認識は急速に深まり、実践者が急増したが、それに比例して、すべての民間ジムの会員が増加したであろうか。答は「ノー」だろう。

 過去20年間、世間の無理解に耐えて努力してきたのは我々ボディビル界の者だ。とくに、実践の場としてジムの果した役割は極めて大きかった。だからこそ、収獲もぜひ既存のジムにしてほしい。

 この大前提に立脚して筆者は、「日本ボディビル界の過去〜現在〜未来」を発表したのだ。一字一句の表現に対し目クジラを立てて反論するよりも、この真意を汲み取っていただきたい。
月刊ボディビルディング1972年10月号

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