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ボディビルの基本 [その14]
デフィニションの問題点

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月刊ボディビルディング1972年11月号
掲載日:2018.03.05
竹内 威 (NE協会指導部長'59 ミスター日本)
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 筋肉のデフィニションをよくするには、筋自体の発達を促すことは、もとより必要であるが、それと同時に、皮下脂肪を薄くすることによって初めて可能になる。

 皮下脂肪とは、文字どおり皮下に蓄積された脂肪であり、生体を保護するためになくてはならないものであるが必要以上に蓄積されると、かえって身体の機能を低下させ、ビルダーにとって欠かすことのできないデフィニションを悪くすることになる。

 皮下脂肪の増減は、食物から供給される摂取熱量と、体が必要とする消費熱量との関係によってなされる。つまり、摂取熱量が消費熱量を上まわれば余剰の分だけ体脂肪となって、皮下にも蓄積されるのである。

 逆に、摂取熱量が消費熱量に満たない場合は、体脂肪がエネルギーになり皮下脂肪がおちるわけである。

 したがって、デフィニションをよくするためには、摂取熱量と消費熱量とのバランスを考えて、トレーニング・スケジュールを組むと同時に、日常の食事の内容にも十分気を配ることが必要である。

 上述のことから、誰しもトレーニング量をふやせば、消費熱量が増加し,皮下脂肪をおとすことができると考えるが、実際には、ウェイト・トレーニングで運動量をふやすということは容易なことではない。むやみにトレーニング量を増やせば、疲労が蓄積され、オーバー・ワークになってしまう。

 とくにボディビルの運動は、どちらかというと局部的に体を使用する運動が多い。それも、過重負荷を与えて行う運動であってみれば、局部的に疲労もかなり強いものになる。そのような性質の運動を、体の回復能力を考えずに多く行えば、当然のことながらオーバー・ワークになってしまう。

 では、回復しやすい状態で消費熱量をふやすにはどうしたらよいか。それには次の3つが考えられる。

① 局部的に強度な筋肉疲労をもたらす運動はあまりふやさない。
② 比較的回復しやすい全身運動を行うようにする。
③ 日常生活において積極的に体を動かすようにする。

ランニングの有効性

 つまり、過重負荷による運動をふやして消費熱量の増加をはかるよりも、体操やランニング等の、比較的筋疲労の軽い全身運動を行うことによって、消費熱量をふやすほうがよいということである。(註・ウェイト・トレーニングとランニングでは、筋疲労の性質が多少異なる)

 とくにランニングは、体脂肪をおとすのに有利である。しかし、ランニングが体脂肪をおとすのに有効だからといって、ただ走ればよいというものではない。ダラダラと疲れない程度の速度で走るのでは、あまり速効的な効果はない。できるだけカロリーを多く使うように走ることである。

 走ることにおける速度とエネルギー消費の関係は、スピードが倍になればエネルギーの消費は約8倍になるといわれている。そのような、速度とエネルギーの相関関係から、ダラダラ走るよりも、できるだけ速く走ることのほうが、いかに多くのカロリーを消費し体脂肪をおとすのに効力があるかがわかると思う。

 ランニングによっても、もちろん筋肉の疲労はともなうが、いわゆるボディビルの運動と疲労の性質がいくぶん異なるので、慣れてしまえば比較的速く回復するようになる。とはいうものの、極端に長い距離を走ったり、ランニングの頻度を多くすれば、局部的な疲労というよりも、全身的な疲労をもたらすので、その点をよく自覚して行うことである。

 以上に体脂肪をおとすためのランニングの効力について述べたが、体脂肪をさらに速やかにおとすには、日常生活において、できるだけ体を使うことが大切である。

 ボディビルのトレーニングに使うために体力を温存しようなどと考えて仕事や日常生活でなるべく体を動かさないようにするようでは、体脂肪をおとすことはできない。1日の消費熱量を増加させるために、普段から積極的に体を動かすように心掛けることが大切である。

食事と皮下脂肪の関係

 皮下脂肪をおとすために、食事の内容を制限することは、これまた誰しも考えることである。

 最初に述べたように、摂取熱量と消費熱量との関係において、余分の熱量が脂肪となって皮下に蓄えられたのが皮下脂肪であるから、当然、摂取熱量を制限することによって、皮下脂肪を少なくすることができる。

 まして、ボディビルの運動における1セットの熱量消費が約5〜7カロリー(運動種目によって多少の差異はあるが、中級者が1セットを30秒で10回の反復をしたとして計算)であってみれば、なおさら食事の内容を制限することのほうが得だということになる。

 ボディビルの運動を、かりに10セットふやしたとしても、それによって消費される熱量は50~70カロリーである。これを単にカロリーの点からみれば、10セットに消費される熱量は、茶碗半分の米飯に含む熱量にもおよばない。であれば、オーバー・ワークになることを心配しながら、無理にセット数をふやすよりも、茶碗半分の米飯を制限するほうがよいということになる。

 では、どのような食べ物を、どのように制限すればよいかというと、まず動物性の脂肪をできるだけとらないようにすることである。

 肉類はビルダーにとって欠かすことのできない蛋白源であるが、できるだけ脂肪の少ないものを食べるようにする。たとえば、牛肉ならばバラとシモフリはさける。豚肉は脂肪分が多いから食事の内容から除外し、鶏肉かクジラの赤身のものを食べるようにするとよい。

 次に主食類(米飯・うどん・そば・パン・いも類)は、主成分が炭水化物であるが、炭水化物は余分にとると、余剰の分は体内で脂肪に変化するのでこれも制限する必要がある。とはいっても、炭水化物の摂取を極端に制限すると、作業能力の低下をきたすので、多量に制限しないようにする。
 植物性の油脂については、さほど気を使うことはないが、これも脂肪であるから1g当り約9カロリーの熱量があることを忘れてはならない。多量にとれば、摂取熱量が増加し、皮下脂肪の蓄積につながることになる。

 その他、菓子類、甘味ジュース等は一般にカロリー価が高いから、これらはなるべくひかえたほうがよい。

 では次に、肉類の脂肪含有量と、主食類の含有熱量をあげてみよう。
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 以上、体脂肪をおとすための食事について述べたが、いかにデフィニションをよくしたいからといって、極端に減食することはさけなければならない。極端に主食類を減食すると、体内の糖質が欠乏してエネルギーの燃焼が悪くなり、作業能力をいちじるしく低下させる。そのような状態は、もはや正常な状態とはいいがたく、これを継続するならば、必ず健康を損ねることになる。

 また、当然のことながら、脂肪と炭水化物の摂取をある程度制限したときでも、必要な他の栄養素(蛋白質、ビタミン、ミネラル等)は十分に摂るようにしなければならない。

 水分については、体重の増減が目的ではないので、ことさら制限する必要はない。水分をとりすぎたからといって、皮下脂肪が増すということはないから、必要なだけとるようにすればよい。

デフィニションをよくするためのトレーニング法

◇レピティションについて

 一般に皮下脂肪をおとすには、運動における1セットの反復を低回数で行うよりも、多回数で行うほうが適していると考えられている。

 しかし、極端な低回数で行うのでないかぎり、回数のことはあまり問題にすることはない。強いて回数を問題にするならば、1セット8〜15回ぐらいの回数がよいと思われる。

 いかに重い重量を使用しても、1セットの回数を2〜3回で行うのと、適当な重量で1セット8〜15回の反復回数で行うのと比べれば、その消費されるカロリーは、前者のほうが少ないのは容易に察することができる。

 では、もっと重量を軽くして多回数で行えばどうかということになるが、確かに消費熱量は増加するが、負荷が軽くなりすぎて、筋肉を肥大させるという点で不適当になってしまう。

 したがって、筋肉を肥大させるのに必要な負荷をかけながら、しかも、カロリーを多く消費するとなると、極端な低回数も、また極端な高回数もデフィニションをよくするのには適さないということになる。


◇運動種目について

 冒頭に述べたように、筋肉のデフィニションをよくするには、筋自体を発達させることもその条件の1つである。いくら皮下脂肪を薄くしたからといって、筋肉の隆起とキレがよくなければ真にデフィニションのよい体とはいえない。
 では、次に体の各部ごとにデフィニションをよくするのに有効な運動種目をあげてみよう。

<胸の運動種目>
①プーリー・クロス・オーバー(胸の高さで引く)
効果。大胸筋の内側の発達を促し、キレをよくする。
②プーリー・クロス・オーバー(肩よりもやや高い位置で引く)
効果。大胸筋上部、とくに内側の発達とキレをよくする。
③プーリー・クロス・オーバー(グリップが下腹部の前にくるように)
効果。大胸筋下部の発達を促す。

<背の運動種目>
①クリーン・アンド・プレス
効果。とくに上背の凸凹を増す。
②ワン・ハンド・デッド・リフト
効果。とくに下背の凸凹を増す。

<腕の運動種目>
①プッシュ・アウエイ
効果。上腕三頭筋のキレをよくする
②コンセントレーション・カール
効果。上腕二頭筋のピーク(頂点)を高めキレをよくする)

<脚の運動種目>
①レッグ・エクステンション
効果。大腿四頭筋をカットする。

<腹の運動種目>
①クロス・ベンチ・シット・アップ
効果。腹筋の上部から中央をカット
②シーテッド・レッグ・レイズ
効果。腹筋の下部から中央をカット

(註)クロス・オーバーは、自転車のチューブを利用して行うとよい。

 またレッグ・エクステンションはアイアン・ブートで行なってもよい。上に述べた以外の部分については、それぞれの筋肉を発達させることでキレをよくすることができる。
プーリー・クロス・オーバーは自転車のチューブを使ってこのように行ってもよい。

プーリー・クロス・オーバーは自転車のチューブを使ってこのように行ってもよい。

月刊ボディビルディング1972年11月号

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