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〝無農薬食品〟

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月刊ボディビルディング1975年5月号
掲載日:2018.03.25
野沢 秀雄

1. 野菜の季節デス

 青葉・若葉がさわやかで、すがすがしい季節がやってきた。畑の野菜もいちだんと、緑あざやか。生野菜にマヨネーズをかけてパリベリ食べると、なんともいえない健康感と幸福感が味わえるのもこの季節だ。
 だが今年はちがう。新聞やテレビで「複合汚染」が話題になったが、なにも知らないで食べていると、あとでコワーイ影響が出てくる心配があるからだ。

2. いつのまにか変った農業

 昔はワラや鶏糞や人間様の排池物が畑に肥料として与えられ、「寄生虫」の心配はあったものの、自然のしくみでムダなく資源が利用され、一つのサイクルを描いていた。このバランスをくずしたのが化学肥料と農薬である。農作業を楽にし、収穫をあげるためにチッ素・カリ・リン酸・硫酸アンモニウムなどの化学物質をジャンジャン農地に与えて、確かに葉はよく繁げり。実も大きくできるようになった。だが同時に、地中に住んでいたミミズや小さな虫たちやバクテリアなどの微生物がみんな死んでしまった……。
 土地は酸性になり、野菜は生命力がよわく、害虫にやられやすくなった。「農薬をかけて虫を殺せばいい」と、今度は、水銀剤や猛毒のリン剤や、ホルマリンの仲間の物質や、AF2に似た農薬がジャンジャン散布される。しだいにエスカレートして、「虫がつかないように、あらかじめ野菜の表面をコーティングしよう」と、まるでペンキでも塗るように、最初に接着剤の役割をする物質をかけて、雨やかん水でも流れにくくし、そのうえから、防虫剤や防かび剤をかける習慣になってしまった。おかげで、家庭の水道で洗っても、なかなか農薬は流れにくいのだ。
 それだけではない。市場へ出荷する前にわざわざ光沢を出すために薬剤をふりかける。こうすると、パリッといつまでも色が鮮やかで、しぼむことも少ないという。
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3. フルーツよ、お前もか

 最近のミカンが腐りにくくなったのも、出荷前にワックス掛をしてピカピカ光らせるためだ。リンゴは熟さないうちに木からもぎとって、農家の縁側で日光浴させる。そうすると、「富士」「日本一」「世界一」といった、うすいピンク色のリンゴができあがる。たしかに色はきれいだけど、栄養がなく、味がまずいリンゴになる。
 いちごも最近はジャンボサイズになったが、品種改良のほかに、成長ホルモン薬を「これでもか、これでもか」とあびるように与える。当然ながら、野生のいちごとちがって虫がつきやすいから、こんどは農薬を与える。さらに出荷のときは光沢剤をぬる。まるで「ばばあの厚化粧」のようなイチゴをわれわれは食べさせられるわけだ。
 トマトにしても、水ぽいばかりで、すこしもうまくない。昔は洗って皮ごと食べられ、しかも皮にビタミンAが含まれ、結構うまかった。現在、トマトの皮についている農薬は洗ってもなかなか落ちないし、中性洗剤をつかえばかえってその成分であるアルキルベンゼンスルフオン酸ソーダの毒性のために、手だけでなく、胃腸の内部まで害をうけかねない。
 また、健康にいいはずのレモンまでジフェニールという。ナフタリンに似た防腐剤が使用されている。白ネズミを使った実験によると、ジフェニールの投与で肝臓がやられ、寿命が短かくなるほか、発ガン性の心配もあるという。
 こんなこわい毒物がレモンの皮に散布されているのだから、「皮ごとムシヤムシヤ食べる」ような行為は自殺と同じだし、レモンティーに皮のついた輪切りレモンを浮べることさえ危険というわけだ。

4. 責任はわれわれにもある

 だが農家の人がすべて悪いわけではない。むしろ、危ない農薬を扱うために、神経がやられたり、目や皮ふがやられたりで、ひどい目にあっている人が多いのだ。
 若い働き手は都会にとられ、イヤでも農薬をまかねばならない。都会の消費者は虫のついた野菜にはソッポを向き、買いたたく。曲ったきゅうりは安くしか売れないので、畑ではきゅうりの尾に分銅をつけて、ウェイト・トレーニングをやらせるくらいなのだ。
 泥がついた大根やゴボウも売れないので、農家で水洗いまでして出荷しなければならない。水洗いすると野菜もいたむのが早く、これをさけるために薬をかけたり、ビニール袋で包装されたりする。なんとムダなことか。本当は泥がついていたほうが長持ちするの
にもかかわらず……。
 形のいいニンジンや、形の大きいトマトやイチゴに金を出すけれど、粒の小さいものや、形のわるいものは敬遠する。小さなリンゴや小さいトマトはそれなりにおいしいし、利用の方法もあるのに、どういうわけか。みんなが立派な「富士」や、高い「世界一」につい手がのびる。もっと自然なままの素ぼくな姿を愛したい。工場でつくる規格品ではないのだから……。

5. 安心できる食品はこれだ

 日本は農業をもっと大切にしたい。今では、食糧のうち、7割までが海外にたよっている。自給できるのは米だけ。それも食管制度という、国の税金を使ってのうえの施策で、やっと主食の米だけは国内でまかなっている。
 たとえば大豆・小麦・とうもろこし・でんぶん・砂糖など、ほとんど外国産だ。日本古来の伝統ある「みそ」「しようゆ」「納豆」や、「あんこ」「きなこ」なども、その原料はアメリカや中国、東南アジア産であることが多い。いったん戦争になり、食糧の供給がストップすれば、一億人あまりの国民はたちまち餓死してしまうであろう。
 国土を豊かに、そして農業人口をふやし、農業で食べてゆけるようにならないものか。さしあたり、われわれも家庭のベランダで、野菜の種の一つでもまいてみるのがよいだろう。農薬や化学肥料の心配がなくなるほか、「自然」に対して、親近感をいだく絶好のチャンスである。八百屋で野菜を買うなら、どんな野菜が安心か――。農薬をあまり使わない野菜は、みずな・ほうれん草・ごぼう・かぼちや・もやし(もやしでも漂白して白くなっているのはダメ)など。反対に、農薬を多く使う野菜は、キャベツ・白菜・レタス・セロリ。それに、シーズンはずれの裁培野菜だという。
 洋食に出てくるものや、野菜サラダでバリバリ食べるものがあぶない。もやしは自分でも比較的簡単につくれるから、興味のある人はやってみるのも面白い。

6. 危機から脱出する方法

 私は以前から、「トレーニングで汗を流すと、カドミウムや亜鉛など、体内にとりこんだ毒物が、汗と共に出てゆくので体調がよくなる」とおすすめしてきた。そして、日光浴でも同様に汗といっしよに有害物が処理されることがわかっている。海や山に出かけて、汗をながし、おいしい空気を腹いっばい吸うことが何よりも体にいいのだ。
 都会生活はあまりにも人間をムシばむ。車の排気ガス中の毒物は吐いても吐いても、体内に少しずつ蓄積してゆくことが心配だ。といって、田舎は農薬や化学肥料で、クスリのにおいにあふれている。どこにいっても同じようなら、せめて、トレーニングで身をまもるしかない。そして、よい食事をとり、栄養を高めて、身体の抵抗力を強めておくしか、健康に生きのびる方法はないようだ。
〔筆者は明治製菓食品事業本部勤務 栄養士〕
月刊ボディビルディング1975年5月号

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