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続 ”プロティン・パウダー”

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月刊ボディビルディング1975年6月号
掲載日:2018.03.12
野沢 秀雄
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1.「もっと溶けないかな」

 プロティン・パウダーを使いなれた人なら、たんばく質のパーセントの高いものは溶けにくく、水にサッと分散しにくいことをある程度知っているが一般の人たち、とくに家庭の主婦やサラリーマンが始めて使ったときには、コーヒークリームやココアのイメージがあるせいか、とまどうようだ。「水に沈んで溶けてゆく状態は良いが、ダマができるのが気になる」という意見が多い。どのプロティン・パウダーにも共通することなので、今月は再びプロティンをとりあげ、良い使い方、悪い使い方を述べてみよう。

2.おもしろい現象

 スキムミルクやココア、あるいはコーヒークリームが溶けやすいのは「糖質」を多く含むためだ。プロティン・パウダーでも、ある社のものはたんぱく質含有量が低く、糖質が多いため溶けやすい。だが、そうかといって糖質をふやすと、脂肪太りの心配がおこり好ましくない。なるべく糖質を少なくして、しかも溶解性がよく、栄養効果のある製品が望ましいわけだ。

 最近になってプロティン・パウダーについて興味深い実験結果が判明した。製造直後は溶けにくいが、日数がたつにつれ、だんだんよくなることだ。工場で生産された翌日に測定すると、7gのプロティンを牛乳に溶かすのにスプーンで3分半攪きまぜなければならないが、1カ月で2分、2カ月で45~50秒でOK。しかもこの傾向はなおも続いているので、やがて30~40秒で、すっかりダマがなく溶けることになろう。実際、輸入品の多くは海を渡って日本に到着し、関税などの手続きをとるあいだに、2カ月くらいは経過するので、かなり溶けやすい。国産の製品もテストセールで判明しているように、期間が少したてば同じくらいか、それ以上に溶解性はよくなる。1缶を1ヵ月で食べるとして、底に近づくにつれてずい分飲みやすくなっていることに気づくにちがいない。

3.安全で、効果の大きいもの

 実をいえば、最新の化学技術を使えばもっと溶けやすくすることが可能である。界面活性剤のあるものは分散をよくして、ちょうど合成洗剤のようになめらかに溶かしてしまう。だがこれは人体に危険であり、こんな物を使われたら胃腸や肝臓がまいってしまう。体に良い物だけを集めて製品にしないといけないのだ。合成添加物を使用しているかどうかは分析してみるとすぐにわかる。
「今までのものは表面にはじけて沈まないけど、新製品のこれはいいですね」「この秘訣はなぜですか?」ときかれることがあるが、くわしい方法は企業秘密なので公開はできないが、秘密の一つだけを紹介するならば「小麦胚芽油」の採用であろう。多すぎても少なすぎてもいけないある量を加えることにより、溶解力や分散がよくなる。「湿ったのかな」「水分が多いのでは?」と疑問に思う人もあるが、決してそうではなく油のためにパサパサしているわけだ。指でつまんでこすってみればツルツルするので容易に理解されよう。

 ついでながら、小麦胚芽油にはビタミンEが多く、筋肉の強靭さや血管の若さをつくるほか、強精強壮の効果があるし、カンゾウやレシチンはホルモンの原料で強肝作用を持つ。さらにメチオニンを加えて、動物性たんばく質とまったく同じたんばく質効力(プロティン・スコア100)を持つように配合したほか、1日に必要なビタミンAB1・B2・Cの1/3を、大さじ1杯(7g)のプロティンを飲むことにより補給できるように配慮したのが新発売の「セシリア85%プロティン」だ。

4.96%VS85%・84%・79%・76%

「輸入品は96%のものがあるのに国産ではどうしてないのですか?」という問合せも多い。原料の大豆たんばくパウダーのみをパックすると、国内でも96%(無水物換算。実は96%といっも実測してみると、水分6%・灰分6%程度含まれ、本当の蛮白質は100g当り平均90gであることが多い)の製品はいくらでもでき、かえって値段も安くできる。しかし単に96%というだけで、体内へ吸収され、利用されるパーセントはずっと少なくなる。大豆たんばくのプロティン・スコア(たんばく質の利用率)は56。すなわちそのままでは半分近くが利用されずに終ってしまうことになる。しかも消化率は大豆78、とうふのようにいったん抽出したもので93%である。単純に数字が高ければ高いほどいいものではない。
 ある有名なビルダーは次のように語っている。「アメリカでは商売のためにプロティンはプロティン、ビタミンはビタミンというように別々に販売して業者は利益をあげているが、こんな無駄はバカらしい。一度にバランスよく食べられ、しかも効果の大きい製品が一番望ましい」――良心的に販売しようとするなら、このような点までよく調べて納得のいく製品を売ってもらいたい。「食べても効果がない」とか「腹が変な気分になりまずい」ような製品では困る。
 
96%以下のものは配合にそれぞれ工夫がされている点は好ましく、あるものは純植物性であったり、動物性のカゼインやホエイ・卵パウダーのプロティンを加えていたりするが、注意したいことは、酸性食品であっては体が疲労し、バテやすいことだ。アリカリ性がどのくらいかを調べてから使わないと、かえって体調をくずしマイナスになることが多い。

5.おいしく飲むには

 プロティンパウダーは暖い牛乳よりも冷たい牛乳やジュース(オレンジ・りんごなど)に溶けやすい。卵を加熱すれば白く固まることで分るように、たんばく質は熱が加わるとかえって凝固して溶けにくくなる。顆粒状にしても溶けないのはこのためだ。

 おいしく飲むにはバナナ・いちご・レモン・スキムミルク・カルピスなどと共にミキサーやシェーカーで混ぜると、デラックスなミルクセーキ・ドリンクができあがる。トーストにふりかけたり、スープに入れるのも良い方法である。ダマができても効果にはいっさい関係ない。いったん水溶性になっているので、消化吸収されやすいためだ。

 とくにプロティン・スコアが100になるように研究され配合された製品は無駄なく体に利用され、血液・筋肉・酵素・精液・ホルモン・骨などにかわってゆく。最初飲みづらいプロティンも毎日食べているうちに、だんだんおいしさが分って飲めば飲むほど効果や良さが現われてくる。3カ月くらいを目標に効果を自分の体で確かめるのがよい。

6.良い食べ方、悪い食べ方

 食品公害を追及する自然食主義の人たちも、大豆のたんばく質についてはベタほめのほめようである。「ガンを予防したり治療する効果がある」(柳沢博士)、「胃かいようなどの胃腸病によい」(渡会氏)、「健康長寿ができる」(近藤教授)、と誰ひとり悪くいう人はいない。そのうえ厚生省では「高たんぱく食品」の規格を発表してその許可をとれば肝臓・ネフローゼ・心臓病などの病気や、手術後の体力回復に適した食品としてすすめてよいことになっている。

 したがって、プロティンの用途は単にボディビルのためだけでなく、大学や高校などの運動部の選手やボクシングジム・空手・柔道・相撲などの練習生、および、長距離の運転手・警察官消防士、その他重労働をする人やビジネスマン、あるいは、やせたい人・若い女性・妊産婦・身長や体重をふやしたい子供さん・おだやかな食事が必要なお年寄り・病中病後の体力回復などきわめて広い用途があるわけだ。それだけに良心的に良い製品を販売しなくてはならない。また、使いなれて、その良さを体験したビルダーの手で広めてゆけば、多くの人に喜ばれて、しかも利益も伴ない、職業としても成りたつであろう。

 なぜ上記のような人びとにプロティン・パウダーが良いかについては、紙面の都合もあり別の機会に述べたいが、重要なことは自分の毎日の食事内容を検討して、「自分はどのくらい食べるのが最適か」知ることだ。食事は個人差が大きく、ある人はたんばく質が過剰なうえに、なおもプロティンを飲んで「体が疲れやすい」と訴えている。そうかと思えば、たんばく質が不足して、そのために疲れやすい人もいる。後者のような場合には毎日2回ぐらい、スプーン一杯のプロティンを飲めばずっと良くなる。

 ごはん・パンなどをいっさいとらないで、たんばく質食品ばかりなのもまずい。何度もいうように、ある程度の炭水化物や脂肪をともに食べたときにはじめて、たんぱく質は有効に体成分となる。ふつうの人がふつうの食事に加えてプロティン・パウダーを食べるのなら良いが、炭水化物をゼロにしようとするのはまちがっている。食べたたんばく質が無駄になるだけでなく、かえって体を害する原因になる。体をいたわりながら健康体をつくっていかないといけない。たった一つしかない自分の体だ。安心できる良いものを、良い方法で食べよう。それが成功につながる。
〔筆者は明治製菓食品事業本部勤務 栄養士〕
月刊ボディビルディング1975年6月号

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