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たった3ヵ月で“胸囲を8センチふやした食事法”

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月刊ボディビルディング1975年9月号
掲載日:2018.07.28
野沢秀樹
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1.「だめ兄き」がんばる

 少年サンデー誌に連載の「だめおやじ」は,いつもながらいい線をゆき笑わせてくれるが,こちら「スタミナ・メニュー」の筆者は今日は関西,明日は東北と出張つづき。おかげで読者のみなさんから寄せていただいた「食事分析」もついつい遅れがち。「だめ兄き」だなあと思うけれど,熱心な質問には思わず頭がさがり,四苦八苦しながら返事をかいている。

2.「車輪」の両輪である

 なんといっても嬉しいことは,食事分析のあとで,体位が増加して嬉ばれることだ。「いくらトレーニングを激しくやっても,食事が粗末で,金をかけないといい体はできないよ」という意見があるが,50%は正しく,50%はまちがっている。まず正しい理由をあげよう。

 コンテストビルダーといわれる第一級の選手の体位は,胸囲110cm~120cm,腕囲36cm~44cmと完成されており,食事内容もカロリーは3000カロリー以上。たんばく質も,体重1kg当り2g前後の,理想的な水準に達している。

 反対に,体重が48kg~50kgで「トレーニングをしても疲れるばかりで,筋肉もふえません」と嘆く人たちの食事内容は2000カロリー前後で,たんばく質も1日に60~80gしかとれてない。まったくふつうの人と同じで,これではエネルギーが不足するのも当然だ。トレーニングと食事は互いにバランスがとれていないと,立派な筋肉はつくれず,いわば車の左右の車輪のようなもので,どちらが弱くてもいけないのだ。

 だが,「金をかければいい」というのもまちがっている。やたらぜいたくな食事で,肉・魚・卵・チーズばかり食べても,余分なたんばく質は肝臓で破壊され,アンモニアやイオウとなり腎臓によくないことは医学上の公知事実である。単にムダというだけでなく体に負担をかけ,疲労しやすくなる。それほど金額をかけなくても,うまく組みあわせるとよい食事内容はいくらでもできるのだ。

3.3ヵ月で胸囲が8cmふえた日向野さんの例

 表の①は,埼玉県の学生,日向野さんの分析前・後の食事だ。私の分析ではカロリー2000,たんばく質80gで体重1kg当り1.5gのたんぱく質となり,他の項目をいくつかを総合して,点数が54点となっている。

 そこで表の②のようなメニューと2~3の相談事項におこたえして,トレーニングの継続をすすめておいた。3ヵ月後に,日向野さんから結果報告をいただいたところでは,身長1.8cm,体重1kg,そして胸囲が8cmもふえている。同時に,食事内容は表の③のとおりで,2528カロリー,純たんばく質は102g,体重1kg当り1.93gのたんばく質となり,総合点で91点にも向上している。これらの内容でわかるように,それほど高価な出費なしに,組みあわせるだけで,わずかの間にぐんぐんと体位が向上しているのだ。

 もちろん,食事だけでなく,トレーニングを懸命にしたことや,トレーニングを開始して4~7ヵ月の伸び時期であったこと,そして年令も16歳と若かったことも大いに役立っているが,もしかりに,元のままの食事法で漫然とトレーニングしていたのでは,とうていこんな成果にならないのも事実であろう。実際にある県のBさんという20歳の学生の場合,3ヵ月後にもあまり変化はないというが,食事内容についての配慮があまりされておらず,世の中,「ニワトリが先にできたのか,タマゴが先にできてニワトリに成長したのか」わからないけれど,何はともあれ,食事を充実させないと,はげしくトレーニングするだけの気力・体力・意欲ができないのではなかろうか?
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4.さあこれから,体重をふやすシーズンだ

 現在のところ「体重をふやしたい」という希望の人でも実際には,せいぜい1~2kgの増加であるが,胸囲は,大きくふやしている人が多く,自分のことのように嬉しい。

 春から夏にかけては,人間ばかりでなく,犬・猫・小鳥など動物はいっせいに皮下脂肪がとれ,まるまる太っていたのが,夏は骨と皮だけのようになる。気候にあわせて調節する仕組みなのだから,体重が減るのが当り前でそれを「夏バテ」と思いこみ,悲観することはまったくない。むしろ,これから秋~冬の季節こそ,筋肉と体重をふやす絶好のチャンスなのだ。私たちにとって一日一日はたいへん重要だ。少しでも若いうちに鍛えておくと,同じ苦労で成果は大きい。同じ80kgのバーベルで5セットのベンチ・プレスをしても,20歳前の人と30歳すぎた人では筋肉のつきかたがちがってくる。若い人ほど報われるのが大きいのだ。受験勉強や就職や仕事などいろいろあるが,若いときにつくった体力は一生の財産として自分のものになる。

5.「食事分析」はあなたの何なのか

 ダウンタウンブギヴギバンドではないけれど,「食事分析って何なのさ」ときかれたら,次のように答えている。

①まず自分の食事内容を数字で知って蛋白質がどの位必要かどうかを決められる。つまり,必要以上にプロティン・パウダーなどを使うのはムダだし,反対に,毎日の食事が弱いなら,使うことに決めるとよい。②食事分析の方法を自分でマスターできる。計算をやって,点数で出せれば,自分や友達やトレーニング・センターの仲間の分析ができるようになる。③そのほか,食事のバランスがよいかどうか,太りたい,やせたい,ディフニションをつけたい,などの希望をどうしたらかなえられるか目安がつく。④またトレーニング内容についても,適否の判断がある程度までできるし,体の故障などについてもアドバイスを受けられる。また日ごろの疑問も解答として得られる。

 ――以上のように,基本的な線では一応の判断ができるので,一度知っておくのはいいことだろう。次号以下にひろく読者のみなさんに役立ちそうな実例をもう少しくわしく紹介してゆこう。コンテストに出場するような第一線のビルダーで,「こんな食事法をするとよい」「この食品はこんなに役に立つ」といった例もある。ぜひ広く紹介したいと考えているので,すすんで応募いただきたい。
月刊ボディビルディング1975年9月号

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