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胸囲120cmの体をつくった渡辺選手の食事法

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月刊ボディビルディング1975年10月号
掲載日:2018.08.24
野沢秀雄

<Mr.富山3位渡辺選手から>

 先月号に「コンテストに出場するほどの一流選手は体位がすばらしいのと同時に食事内容もすぐれている」と書いたが、実際に何人かの第一線ビルダーから食事内容が寄せられている。
 その一人、一昨年ミスター富山7位(新人2位)、昨年5位、そして今年は下痢や腰痛などの悪コンディションにもかかわらず、堂々第3位の栄冠をかち得た渡辺博明選手の食事法を紹介しよう。
【渡辺博明選手】

【渡辺博明選手】

<さすが胸囲120cm>

 同選手はトレーニング歴約6年半。今年26才で身長178cm、体重78kg、胸囲120cm、腕囲41cmという大型有望選手だ。送られた写真でわかるように、肩巾が広く、まだまだバルク・アップできる可能性を持っているが、その食事内容は表のとおりで、食事量もバランスも申し分ない。
 ただし私のアドバイスとして、①ごはん・パン・うどんなどが足りない。これはコンテスト前にのみ許されるメニューで、本来の「健康」からいうと不都合なものである。②下痢の原因ははちみつか牛乳のどちらかにあると思われるので、自分で実験してためしてみたらどうだろうか?③夏のシーズンに皮下脂肪がとれて、体重が減少するのは誰にもあることなので気にしなくてよい。④そして次項のたんぱく質必要量、その他についてお答えした。
 その後、コンテスト入賞の知らせとともに「はちみつをやめたら下痢がなおりました」という嬉しい手紙をいただいている。

<たんぱく質についての真実>

 さて、渡辺選手の質問のうち、たんぱく質に関する内容はひろく全国のみなさんにも考えてほしいので、以下にそのまま掲載しよう。
「ラリー・スコットはじめ外人一流ビルダーは1日に200g以上のたんぱく質をとるといっています。ところがスタミナ・メニューには"体重1kgにつき2gでよい。とりすぎるとかえって腎臓に負担をかける”と書かれています。この2つの意見はどちらが正しいのでしょうか?外人ビルダーと日本人ビルダーの差はたんぱく質ではないでしようか?もし見解が正しいというなら、その科学的根拠を教えてください」一文面から熱心に、まじめに考えている様子がよくわかり、結局、次のような返事を送った。
「外国の第一線ビルダーは、体重が220ポンド、つまり、100kg以上あることが珍しくなく、この水準にしたがえば"1日200g”という数字は決しておかしくありません。(シュワルツェネガーは1日240g食べるように指導を受けている)われわれ、どんな激しいトレーニングをするビルダーでも「1日に体重1kg当り2g」とれば十分で、その根拠として、WHO/FAOの出しているコピーをお送りします」
 一この報告書は、強度の重労働でも、体重あたりのたんぱく質はそれほど要求されないことを述べたものである。これらについて、もう少しくわしく考えてみよう。

<とりすぎてはいけない>

 今までに何度かたんぱく質のとりすぎはよくないことを述べてきたが、まとめてみると、
①たんぱく質は脂肪や炭水化物とちがって「食いだめ」ができず、ムダ。
②単にムダというだけでなく、イオウやチッ素など有害物質を作り、肝臓や腎臓にたいへん負担をかける。
③たんぱく質といえども、過剰になれば糖質やでんぷんと同様に「脂肪」に変化して、デフィニションにマイナス。
④酸性食品が多く、体をバテさせる。
 そのうえ、この8月上旬、京都で開催された国際栄養会議で「食事中にたんぱく質が50%に達すると、発がんの危険性がふえる」と、データが発表された。もちろんこれはネズミを使った実験だし、私が今までに分析したどんな選手の食事でも、50%まで達するほどの人は一人もいないのだが、ビルダーの食事は一般の人よりもたんぱく質がずっと多いので、これ以上エスカレートすると危険なことをよくよく知ってほしい。

<トレーニングとのバランス>

 スポーツマンとして、いちばん望ましいたんぱく質は、食事中に17%あることで、一般の何もトレーニングしない人が10~11%であることを思うと、これで充分だ。17%を体重1kg当りになおすと1.5~1.7g程度となり、2.0gを目標にするのは充分すぎるくらい充分の量だ。
 われわれが食べる食品で「食べすぎていい」というものは一つもない。たんぱく質も同じことで、トレーニングはあまりきつくないのにプロテインだけ多く飲んでも意味がない。まず、「たんぱく質が多ければ多いほどよい体ができる」と考えるのは間違いだ。
 プロテインは「これだけを食べればいい」と販売されているのではなく、ふだんの食事で「たんぱく質が足りないよ」というとき、補助的に使用されるために販売されているものだ。自分のトレーニング内容と食事内容にあわせて、価格が高くなく、体にいいものをとればよい。健康で、長生きして、これからやってくる後輩たちのためによい方法、正しい方法でトレーニングしていただきたい。
◇渡辺選手の食事例◇

◇渡辺選手の食事例◇

月刊ボディビルディング1975年10月号

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