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かたい筋肉をつくる食事法

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月刊ボディビルディング1975年12月号
掲載日:2018.07.31
野沢 秀雄

◇世界ーになっておめでとう

 75年の10大ニュースといえば「広島赤へル球団の大活躍」「オヨヨ、これグー、○○○というよりも……など新語をはやらせた桂三枝」「三億円犯人に事効成立」などが頭に浮かぶが、わがボディビル界にあってはなんといっても「須藤選手のミスター・ユニバース優勝」「因幡選手の世界パワーリフティング大会フライ級優勝」「赤へルに負けず意欲的な成果を見せた奥田選手」「IFBBオールジャパン小先選手のすごい筋肉」などがあげられよう。
 とくに須藤選手は、世界の舞台は“初体験”だったにもかかわらず、よく戦い抜き「あなたの筋肉は今までに例のないしなやかさと強さを持っている」と感銘を与えたといい、そのうえ朝日新聞の記事に「さわやかでスポーツマンらしい好青年だ」と紹介され、ボディビルが一般の人びとに認められる大きな力になって、これほどうれしいことはない。

◇肉を食べすぎると逆効果

 期待された杉田選手がショートマンクラスの2位にとどまったのは残念でならないが、河合会長のアメリカ報告によると「毎日食べるのは肉だけ。それも2キロくらいを食べつづけてトレーニングした」という。何回もいうがたんぱく質だけで、毎日のエネルギーまでまかなおうとすれば、体は酸性化し、疲労物質や有害物質が蓄積し、内臓に負担がかかり、最悪の場合は病気になる。プラスどころかマイナスをもたらすのだ。
 このことについて、末光選手はこう語っている。「自分も一時は肉ばかりでコンテストにのぞみました。だがどういうわけか、頭がクラクラし体調が整わず、思うように筋肉に力をこめることができなかった。それ以来トータルのバランスを考えて食べています。お陰で今でも世界に通用する筋肉だと自信が高まっています」――つまり杉田選手の場合も、日本人という自分にあった食生活のコントロールが不適当で、イザというときに「気はあせるが力が思うように出なかった」のではなかろうか?
 「そんなに牛肉ばかり食ってると、体がウシになるぜ」と冗談をいう人があるくらい、片寄った食事は不適当で異常な方法なのだ。ウシでさえ、草を食べてあの肉をつくるのだから、「肉を食べないと筋肉がつくれない」という考えはサッパリ捨ててほしい。ほかのたんばく食品はもちろんのこと、米や麦などからも体内でたんばく質が合成されるのだ。

◇わたし作る人・ボク食べる人

 さて今月は「かたい筋肉をつくる食事法」だが、一般の人は上体を屈めて両手が床につけば「おまえは筋肉が柔らかい」、床につかなければ「彼は筋肉が固い」というように言葉を使っている。柔らかいほうがよい筋肉と評価されているが、確かにこれには一理ある。
 リラックスして自然のままのとき、筋肉は固いより柔らかいほうがすぐれている。力をいれないでも固い場合は疲労物質が筋肉に残っていて、コリコリしており、たいがい、トレーニングのやりすぎ・食事の不適切・精神的緊張のしすぎなどに原因がある。このようなときは、いくらがんばっても良いスポーツ記録は出ない。ポージングをしても筋肉に思うような力をこめることができない。
 ところが良い筋肉は力をこめたときに鉄のように固くなる筋肉で、力を抜いたときと、力をこめたときの硬さの差が大きいほどよい筋肉の持ち主で、大記録やよいポーズがとれるのもこのようなときだ。
 「わたし作る人・ボク食べる人」のCMが男女差別でいけないといわれているようだが、差別があるのは体の構造や原理がちがうから当然だ。女性の体は筋肉が少なく脂肪が多いから柔らかい。子供は男性ホルモンが分泌しはじめる13~14才までは体がポチャポチャとやわらかいのがふつうなのだ。

◇かたい体質をつくる食事法

 力をこめたときに硬い、良質の筋肉をつくりたいと誰でも思うだろうが、まず第一はトレーニングをはげしくおこない、男性ホルモンの分泌をよくすること、第二は食事法だ。
 国立栄養研究所の鈴木博士の研究によると、固い体つきにするには「脂肪の種類」がポイントになるという。東北の農村地帯の小中学生と、東京の小中学生の体質を調べたら、前者の場合体が固く、弾力性があり、ひきしまっている人が多いのに、後者の都会育ちの人は体がフワフワと柔らかく、しまりがない。その原因は、地方では大豆油・菜種油・コメ油・ゴマ油など植物性であるのに対し、都会では牛や豚の油・ベーコン・ラードなど動物性である。脂肪酸の種類がちがうと体質に差ができると報告されている。
 私は必ずしもそれだけでなく、運動量、日光のあたり方、それに次にのべる「たんばく質のとり方」が関係すると考えている。
 牛肉・豚肉・とり肉・魚・卵・小麦・大豆などのたんばく食品と、ハイプロティン・パウダーのようなたんばく質だけを集めた製品をくらべて、体質がどう変るか試験した。これはPERといって、与えたたんばく質1g当り体重が何gふえるかテストする試験の一つとして、20匹のネズミを厳密にコントロールした部屋で約3カ月間飼育したものである。その結果、ハイプロティンは体重が順調にふえたことはもちろん、体つきがひきしまり、毛のツヤがよく、内臓や血液がきれいになるという証明が得られたのだ。

◇こんな方法も研究中

 自分の体質がどうか調べる簡単な方法は、筋肉に力を入れてどんな固さになるかみるとよい。力こぶでもいいし、肩でもどこでもよい。指が入らないような固い人なら、よくトレーニングされた筋肉で、無駄な皮下脂肪があまりないと考えてよい。これと反対に、おさえて柔かければまだまだ余分な脂肪があることになる。この固さを測定する器具もある。またファインメーターといって、皮下脂肪を数字で示す測定器もある。
 さらに特別のスポーツ・マッサージや指圧・ハリなどの方法で体質を改善する方法も研究中である。アメリカからコロンボ選手が来日し、余技に整体術を見せて以来、このような特別の健康法が人気を呼んでいるが、喜ばしいことだ。ボディビル関係者の中で私が知っているだけでも栗山さん、温井さん、長岡さん、武本選手、遠藤選手など、いずれも熱心に研究をされているときいている。
 「総合的に健康を考え、病気や体質改善にも役立てる」という姿勢は大いに期待されよう。いずれにしろ、第一がはげしいトレーニング、第二が食事法、そして第三がその他の補助的な方法である。努力を自分でする精神は決して忘れないでほしい。そこがボディビルの良さなのだから……。
月刊ボディビルディング1975年12月号

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