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スタミナ栄養シリーズ “汗が流れる食事法”

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月刊ボディビルディング1976年8月号
掲載日:2018.04.14
野沢 秀雄(ヘルス・インストラクター)

1. クールクールで夏がくる

 76年夏。いまや暑さのまっさかり。電機メーカーがここぞとばかりテレビの画面に、ペンギン・白くま・ビーバー・さてまた「静御前」まで登場させてクーラーのCMを流している。「おれの部屋にもクーラーがあればもっと能率があがるんだがなあ」とボヤいているヤングが多いにちがいない。
 四方が海に囲まれた日本では温度が高いだけでなく、湿度が高いので暑さがひとしお。汗は蒸発しないでタラーリ、タラーリと流れおち、不快指数が一挙に上昇する。
 毎朝のラッシュの車内で隣の人の汗がベタベタするのは実にイヤだが、そうかと思えばタマに走る冷房車はクーラーがききすぎて、体のしんまで冷えこむ。風邪をひいたり、頭痛・吐き気・発熱がおこったりでロクなことはない。

2. とんでもないまちがい

 本来人間は環境の変化に慣れる力を持っている。夏に向かって皮下脂肪をおとしたり、発汗しやすくしているわけだ。だから少々の暑さも平気なはずである。
 ところが最近は建物の各部屋にクーラーが設置され、サラリーマンは夏でもワイシャツにネクタイスタイルを強いられ、それがあたり前になっている。オフィスに出たり入ったりするたびに体が変調するので、くりかえすうちに自律神経がおかしくなる。これがいわゆる「冷房病」だ。だから私は涼しい部屋で事務をとったりする仕事はイヤだなあと思うし、逆に戸外で汗にまみれてする仕事こそ「健康的だ」と考えている。現代人は文明の発達と反比例して、身体はますます弱くなっている。
 自然の暑さにさかわらず、汗をどんどんかけばいいのだ。ところが多くの人は「クーラーを入れることこそ健康的でぜいたくだ」とまちがって考えている。とりわけ驚いたことに、全国各地のトレーニング・センターで「当ジムは冷房完備です。汗が出ません」と宣伝しているではないか・・・・・・。せっかく流れる貴重な汗をおさえるのは大きなマイナスだ。

3. 汗の効果

 運動するたびに筋肉の一つ一つが発熱する。冬はポカポカ暖まるので都合が良いが、夏は体内の温度が上昇しすぎるので、温度を下げるために汗が流れるのだ。体の表面から汗が1cc流れるたびに0.578カロリーの蒸発熱が奪われる。トレーニングの激しいときは1Lの汗をかくことが珍らしくない。
 実はそれだけではない。汗の中に、亜鉛・マンガン・銅・カドミウム・クロムなど有害元素がとけて流されるのだ。体に入ってきた毒物は汗できれいにクリーニングされるわけだ。
「汗を流すと、とてもサッパリするよ」という実感を持っている人が多いと思うが、これは当然なのだ。ポタポタ汗をかくほど体がきれいになるのだ。
 池袋・三幸ボディビル・センターの斉藤コーチはこう語っている。
「私の健康法は野菜・果物・ビールなどを食べて、トレーニングとサウナで積極的に汗を流すこと。おかげで肌はツヤツヤと元気で疲れません」
 これこそ正しい健康法だ。サウナが無い場合は日光浴とトレーニングで汗をぐっしょりと流してほしい。「汗こそ若さのシンボル」ーコカコーラのCMではないけれど、汗をかくことは貴重なことなのだ。

4. コンテスト・ビルダーの場合

 夏の暑さにめげず、重いバーベルやダンベルに次々と取組んで、キラキラ汗を流してトレーニングしているのをみるたびに、「ああよくやるなあ」と感心する。筆者も昔にかえってトレーニングを再開して毎日四苦八苦しているが、汗をいっぱいかいたときほど調子がいい。
 さてコンテストの場合、舞台に登場する前にせいいっぱいパンプアップ・トレーニングをおこない、汗を流したポージングを見せる選手は、観客や審査員に深い感銘を与えるようだ。ミスター東京コンテストで水上選手が優勝したときがそうだったし、昨年のミスター日本コンテストでは晩秋の寒い日だったのに汗いっぱいの健闘を示した長宗選手が観客の印象に残っている。
 だが大部分の出場選手は、せっかく汗が出ているのをタオルでふいてしまう。体が冷えてはいけないのはわかるが、ポーズをとる寸前まで筋肉に力をこめて汗を流せるだけ流したほうが迫力があってよいと私は思う。

5. 汗を流すときの食事法

 汗が出やすい体質と出にくい体質があるのは事実である。また同じ人でも汗が出やすいときと出にくいときがある。以下のようにまとめておくので参考にしてほしい。
①睡眠や食事をよくとり、体調のいいときほど汗が出やすい。
②トレーニング前に牛乳・プロティン・缶入飲料・人蔘茶など水分の多い物をのむと汗がよく出る。とくに人蔘茶は効果が大きい。
③小便をひかえると汗が出やすいが、そこまでしなくてもよい。ビールなどのアルコールが入ったときも汗が出やすいが、トレーニングは禁物である。
④汗をかいてのどが乾くときは牛乳・レモン・プロティンなどを積極的に飲んでよい。
⑤)有害物質と同時に、ナトリウム・カリウム・カルシウム・ビタミンB1・B2・Cなどが消耗されるので、補給する目的で牛乳・レバー・納豆・小魚類・エビオス・プロティン・ビタミン剤などを摂るとよい。生野菜や果物もビタミンが含まれるので有効である。
⑥コーラや炭酸ソーダ、インスタントラーメン、パンなどは糖質が多く、ビタミン類の不足病になりやすいので食べないほうがよい。
⑦夏の食事は味つけをやや濃くする。食欲不振のときはレモンをごはんや魚・野菜・とうふなどにふりかけて食べる。
⑧たんぱく質の多い食事、温かい食事ほど汗が出る。
⑨夏みかん・レモン・梅干し・カレーライスなどは汗に良い食品である。
⑩睡眠不足で、トレーニングしてもあまり汗が出ず、気分が乗らない日は早く切りあげる。そうしないと腰痛など、筋肉を痛める原因になる。
〔参考〕運動選手の発汗量(山岡氏)

〔参考〕運動選手の発汗量(山岡氏)

月刊ボディビルディング1976年8月号

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