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スタミナ栄養シリーズ
睡眠をよくするには

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月刊ボディビルディング1977年1月号
掲載日:2018.07.27
野沢秀雄(ヘルス・インストラクター)

1.眠れない悩み

 「私は三直交替の勤務で思うように睡眠がとれません」「ボクは神経質なためか夜寝ようとしても眠れずウトウトするばかりです。夜中にちよっと物音がしても目が覚めてしまいます。たまに眠れたかと思うと朝の四時ぐらいに目がさめて、もう一度寝ようとしてもダメなのです。こんな自分がイヤになります。よきアドバイスをしてください」――こんな手紙がよく届く。

 いっぼうではポール・グラントやデール・アドリアンなど外国の一流ビルダーが「睡眠は9時間くらいとりなさい」「よく眠らないと筋肉が発達しない」などと語っており、眠れないビルダーにとってたいへんな問題である。

 だがその反対に、睡眠時間が短くても懸命なトレーニングをおこなって良い成果をあげている人がいる。須藤選手が「睡眠時間をけずっても、予定したトレーニングは欠かさない」と語っているし(本誌10月号)、食事分析をおこなった甲府市の北村昭人さんは、「夜10時に就寝し、午前3時に起床。そして朝7時まで毎日トレーニングします」とくわしいトレーニング内容を知らせてくれている。こうして北村さんは身長170cmで体重68kg・胸囲108.5cm・腹囲74cmの立派な体と筋肉をつくっている。

 また、本誌に執筆している川股宏さんは、毎朝5時に起きて健康増進のために「新聞配達」をしているという。さらに会社の勤務を終えてから毎晩重いバーベル練習を欠かさない。

2.なぜあなたは眠れないか

 人間の体を支配する自律神経には2種類あって、交感神経・副交感神経と呼ばれることはよく知られている。前者は昼間によく働き、仕事や勉強をしたり、運動をするときに活躍する。後者は夜間によく働き、食事をしたり、風呂に入ったり、ゆっくりくつろいだときに活躍する。だからふとんに入って眠るときは交感神経が働きをとめて副交感神経がリラックスしたムードをつくるのが本当だ。そうしないと安眠できないことがわかるだろう。

 にもかかわらず不眠症を訴える人は決まったように「ふとんに入ってからあれこれ考える」という性格や習慣になっている。「しまった、ああすればよかった」「あの人はこんな態度をとったけれどなぜだろうか」「仕事はこうした方がよいのではなかろうか」などと、とりとめもなく考えあぐねる。その結果、頭が冴えるだけでなく、体のどこかに力が入って交感神経が興奮し、イライラするばかりだ。

 内省的であることは美徳の一つであり、それにより自分を進歩向上させるけれど、行き過ぎはマイナスで損である。「今日はこれで良い。明日はまた新しい自分がスタートする!」と考え安心して眠るのがいい。

3.眠れないときはこうする

 睡眠に入れないとき、具体的にどうしたらいいか。私は次の11の方法をアドバイスしている。

 ①眠れないときは、手足・肩・首など体のどこかにギュッと力が入っている。スーッと力をぬいて体を楽にほぐす。

 ②手足の先が冷たいと眠れないので暖める。冬の寒いときコタツや湯タンポは有効である。

 ③呼吸法として、吸う息を短かく、吐く息を強く長くする。逆だと眠れない。寝息のリズムをつかむことだ。

 ④数を数えるのはあまり効果がない。むしろ「ゆうべ見た夢は何だったかなあ」と夢の続きを見るつもりでボンヤリ思い出そうとするのがよい。

 ⑤頭に血液が集まりすぎている場合、起きて軽く体操をしたり、首や肩のマッサージをする。

 ⑥運動不足で体が睡眠を要求していない場合もある。こんな人は1日に1時間、全力を出して汗が流れるトレーニングをやるとよい。

 ⑦不幸にして眠れなくてもいっさい気にしない。神経質な人ほど気にしてますます眠れなくなる。結局1日中仕事に気力がこもらない。

 ⑧全身の力を抜いてリラックスし、眼から額にかけてタオル、手拭などを覆いかぶせる。視界が暗くなって落着いて眠れる。

 ⑨夜勤の都合で昼間寝る人は部屋を暗くしたり眼帯や耳栓をするといい。

 ⑩ふとんはときどき日光に当てて暖かく柔らかくする。毛布も同様にいつも暖かく乾燥させておく。

 ⑪次に述べる食事法を試みること。

4.ぐっすり眠れる食事法

 食事のとり方が睡眠に関係していることが知られている。空腹すぎると眠れないので、そんなときは軽く夜食をとるのがよい。イギリス最大の製薬メーカー、ビーチャム社が「安眠できるホーリックス」という食品を発売している。内容は大豆たんばくにココアや砂糖・ビタミン・ミネラルなどを配合したもので、わが国のハイプロティンパウダーに大体よく似ている。パンフレットに次のような解説が書かれている。

 「ホーリックスを飲んで寝た人と飲まない人をグループにわけて毎日観察実験をおこなった。一晩中に何回寝返りをうつかグラフにとったところ、飲んだ人はあまり寝返りを打たずにぐっすり眠れたのに対し、飲まない人は30回も40回も寝がえりを打ち、夢ばかりみてウトウトする人が多かった」と。

 適度のたんばく質は確かに眠りをよくする。外国映画で就寝前に暖かいココアやミルクを飲むシーンがよくあることを想い出す読者も多いだろう。

 旅行先で眠れないとき、ウイスキーや睡眠薬を飲む人がいるけれど、これは危険である。連用していると効かなくなり、次第に量を増して「中毒患者」になってしまう。酔止めのトラベルミンや精神安定剤(トランキライザー)も同様に危険な薬品である。むしろプロティンやスキムミルクを飲むほうが無害で安心だ。かつ就寝中に筋肉を大きくしてくれる。

5.短くても質がよければ良い

 NHKの生活実態調査によると、現代人の睡眠時間は年ごとに短くなり、平均して男性7時間38分、女性7時間16分といわれている。

 眠れないのを無理して眠ることはないのだ。「眠ろう、眠ろう」と意識すればするほど眠れないのも真実だ。プロティンやスキムミルク、ホーリックスなどを飲んで「ああこれで安心だ」と暗示を受けてぐっすり眠れる人もあれば、反対に「これを飲んだけれど本当に効くのかな?」と疑心暗鬼の人はよけいに眠れなくなる。

 「人間は8時間眠らなければならない」と決めなくてよい。眠れなければ眠らないでよい。電灯をつけて本でも読むとよい。その代り翌朝はきちんと7時なら7時に床からおきること。ズルズルといつまでも布団に寝ていたり「昨晩はよく眠れなかったから会社やトレーニングを休もう」と一日中ダラダラしていたら、結局その夜も「ぐっすり眠れない」ことになってしまう。眠くても起きればシャンとするし、睡眠不足を忘れてバリバリ仕事をすればその夜はぐっすり眠れることになる。

 そもそも睡眠とは生活のリズムとして周期的に組みこまれ、睡眠中に疲労物質が除去され(クリーニング)、活性物質が再生されるようになっているのだ。だから不規則な生活も睡眠のさまたげになる。就寝、起床の時間を決めておいて、できるだけこれを守るようにすることが大切だ。「人生の1/3は睡眠」といわれるように、不足すればいつかひとりでに埋めあわされる。

 また「睡眠時間が長いほど良い」というものでは決してない。須藤選手や北村昭人さんの例のように、短くてもぐっすり眠ればOKだ。

 最後に体育生理学者の小野三嗣氏の意見を紹介しよう。

 「アメリカのハモンド博士は9時間以上睡眠をとっている人が6~8時間の人よりも病気にかかる率が高く、寿命年令が低い、と統計で発表している。また8年3カ月間昏睡状態で眠っていた婦人の脳の重量を測定すると、健康な人より340g(約1/4)も軽くなっていた事実がある。これらから睡眠はとりすぎてもマイナス面があることがわかるだろう」

 つまり、あまり眠りすぎてバカになることがあるかも知れないのだ。合理的に「なるべく夜早く(12時までに)眠り、朝はなるべく早く床から起きるのが望ましい」といえる。これが「健康」への道である。
月刊ボディビルディング1977年1月号

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