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“世男でー番すごいヤツ”
セルジオ・オリバという男
〈2〉トレーニング法

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月刊ボディビルディング1977年8月号
掲載日:2018.07.27
国立競技場指導主任 矢野雅知
 前号では、セルジオ・オリバが母国キューバをすててアメリカにのがれ、やがて本格的なボディビルディングのトレーニングを開始、筋肉の発達において“世界で一番すごいヤツ”
といわれるまでなった経過についてノーマン・ゼール氏の話を紹介した。
 そこで今回は、彼のトレーニング法を中心にして再びゼール氏に語ってもらおう。

セット法でトレーニング

 ガイダとオリバは、同時期に同じジムでトレーニングをした無二の親友だったが、ガイダが試みていたトレーニング法の仲間には加わらなかった。ガイダが実験していたトレーニング法とは、
今さら言うまでもないほど有名なP.H.A.システム(またはシークェンス・トレーニング)である。この方法はそれぞれの筋群に5~6種目を選んで、それらを巡回していく方法である。
しかしオリバは、P.H.A.システムよりもむしろ慣習的なセット・システムの方を好んで行なった。それは、常にたくさんのスーパー・セットを含んでいるものだった。
 ポージングの失敗で初陣を飾れなかったが、ガイダにポージングのコーチを徹底的に受けたので、其の後のローカル・フィジーク・コンテストでは全てに勝利を得た。
そして、ガイダと一緒にジュニア&シニア・ミスター・アメリカの両コンテストに出場することになった。

 まず、オリバは1966年のジュニア・ミスター・アメリカ・コンテストで優勝する。このとき、モースト・マスキュラーをも同時に獲得した。ガイダはこのとき第2位であった。
1ヵ月のちにはミスター・アメリカ・コンテストがあり、これにはガイダが優勝して、オリバは第2位となった。
 この両コンテストのあと、オリバのトレーニングはさらに一段と激しくなった。そして、プロフェッショナルになることを決めて、ジョー・ワイダーの主宰するIFBBに加入する契約書にサインしたのである。
 翌、1967年にはミスター・オリンピア・コンテストに挑戦して優勝。さらに68年、69年と3年連続して、タイトルを獲得した。おそらく、オーストリアン・オーク、アーノルド・シュワルツェネガーが出現しなければ、
今だにオリバは、ミスター・オリンピアとして君臨していたであろう。
ダンカンYMCAでトレーニングしていた頃のオリバとガイダ(右)

ダンカンYMCAでトレーニングしていた頃のオリバとガイダ(右)

結婚して警察官に

 その頃、オリバは美しいメキシカン女性と結婚した。しっかりした家庭を築き上げなくてはならない。そのためコンテストのゲスト・ポーザーとして世界各地を渡り歩くことを止めなくてはならなかった。
よき夫、よき父親として落着いた彼は、シカゴの警察官の仕事を得た。そして、士官候補生としてのテストにもパスしたのである。
 士官になるのを待っている間、彼は警察学校のフィジカル・インストラクターの仕事を得て、そこで働くことになった。仕事は楽しいものであったが町の人々と一緒になって話し合うことのできる普通の警察官の方が、
より楽しいものであると思っていたようだ。だから、士官の通知がくるのを首を長くして待っていたのだが、その夢はもろくも崩れ去った。連邦政府が、警察の士官テストを無効にするという決定をしたからである。
というのは、オリバなどの少数グループに対して、差別的に扱ったからである。
「これは一体どういうことだ!」
オリバは驚いた。
「あんなにテストのために一生懸命に勉強して、高得点をとったというのに…。政府は我々を差別した」
 悲嘆にくれたオリバに残された道は再度テストを受けることである。そして、もう一度、士官として任命されるウェイティング・メンバーになることである。オリバは再びテストを受けて3年間待ったのだが、なんの音沙汰もない。
だが、彼は落胆しなかった。むろん、ショックは受けたが、決して落胆したのではなかった。

陽気なチャンピオン

 オリバは南アメリカとメキシコに関係をもった、スペイン語の映画に出演したことがある。ロケ地で2?3ヵ月を過していたが、ちょっとの合間をみて家に帰ることができた。
もちろん、なつかしいダンカンYMCAにもすぐに顔を出した。
 彼がジムに入っていくと、みんな一様に顔を見合せた。ヒョウの模様のシャツと赤のスラックスで身をつつみ、手首には厚い腕輪、指にはたくさんの指輪が光っている。
このケバケバしい衣装と装飾品で、彼のスーパー・サイズは一段と大きくみえた。みんなが驚くのもむりはない。実は、オリバは映画の衣装のままでやってきたのである。
こんなところが、陽気なオリバらしいところであろう。
 彼はまた、誰れとでも気軽に挨拶する。そして、熱心にトレーニングに打ち込んでいる者には激励したり勇気づけたりする。
「それいけ、カモン!」
「もう1回、もっと!よし、あと1回」
 新入会員でも古い仲間でも、真剣にアドバイスをする。
「はいジェフ!先週おまえは190kgのスクワットをやったそうじゃないか。大したもんだ」
「へイ、腕が良くなったじゃあないかクリス!それを維持しろよ。どうだオレと一緒にベンチ・プレスをやらないか」
 ダンカンYMCAは、オリバがやってくると、陽気で明るい笑い声があふれ、みんな一段とトレーニングに熱がこもるようになる。
オリバのバック・ポーズ

オリバのバック・ポーズ

オリバのトレーニング法

 では、怪物オリバは一体どのようなトレーニングを行なっていたのだろうか。彼のトレーニング法については、今までに間違って伝えられた面も多々あるので、
ここで私自身が実際にこの眼で見たトレーニングを、詳しく紹介しておきたい。

月曜日と木曜日のトレーニング

 この日は月曜日である。月曜と木曜には胸・背・肩、そしてカーフを鍛える。
 まず最初にベンチ・プレスで胸のトレーニングから始めた。飢えたハゲタカが肉にくらいつくように、135ポンド(約60kg)にバーベルをセットしてベンチに横たわる。
バーベルをつかむと、かなり早いペースで50回プレスして、ウォーム・アップする。これは20回目と40回目を除いては、バーベルをプレスするとき腕を伸ばしきらないハーフ・レインジで行なう。
 このかなり苦しいウォーム・アップのあと、ただちにディッピング・バーに跳び乗って、最初はウェイトなしでディップスを行う。これも、腕は完全に伸ばしきらないハーフ・レインジで、かなり早いスピードで20回やる。
 ベンチ・プレスとディップスは、スーパーに組んで行なうのだが、彼はベンチ・プレスを325ポンド(約146kg)で6回繰り返せるところまで重量を増していく。このとき、ディップスを20回行なえるだけの休憩をとりながらすすめていく。
そして、バーベルの重量が325ポンドになったら、重量を減らしていく(セット当りの繰り返し回数は、それにつれて増えていくことになる)。しかし、ディップスでは、腰に重いダンベルをぶら下げてやる。
彼はこの日、はじめの7セットまで重量を増していき、あとの5セットは重量を減らしながら行なった。
 こうして、ベンチ・プレスとディップスのスーパーを12セットやるのである。使用重量はその日のコンディションによって異なるが、つねに12セットやるようにしている。そしてベンチ・プレスでは、
300ポンド(約135kg)ぐらいまではハイ・スピードで行なうが、動作は正確で、決してチーティング・スタイルは用いない。
 次はベント・アーム・ラテラル・レイズである。オリバは適当な重さのダンベルをひっつかむと、フラット・ベンチにあお向けになり、からだを弓なりにそらすようにして、出来るだけダンベルを深く落として大胸筋を最大限まで引き伸ばす。
1回ごとに最大の伸展を胸に与えるように大きくフライングするわけだ。そして、大胸筋の内側にも十分な刺激が与えられるように、1回おわるごとに、胸の上でダンベルとダンベルがガチンと触れ合うようにする。
 最初のセットは25回行なうが、次からはかなり重いダンベルを使って、15回の4セット以上やる。このベント・アーム・ラテラル・レイズは、ワイド・グリップ・チン・ビハインド・ネックとスーパーに組まれている。
 チン・ビハインド・ネックは1セット当り15回行なうが、アゴの下まで上腕部がこないように、腕は完全に伸ばしきらないようにしてやる。
 ここまでくると、彼の胸部は完全にパンプ・アップして、巨大な大きさにふくれあがってくる。それは、全世界で最も大きく、最大の厚みをもっており、汗で濡れたシャツは、すでに縫い目から破れてきている。
セットごとにズンズン大きくなっていくようだ。
胸のトレーニングが終ったあと、この大きなキューバ人は、テルモスの栓を抜いて、グライヤーのプロティンとクリームのミックスしたものを一口飲んだ。オリバのトレーニングを見るために、
遠くからやってきた見学者は、これを見て彼に質問した。
「いつもそれを飲むんですか?」
「いや、体重を増やしたいときだけだ。私はコンテストのために、ことし(1976年)は108kgにしようと思っている」
見学者はさらに質問をする。
「ノーチラス・マシーンは好きですか?」
「好きだが、このジムにはない。しかし、日曜の朝は、シカゴ・へルス・クラブに行ってそれを使うつもりだ」
太い腕を曲げて、彼は続ける。
「なかでもアーム・マシーンはたしかに効果がある。それを使うと、かなり強いバーン(焼けつくような感じ)が得られる。フロリダのアーサー・ジョーンズのために、
毎日それを使ったことがあるが、よく効いたと思う」
 こんなことを話しながら、彼は次にやるエンド・オブ・バー・ローイングのためにプレートをつけていた。腰から上体を前におり曲げて、ローイング・バーに付いているクロス・バーをワイド・グリップで握り、
ゆっくりと胸の方に引き上げた。そしてゆっくりとおろしていく。1回やるたびに彼の広背筋がさらに拡大していくのがわかる。これを15回繰り返すと、次にラット・マシーンに移る。
 床にひざまづいて、首のうしろへバーを引きおろしてくるのを15回繰り返す。この両者をスーパーに組んで、5スーパー・セット行なうのである。すでに彼の胸の上部には血管が浮き上ってきた。
それは無数に筋肉を縦横にかけめぐっており、信じられないくらいである。こうして彼のすぐそばで見ていると、ウワサ以上にオリバは大きく感じられる。
 次に彼はデクライン・ベンチのところへ行き、ベンチにあお向けに寝て頭上から45kgのダンベルをとった。そして、ヒジを内側にしめながら、プルオーバーを15回行なったら、すぐにクローズ・グリップ・チンを15回やる。
よく上体をそらして、1回ごとに胸が十分に伸びるようにする。
 この両者はスーパー・セットに組んで4セット以上行なう。
広背筋の最後のエクササイズは、ラット・マシーン・プル・ツー・チェストである。彼はラット・マシーンにハンドルを差し込んで、床にひざまづいた姿勢から、ワン・ハンドで胸にまっすぐに引きおろす。
10回の5セットをやり終えたときには、広背筋はグーンと拡張している。今や、地球上ではもちろんのこと、他の惑星にもこれほど見事なウィングをもつものはいない。と思えるほどである。
汗にぬれたトレーニング・シャツは、背中の筋肉が張ってピチピチになっている。
 オリバはテルモスを開けて、プロテインとクリームのミックス・ジュースを再び飲んだ。
 見学者が一生懸命にノートをとっているので
「へイ!見たことはなんでも書いているのか?」と、彼は陽気に話しかけてくる。
「次にここに来るときは、私の兄のデーゴに会えるかも知れないよ……キューバにいる私の15人の兄弟の一番上の兄貴だ。兄貴はキューバじゃ最もデッカクて力も強いんだ。いずれはアメリカにやってくるだろう」
 さて、次に肩のトレーニングを始める。ベンチの両側にスクワット・スタンドを置いて、135ポンド(約60kg)のバーベルをセットする。バーベルの前に腰かけて、肩幅よりも広くバーベルを握ってラックから持げ、
プレス・ビハインド・ネックをすばやく15回行なってウォーム・アップする。このとき腕はけっして伸ばしきらない。つづいて10ポンド(約4.5kg)重量を増やして10回行なう。
 こうして、繰り返し回数が5~10回の間を維持できるように、5~10ポンドずつウェイトを増やしながらトレーニングを進めていく。そして、このプレス・ビハインド・ネックは、
最初の5セットをオールタニット・フォワード・レイズとスーパーに組む。これは9kgのダンベルを使って各セットとも20回ずつやる。
 そして、後半の5セットは、12kgのダンベルを用いたサイド・レイズとスーパーに組んでいる。これも各セット20回行なう。
このオールタニット・フォワード・レイズとサイド・レイズでは、ダンベルは床と平行になるところまで持ち上げるだけで、けっして頭上まで引き上げない。
 最後は下腿三頭筋(カーフ)の運動である。カーフ・レイズは、レッグ・プレス・マシーンを改良したもので行なう。これは、高いブロックを用いてやるワン・レッグ・カーフ・レイズとスーパー・セットに組む。
両者とも20回ずつの10スーパー・セットを、たちまちのうちに消化してしまう。
 こうして月曜日のトレーにングは終了した。彼は汗でびっしょりになったからだに、頭から熱いシャワーをあびせて「アディオス!」といって帰っていった。
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火曜日と金曜日のトレーニング

 火曜日と金曜日のトレーニングは、月曜・木曜のトレーニングほど長くはない。大腿と下腿、それに腹筋を鍛える。
オリバは用事があって、今日のトレーニングは急いでやらなくてはならない。彼はまっ赤のトレーニング・シャツに着がえてきた。見ると、シャツの袖のところが切りさかれている。
腕が太すぎて、こうでもしないと着られないのだろう。
 まず、大腿部のトレーニングから始める。ウォーム・アップとして、レッグ・イクステンションを20回の3セット行なう。そして、ラックを適当な高さにセットして、スクワットに移る。
この日のスケジュールの中で、エネルギーの大半を使い果すのが、このエクササイズである。
 135ポンド(約60kg)のバーベルを広く持つ。一歩足を踏み込んでバーベルの下に頭を入れ、巨大な僧帽筋の上にのせて、二歩うしろにさがる。床の上にカカトをぴったりとつけて、
胸を前にグーッと突き出した姿勢で、ウォーム・アップとして50回をハイ・ペースで行なう。
 バーベルをラックにもどすと、ただちにレッグ・カール・マシーンの方へ行き、適当なウェイトにセットしてレッグ・カール・ストレッチングを20回行なう。
このとき、1回ずつ出来るだけ早い動作でやる。2~3回深呼吸をすると、大きく脈打っていた彼の呼吸は元にもどってしまう。
 つづいて、25ポンド(約11kg)のプレートをバーベルに加えて、再びスクワットを25回やる。呼吸が少し早くなったところで、バーベルをラックにもどしてレッグ・カールを15回行なう。
再びスクワット・ラックにもどり、25回をおよそ45秒間でやる。このとき初めの15回はノン・ストップでやる。これでかなりパンプ・アップする。そしてレッグ・カールを10回行なう。
 こうしてスクワットはセットごとに増量していって、10セット目には180kgになるまでやる。もはや、10セット目になると、さすがのオリバも死にもの狂いで、オールアウト寸前まで繰り返す。
これを見ていると、彼は自分自身を強烈にサイク・アップしているのがわかる。スーパー・セットに組んでいるレッグ・カールも、10セット目まで増量しながら行なわれる。
 10スーパー・セットが終了すると、「こんな筋肉もあったのか!」というほど、今まで見たこともないような筋肉や血管が、彼の脚に浮かび上っているのを見ることができる。
 ここでプロティンとクリームをミックスしたジュース8オンス(約230g)すべてをのどに流し込んでしまう。タオルで口もとを拭うと、水道の蛇口に行って口をすすぎ、
顔を水で濡らしてサッとタオルでふいたあと、300ポンド(約135kg)のスタート重量に都合よくセットされているレッグ・プレス・マシーンの下に入り込む。
 15回を苦もなく終えると、カーフ・レイズ・マシーンにからだを入れる。カーフ・レイズは20回行なう。このとき、ツマ先を外側に向けたポジションをとり、
ツマ先を完全に伸ばしきるところまで持ち上げたら、カカトが床に着くぐらいまで下ろしてくる。
 このスーペー・セットは5セット行なう。ウェイトは各セットごとに加えていき、レッグ・プレス・マシーンでは500ポンド(約225kg)で10回繰り返すところまでやり、
カーフ・レイズは315ポンド(約140kg)で20回繰り返すところまでやる。
 ひと呼吸いれると、彼は再び蛇口の方へぶらりぶらりと歩いて行く。この頃には、ジムはシーンと静まり返っている。誰れも自分のトレーニングをやめてしまった。
バーベルに手をかける者はなく、ダンベルはコトリッと音もしない。プーリーはダラリと垂れ下がったままである。今、すべての目は体重104kgのジャイアントにそそがれている。
 彼の巨大な太モモは、赤いタイツを内側から強く圧迫している。誰もが義望と憧慣のまなざしで、ジムの中を悠然と歩き回るオリバに注目している。
「すげェ...なんて奴だ!」誰かがささやいた。これで静寂はいっきに崩れた。彼らは大きなタメ息をつくと、再びそれぞれ自分のトレーニングをやり始めた。
 さて、オリバはレッグ・エクステンション・マシーンに座った。それを15回行なって、シーテッド・カーフ・レイズ・マシーンのところに行く。これは昨日使ったのと同じもので、回数は20回である。
レッグ・エクステンションはセットごとにウェイトを増量して10回以上やり、シーテッド・カーフ・レイズは、同重量で最初から最後まで20回を繰り返す。このスーパー・セットは5セット行なう。
 ここで冷たい水を飲むと、次は腹筋のトレーニングに移る。オリバは一般の人の手の甲の脂肪よりも、もっと脂肪の少ないウェストと、非常に小さなシリという、先天的に恵まれたものをもっている。
それでもなおかつ、鋭いカットではないが、シャープに見える腹を維持していくためには、十分なトレーニングをやる必要がある。
 彼の腹筋のトレーニングは、いつもシット・アップとレッグ・レイズの2つのエクササイズからなる。これはアブドミナル・ボードで行なわれる。
 ボードを適当な高さにセットし、肘が膝に触れるまで上体を起こしてくるシット・アップを30回行なう。上体を元の姿勢にもどすとき、動作を途中で止めて、背中がボードに着かないようにする。
これは、ほとんどのチャンピオン級のビルダーがやっているのと同じであり、オリバもその例外ではないのである。
 シット・アップを終えると、ただちにボードの上でからだの向きを変えて上体が上にくるようにして、30回のレッグ・レイズを行なう。このときは膝はやや曲げたままである。
 シット・アップとレッグ・レイズのスーパー・セットは、3~5セット行なわれる。ボードの高さは、オリバのその日のコンディションによって決められており、ある時は高くして、またあるときは低い位置でやる。
 最後のエクササイズを完了すると、彼はテルモスとタオルをとりあげて、みんなに「グッドバイ」を告げてシャワー・ルームへと消えていった。

水曜日と土曜日のトレーニング

 オリバの腕のトレーニングは、我々が行なっているのとあまり変わっていない。それなのに、どうして20インチ以上ものズバ抜けて巨大な腕をつくりあげることが出来たのか!
それは非常にハードなトレーニングを今でも行なっているからだ。ハード・トレーニングなしには、とてもあのような腕にはなり得なかっただろう。
 水曜日。オリバがトレーニングにやってきた。袖口が切れあがった白いシャツに、ブルーのスラックスを身につけている。彼を見て、まず最初に目を引きつけられるのは、ハムのような腕である。
信じられないほど大きく、ぶ厚く、シャープであり、それらが実によくコンビネーションされている。
 目をこらして彼の腕をよく見ると、その前腕に目を奪われるに違いない。今だかって、サイズについて尋ねたものはないので、実際にメジャーを前腕に巻いてそれを計ってみると、なんと40.6cm~41.6cmもあった。
 もうひとつ、彼の腕で驚くべきことは、彼の手の大きさである。相互の友情を確かめるために右手を伸ばして握手すると、私の手は彼の手の中にスッポリと隠れてしまう。
ちょっと、巨大なブラック・べアーに捕まれたような感じだ。まるで指のついた16オンスのボクシング・グローブのようだ。これは実際に君の目で確かめていただければ、わかることである。
 さて、今日はその腕のトレーニング日である。ここでまず指摘しておきたいことは、オリバの上腕三頭筋のトレーニングでは、筋肉がズーッと緊張しっばなしで、けっしてリラックスさせないことである。
 まず、プーリー・トライセプス・カールから始める。ラット・マシーンに似ている変型のプーリーの前にヒザをついて、40度の角度でケーブルを引きおろす。1時間15分にわたる腕のコンセントレーション・トレーニングの開始である。
上腕は大腿部の横に保持して、それがスリークォーター・ポジションに達するまで伸ばす。これを何度も何度も繰り返していく。
 25回~30回が最初のウォーム・アップ・セットとして行なわれた。2回深呼吸すると、マシーンにウェイトを加え、15回やる。2~3回深呼吸すると再びウェイトを加えて10回行なう。
同じように、あと3セットを増量しながら各10回ずつ繰り返す。まだトレーニングは始まったばかりだというのに、彼の腕は最大限までパンプ・アップしたように見える。
 休まずに60kgを用いてのフレンチ・プレスを10回行なう。すぐに10ポンド(約4.5kg)をバーベルに加えて、再びフレンチ・プレスを行う。このストリクト・スタイルで行なわれるシァーリング・セット(筋肉がマヒするまで行なわれる)は、
セット間の休息を数十秒とるだけで4セット以上やる。
 次には、オリバの好きなエクササイズである。4つの異なった角度から上腕三頭筋を攻めるエクササイズからなっており、それぞれ10~15回の5セットをやる。これら全20セットをやり終えるまで、セット間の休息は一切とらずに行なわれる。
 ウォール・プーリー(壁に固定されたプーリー)に背中を向けて、右手で下のハンドルを握る。そして、オリバはハムのような右上腕を頭の横に持ち上げて引っぱり上げるワン・アーム・トライセプス・カールを15回行なう。
15回目が終わると、ただちに左手にハンドルを持ち替えて、同じように15回行なう。
 これを休みなく10~15回×5セットを交互にやり続ける。5セット目の最後に左腕を伸ばしきったところで、右手にハンドルを持ち替えて、そのままプーリー・マシーンに対して、からだが横向きになるようなポジションをとる。
右上腕は床と平行に保持されたところで、次のワン・アーム・トライセプス・カールが始められる。
 まず15回やると、左手にスイッチして、同じ回数行なう。こうして、腕を休みなく交代しながら5セット続けていく。あまりの激しさに、滑車のところからケムリが起きるのが見えるほどだ。
もし君が、このアーム・アクションを見る機会を持つことができたなら生涯忘れられないほど強烈な印象を受けるはずだ。
 次はウォール・プーリーに顔を向けて、上体を前に倒す。そして右手に握ったハンドルを後方に引きのばして曲げるとベント・フォワード・ワン・アーム・トライセプス・エクステンションを、すごく早いモーションでやる。
これを10~15回×5セット以上やり終えるまで連続して行なう。
 さて、いよいよ最後のエクササイズである。彼はいつも、2つのエクササイズのうちの、どちらか1つを行うのだが、今日はそのままプーリー・マシーンを使ってやることにした。
 彼はからだを横に向け、右腕にハンドルを持って床の方へプレスする。そして曲げる、伸ばす、曲げる、伸ばす…これを15回やる。左手も同じように行なって、これを10~15回×5セットやる。
これでオリバの上腕三頭筋のトレーニングは完了である。
 参考までにつけ加えておくと、彼は場合によっては、各セット間にディップスを行なうこともあるという。私は「オリバは確かにトレーニングについて深く知りつくしている」という印象を強く受けた。
 彼はつねに正確で、科学的なトレーニングを行なっている。どのくらいのセット数をやるべきか。どのくらいのウェイトを用いるのがよいか。そしてその回数はどのくらいなのか。
彼のボディ・タイプからベストの効果を生み出すトレーニングは、どのくらいの頻度でやるべきなのか、などについて、彼は自分でよく理解しているのだ。
 上腕三頭筋が、強度の緊張からやっと解放されると、腕を2~3回曲げてから冷たい水を飲む。そして、彼は上腕二頭筋のトレーニングに入る。
 最初に47kgのバーベルで、ウォーム・アップとしてバーベル・カールを25回やる。次に、60kgで行なう。このあと、セットごとにウェイトを増しながら4セット以上続ける。
だが、回数は各セットとも10回~15回を維持する。
 次はベンチ・カールである。これはプリーチャー・ベンチで行なうのが最も効果的である。彼は巨大な腕をプリーチャー・ベンチの上にのせると、EZカール・バーを握ってカールを始める。
バーをアゴのところまで十分に巻き込んできて、1回ごとに腕が完全に伸びきるところまでおろす。これを10回行なう。床の上にバーベルを置いて、わずか2~3秒間ほど腕を伸ばすと、再びバーベルを持ってベンチの上に腕をのせる。
こうして10回の10セットを連続して行なってしまう。すでに上腕二頭筋は信じられないほどパンパンにふくれあがっている。
 最後のエクササイズは、カーリング・マシーンで行なわれる。200ポンド(約90kg)の負荷にセットして、マシーンのところにすわってヒタイの汗をぬぐってケーブルのハンドルを握る。カールを始める。
上げる、下ろす、車輪の上をケーブルがスライドする。10回行なうと、1・2回深呼吸をしてからウェイトをもっと増やす。こうして各セット10回の単調なトレーニングを10セットまで繰り返す。
 この日は水曜日なので、これでトレーニングは終了する。土曜日の場合には、以上のトレーニングに加えて胸・背・肩・大腿・下腿、そして腹筋と、すべてのボディ・パーツが確実に週3回トレーニングされるように配慮して行なう。
ただし、このトレーニングは月・木、火・金のルーティンほどきびしいものではない。セット数も回数もトレーニング・スケジュールも決めておかないで、すべてその時のコンディションによって行なわれている。
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月刊ボディビルディング1977年8月号

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